疑似相関・前後即因果の誤謬
「どうも、後手こと解説だ。
今回は統計に関する内容だ。
■擬似相関(相関関係と因果関係の取り違え)
例:「統計によると、スマートフォンの保有率が増えると共にうつ病の総患者数も
増加している。スマートフォンの使用が精神に悪影響を及ぼしている事は疑
いようがない」
"◯◯が変化(増減)すると××も変化する"と言う関係を『相関関係』と言う。一方、◯◯と××との間に何らかの"結び付き"が存在する事を『因果関係』と言
う。
"擬似相関"とは、『相関関係』が存在するから『因果関係』も存在する、と決め付ける論理の事だ。
しかし、実際には『他に原因がある』『単なる偶然』などの可能性も存在する。
例文のケースだと、『先進国度』こそが両者に影響を与える本当の原因なんだ。
先進国ほどスマートフォンの普及度が高くなる。一方で、先進国ほど仕事も複雑になりストレスがたまるためうつ病が増え、また先進国ほど医療が発達しうつ病という診断が下されやすくなる(参考・GLOBIS知見録 10年10月27日付記事『それって本当に直接関係ある? ―擬似相関』より一部抜粋の後、筆者により改変)。
つまり、"スマホ"と"うつ病"に直接の因果関係があるとは結論付けられないん
だ。
直感的におかしいと分かる、別の例を挙げよう」
例:「アイスクリームの売り上げが増える月は、水難事故の件数も増えている。
アイスクリームが水難事故を誘発しているのは明らかだ」
「…………いやいやいや。んな訳ないじゃん」
「その通り。このケースでは『気温の高さ』こそが本当の原因だ。
つまり、気温が高いからこそアイスクリームを買い求める人が増える。それとは別に川や海などで遊ぶ人の数も増え、その結果水難事故が起こる可能性が高くな
る。
"アイスの売り上げ"と"水難事故"はそれぞれ『独立した出来事』であり、両者に因果関係があるとは言えないんだ。
■別パターン・前後即因果の誤謬
例:「幸運のネックレスを購入して以来、良い事が続くようになった。このネック
レスの効果が本物である証拠だ」
前後即因果の誤謬とは、◯◯と言う出来事が起こってから××が起こった、だから◯◯と××の間には因果関係がある、と言う主張だ。
これもやはり、他の原因や偶然などの可能性を無視している。例文のケースでは『単なる偶然』『ネックレスの効果に期待感を持った結果、以前までなら見落としていたような"些細な幸運"にも気が付くようになった』……などの可能性も考えられる。
ちなみに医療の世界では『三た論法』と言って、『治療した、治った、だから治療に効果があった』……と言う判断は早計である、と戒められているそうだ。
※対処法※
『相関関係』だけでは『因果関係』を証明出来ない、と言う点を指摘し、その上で両者の"具体的な結び付き"について尋ねると良いだろう。
前後即因果の誤謬に関しても、同じく両者の具体的な結び付きを尋ねよう。
念のために言うが、『統計、グラフは信用出来ない』と言いたいんじゃない。むしろ、正しく示された統計は大いに信用出来る。『間違った統計の出し方』にこそ問題があるんだ。
……余談ながら、『統計、グラフ』を利用して人を騙す手段は他にもたくさんあるぞ。
これに関しては以下のサイトや書籍を参考として挙げておこう」
GIGAZINE・「グラフでうそをつく」方法とは
https://gigazine.net/news/20190430-how-to-lie-with-charts/
GLOBIS知見録・それって本当に直接関係ある? ―擬似相関
https://globis.jp/article/1763
西野法律事務所・統計でうそをつく方法
http://www.nishino-law.com/publics/index/55/detail=1/b_id=92/r_id=2336/
講談社 ダレル・ハフ著 高木秀玄訳
統計でウソをつく法 〜数式を使わない統計学入門〜
嘘には三種類ある。嘘と大嘘、そして統計である。
――ベンジャミン・ディズレーリ




