反語表現(このままで良いんですか?)
「やあ、先手こと聞き手だ。
今回は後手の野郎が『小説家になろう』を始めとした作家達に対して、目を覆わんばかりのあまりに冒涜的な解説を行うらしい。読み進める前に、十分心の準備を整えておいた方が良いかも知れないぞ」
「いちいち大袈裟な上、悪意全開だなオイ……。
まあ良い。早速始めよう。
■反語表現(このままで良いんですか?)
例:B「ではあなたは、この現状を放置しても良いとでも言うんですか?」
"反語表現"とは、主張したい内容とは反対の事を"疑問形"で表す事だ。例えば
『◯◯は良くない』を『◯◯で良いのだろうか?』と表現するような事だな。小説や漫画のセリフ、文学なんかでもしばしば使われる表現だな」
「作家は全員詭弁家と言いたいのかアンタはぁ――ッ!!」
「頼むから落ち着け。もちろん、小説などで使用する分は問題ない。"議論の場"において使用する事が問題なんだ。
例文でBは『現状を放置してはいけない』と"暗に(言葉の外で)主張"してい
る。しかし、その主張を"明言(はっきり言葉に出す)"してしまうと、『なぜそう思うのか』を説明しなければならなくなる。また、相手からも『なぜ現状を放置してはいけないのですか?』と質問を行う事が可能だ。
一方で明言をしなければ『現状を放置してはいけない』理由を説明する必要もなく、相手も『なぜそうなのか?』と質問を行う事が出来ない。
反語は自説の証明、説明の責任を"回避"し(つまり説明しない)、『暗に主張』している内容を無理矢理『正しい前提』として相手に押し付ける効果があるんだ」
「何かズルいな……」
「しかし、議論においては『暗に主張』と言うのは意味がない。『表に出た言葉』こそが重要だからだ。日常会話においては問題なくても、"自説を証明する責任"が発生する議論の場においては問題となる。
ちなみに似たような例として、
例:B「この現状を放置して、日本は一体どうなるのでしょうか?」
……こう言うパターンもあるな。当然、これも何ら自説の証明をしていない『意味のない主張』となる。単に『日本はどうなるのか?』と尋ねただけだ。
※対処法※
いきなり例文から行くぞ」
例:B「ではあなたは、この現状を放置しても良いとでも言うんですか?」
A「はい」
「……何言ってんだAは……」
「そう思うだろう? ところがこれこそ反語の適切な対処法なんだ。
反語表現は表向きただの"疑問文"だ。こちらが『反語は止めて下さい』と言ったとしても、意図的に反語を使用している相手であれば『いえ、これは疑問文です』と返されるだけだ。
だから一番良いのは、議論おいて『反語表現』は全て『ただの疑問文』として扱う事なんだ。例え『暗に主張』している内容に気が付いたとしても、無視して『疑問文への返答』として答えれば良い。
例文の場合ここで『はい』と言えば、相手は『いや、それは違う』と明言せざるを得なくなり、ここでようやく『現状を放置したままで良いのか否か?』について議論を行う事が出来るようになる。もしもそれで『現状の放置は悪い』と結論が出ても、『なぜそうなのか』が理解出来た事に繋がるから、それはそれで有益な結論だ。
反語で表現される事柄と言うのは、いかにも『常識的』な雰囲気を漂わせてい
る。だからこそ、こちらから『その常識は正しいのか?』と切り込まなければならないんだ」
「それって、結構勇気が要るんじゃ……」
「もしもその結果『Aは常識知らずだ』などと言って来た場合、"人格批判"に該当するから気にする必要はない。
もっとも、勇気が要ると言うのも確かだ。なので、もう一つ対処方法を用意しておいたぞ。
例:B「ではあなたは、この現状を放置しても良いとでも言うんですか?」
A「すみません。反語か疑問文かの区別が付きにくいので、まずBさんはどう
考えているのかを聞かせて下さい」
……このように、『相手に明言させる』事も有効だ。
ちなみに反語表現であったとしても、『◯◯で良いのだろうか? 私はそう思わない』など、"結論を明言している"場合であれば何ら問題はないぞ」