早まった一般化・合成・分割の誤謬
「どうも、後手こと解説だ。
今回も三つ解説するぞ。
■早まった一般化
例:「中学時代の数学教師も高校時代の数学教師も、高圧的な性格の人物だった。
数学教師とは、高圧的な人物ばかりに違いない」
"早まった一般化"とは、自分の見聞きした少ない事例や極端な事例を"一般的な事例"とする理屈の事だ。
しかし、少ない事例や極端な事例のみで結論を導き出すのは適切な判断とは言えない。例文の場合、『単なる偶然』である可能性を考えた方が良いだろう」
「あれ? これって前に言ってた"チェリーピッキング"の事じゃねーの?」
「確かにそれと似ているな。だが向こうは『結論を証明するために都合の良い事例だけを選ぶ』のに対し、こちらは『得られた事例から結論を導き出』しているん
だ。まあ、どっちみち間違った理屈である点に変わりはないな。
■合成の誤謬
例:「A組の田中は歴史の成績が良い。同じくA組の鈴木と山田も歴史の成績が良
い。A組は歴史の平均点が高いに違いない」
"合成の誤謬"とは、対象の"一部"がそうだから、対象"全体"もそうだと決め付ける理屈の事だ。
これも、一部だけ見て全体を推し量る事は適切ではない。彼らが特別歴史に強いだけで、クラス全体はむしろ平均点以下の可能性だってあり得る」
「……あれ? これってさっき言ってた"早まった一般化"の事じゃねーの?」
「確かにそれと似ているな。だがそっちは『少ない事例から結論を導き出』すのに対し、こっちは『一部の特徴を全体にも適応させている』んだ。……まあ、やっぱり間違った理屈である点には変わりないんだが。
ちなみに経済学の分野では『ミクロ(小さい)の視点では正しい事でも、マクロ(大きい)の視点で正しいとは限らない』事であるとされている。"地域経済"を活性化させる手段が、"国"の経済を活性化させる手段として適しているとは限らない……みたいな」
「……何が何だか……」
「要は『都合の良い事例を選ぶ』『少ない事例を一般事例にする』『一部の要素を全体の要素とする』事が良くない、と言う訳だ。名称の区別にこだわらず、『理屈の立て方がおかしい』点に気を付ければ良いんだ。
■分割の誤謬
例:「A組は英語の平均点が高い。A組の生徒である佐藤も英語が得意なのだろ
う」
"分割の誤謬"とは、『全体』がそうだから『一部』もそうだと決め付ける理屈の事だ。上記の"合成の誤謬"とは逆の理屈だな。
これもやはり、全体に適用出来る事が一部にも適用出来るとは限らない。A組にも英語が苦手な生徒くらいいるだろうし、一部の高得点者が全体の平均点を引き上げている可能性もある。
※対処法※
いずれのケースも、『そうとは限らない』点を指摘しよう」