第1章 人生の終焉と始まり
暑い日差しが嫌な汗をかかせてる・・・
夏の恩恵なのか、呪いなのかは知らないが暑くて暑くてたまらない。
そんな青い空を眺めながら彼は畑を耕している。
(う~ん・・・いつから人生狂ったんだろう)と考えながら鍬を振るう。
去年まで彼は一流企業で中堅の要としてエリート街道を進んでいた。
勿論彼が出世するまでは綺麗ごとばかりではなかったが、そこまで卑怯な真似をした事もしなかった。
あの日が来なければ・・・そう、あの正義感に満ちた勇者もどきが現れなければ・・・
たまたまその日は珍しく朝寝坊をした。最近流行の異世界漂流物の漫画を徹夜してみていたのだ。
普段ならそんな事はしないが、その日は嫁と子供が嫁の実家に帰省していたため、暇を持て余していたのだ。
そして普段とは違う時間帯の電車に乗ってしまった・・・世に言うラッシュアワーである。
彼は久しぶりのラッシュアワーで身動きが取れない周りは女子高生が異様に多い。そんな中突然彼の手首が誰かに握られた・・・?と思ってると若きイケメンが大声で「痴漢です!!」??どこに?だれが?
・・・えっ?もしかして・・・・俺?
意味が分からないまま、彼は捕まっていく。その傍を本物の痴漢がそそくさと逃げていく。
若いイケメン勇者は彼を冤罪で捕まえてしまったのだ!しかも運悪く会社の数人がその現場をみてしまってる・・・
彼が釈明をし、会社に出社すると社長に呼ばれる・・・はい、クビです・・・・
それから彼は田舎に戻り実家の畑を継ぐことになった・・・しかし、この冤罪のせいで嫁とは離婚で子供もとられた・・・勿論田舎でもうわさが流れ、下手に身動きが取れず毎日熱心に農作業を繰り返した。
あれほど色白く痩せて弱そうな彼は今では小麦色した細マッチョのいい体格になっていた。
彼が「あの日」の事を考えながら作業していると空に暗雲が立ち込める。
彼は慌てて変える準備をしていた時、彼に大きな雷が落ちてきた・・・
(あぁ、俺の人生こんなもんか)と思いながら彼は倒れてしまった・・・
・・・ん?あれ?俺、生きてる?彼が目を開けると、そこは見たことのないところだった。
彼は起きあがりもう一度周りを見回す・・・やっぱり知らない世界だった。
これって、最近よくある異世界ものの夢か?と考える。
試しに目を細めてみると目の前にウィンドゥが見える、彼は自分のステータスを見る。レベルは1と出てるが、知性と腕力・体力が???となっている。良く分からんがどうしようもないのでウィンドゥを閉じた。
とりあえず、近くの村を探すため、道なりに進んでみる。
暫く歩くと大きなネズミが出てきた・・・多分モンスターなんだろう。彼は武器を装備していなかったが、近くにある石を拾い思い切り投げてみた。
ゴォォォッという轟音がなり、ネズミは木端微塵に・・・あぁ、これってもしかしてチートって奴ですか・・・彼はビックリしながらもネズミの落としたコインを拾い、現状を理解して村を目指して歩いた。
彼が村に着くまでにたくさんのモンスターが出てきたが、どれも相手にならずコインやドロップアイテムが沢山手に入った。
彼が村で宿屋を決め、近くの酒場で食事をしに行く。何故か言葉は通じるのだが、それは彼にとってはとても嬉しかった。
その酒場では大賑わいしていたが、その理由はこの辺境の村に勇者が来たとの事だった。
彼も勇者がどんな人か見たくて周りを遠目から見ると・・・
なんとそこには「あの日」彼の人生を台無しにしたイケメンが立っていたのだ!
彼は湧き上がる怒りを胸に秘め、筋違いではあるがこの勇者と対峙すことを決めたのだった。