ーもう一人2ー
「土屋康平です!このクラス美人がいっぱいで俺めっちゃ感動してます!俺も彼女募集中なんでよろしく!ついでに男子もよろしく!」
パチンッとウィンクがこちらに向かって飛んできた。後ろの人に向かってやったのかな?明るい人だなー
他の男子から、ついでかよー!と笑いが生じる。自己紹介で笑いをとるなんて、まさか、これが噂のパリピ、というもの?私もパリピ?になれば普通の高校生活を送れるかな?
「寅若竜太郎です。楽しそうなクラスで嬉しいです。男だけど僕もよろしくね?」
さすが国宝級イケメン。言葉を発するだけで女子が顔を赤くする。
「寅若くんにあたしアタックしようかな?」
「先手必勝だよ!」
という会話が聞こえてくる。イケメンも苦労するなー。
「巳嵜連吾」
え?それだけ?上には上がいた。まさか名前だけで終わるとは。しかもめっちゃムスッとしてる。でもイケメン。
「寡黙な男ってやつかな?」
「行っちゃう?」
女子つよぉい。あれは寡黙な男ではなくて、ヘタレなイケメン略してヘタメンですよ。私にはわかる、あの顔は注目集めて緊張してる顔だ。わかる、わかるぞぉ・・・!
「んじゃ、解散」
高校生活初日が終了し・・・なかった。
「ねぇ麻結莉ちゃん!REIN交換しようよ!アカリンも!」
誰だっけこの明るい人。つ、つち、土山?いきなり名前で呼ぶとか馴れ馴れし、げふん、図々し、げふんげふん、明るい人だな。結局明るい人に行きつく。
しかし、これはアカリンと友達になれるチャンスなのでは?
「土屋くんはイヤだけど麻結莉ちゃんとはREIN交換したいな!」
「あれ?俺いま笑顔で拒否られた?」
「私も!土屋君はイヤだけど朱莉ちゃんと交換したいって思ってたんです!」
「あれ?また拒否られた?」
横で何かうるさいのがいたけれど構わずアカリンとスマフォを向い合せる。い、いまだ!
「朱莉ちゃん!私とお友達になってください!」
「え?あたしたちもう友達だよ?」
「へ?」
もう友達だった件について。
と、いうことは初めてのお友達が入学初日でできた!やったーーーー!やればできる子!
「か、かわいすぎるよ麻結莉!」
アカリンが抱き着いてきた。ふわぁいい匂い。やわらかぁい。じゃなくて!
「今の笑顔は反則・・・」
土屋くんが意味不明なことを言っている。しかも顔が真っ赤である。私の表情筋は仕事をしていないはず。熱でもあるのかな?
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないから俺ともRINE交換して!」
やはり大丈夫そうじゃない。主に頭が。
「お、俺も!」
「私もいいかな?」
志願者が続々と増えていく。やっぱアカリンはすごいなー。私はアカリンのついでに交換してくれてるからなー。でも、クラスの半分以上の人と今日一日で交換できた。昨日までの私にこの事実を伝えても信じないだろうな、と思いながら一気に増えたRINEの友達一覧をスクロールする。幸福感に浸っていると、連吾の不機嫌そうな声が聞こえてきた。
「勝手に帰んじゃねぇよ」
「げ」
もしかして行きも帰りも毎日送り迎えしてもらうの?傍から見たら登下校で違うイケメンを侍らせる性悪女では!?
「あたしが一緒に帰るよ」
「朱莉か」
「いいでしょ?」
「じゃあな」
そう言うと一人で去っていった。
「朱莉ちゃんってやっぱり、」
「歩きながら話そうか」
十二天将の同級生のもう一人。
桜並木をアカリンと二人並びながら歩いている。心なしか隣からいい香りが。シャンプーかな?もはや存在が癒し。
「お察しのとおりだよ。あたしは十二天将の朱雀の力の継承者だよ。でも、継承者だから麻結莉と友達になったわけじゃないよ。あたし自身が麻結莉のことを好きだから」
「うん、わかってる。ありがとうアカリン」
「あ、アカリンって呼んだー」
「はっ!心の中でそう呼んでたから思わず。ダメかな?」
「アカリンでいいよ」
「アカリン」
「なに?」
「呼んでみただけ」
「可愛いかよ。麻結莉のこと、まゆりんって呼んでもいい?」
「うん!もちろん!」
「まゆりん」
「な~に?」
「んんん。可愛い」
―――――――――――――side とある男子高校生
入学式で女神を見た。ショートボブの髪が風に揺られてなびいている。美しい。思わず見惚れてしまった。俺だけじゃない。周りの男どもはみんな一様に目を奪われている。
なんと、女神(榊麻結莉さんというらしい)と同じクラスだった。しかも、あの今最も売れていると言われている「everlaSTing」の専属モデルで、今大人気の妖精のように可愛いアカリンも同じクラス。この高校を選んだ俺、マジ最高。
自己紹介が終わり、解散の合図を藤岡先生が出した後に、土屋とかいうチャラい奴が女神と妖精に図々しくもRINEの交換を持ちかけていた。まぁ惨敗だったけど(笑)でも、待っていれば俺にもチャンスが来るかもしれないからもう少し様子を見る。すると、女神が微笑んだのである!はぁ尊い。無表情の凛とした面差しも美しいが、笑顔の破壊力は想像を絶していた。しかもRINE交換できたし、今日一日で俺、運を使い果たしちゃったんじゃない?たんすに小指ぶつけたりしない?
帰り道、男子どもがある一点に注目していた。女神と妖精が桜並木の下を優雅に歩いている。それはまるで一枚の絵画のよう。
俺、生まれてきてよかった・・・父さん母さん俺を生んでくれてありがとう
前回まで人物紹介は後書きでやってたんですけど、今回から登場人物の方を更新していくのでよろしくです。