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第72話 エレメントドラゴン

フィーリーアとユリウスが去った後のシラルークは静寂に包まれていた。



「……えっと」



ギルドマスターが何か言おうと、口を開くが何を言っていいものか分からない。


キョロキョロと辺りを見回し、法王や都市長を見るが、2人も似たような状態だった。


意を決して、ギルドマスターは話を始めた。



「えっと、そのギー君と呼ばれるエレメントドラゴンはユリウス様が本当に殺してしまったという事でしょうか?」



法王は自分に言われているのに気付いたのかはっとギルドマスターの顔を見た。



「分かりません。神ユリウスが地上に姿を見せるのは大変珍しい事ですから。法王である私も見たのはこれで3度目です」



というか法王はそもそもあまり状況を理解できていない。突然ユリウスが神であることを証明するためだけに呼び出されたのだ。当然である。


だが、なんとなく聖竜が敵討ちの為にこのシラルークにやってきていたという事だけは理解していた。


そして、目の前で神ユリウスが自分がその真犯人だという事を聖竜の前で言ったため、今の事態になっているという事も。



「それが本当だったとしても神ユリウスが討ったというのであれば、ギー君とやらは邪竜だったのだ! 私は神ユリウス様を信じるぞ!」



そんなことを熱狂的なユリウス教信徒の都市長が喚くように言う。


確かに普通に考えればその通りだろう。


なにやら実際会ってみたら変わった神だったが、今までここにいた金髪の剣士はあの神ユリウスなのだ。

理由もなく、エレメントドラゴンに手を出すとは思えないとギルドマスターは考えた。


本当にギー君を討ったのが神ユリウスだったとするのならだが。



「私には、ユリウス様がこのシラルークを守るために、真犯人だと偽ったように見えたのですが?」



神ユリウスがやってきたタイミングが余りにも良すぎた。


あれではギルドマスターにはそうにしか見えなかったのだ。



「ですが、神ユリウスはなにやら事情を知っていたようですが?」



法王がギルドマスターの意見に意を唱える。


確かにまったくの無関係ではないだろう。


でなければ聖竜の気など引けるはずもなかったはずだ。



「事情は知っているが、話すことはできなかった? つまり犯人を庇っている?」



「それこそ、誰をですか? 神ユリウスが身を挺して守る人物でもいるのですか?」



確かに法王の言う事も最もだった。


逆ならあり得なくもないだろうが、神ユリウスが身代わりになる存在などギルドマスターの知る限り皆無だ。


そんな事を3人で話し合っている中、エレメントドラゴンの3体がこちらに向かって歩いてきた。



「あのぅー」



話しかけてきたのは3体のエレメントドラゴンの内のアクアと呼ばれていた竜だった。



「な、なんでしょう?」



確かに聖竜の脅威は去った。


だが、この場には3体のエレメントドラゴンが残っている。聖竜ほどではないがこのエレメントドラゴンも伝説に謳われるほどの竜なのだ。


ひとたび暴れ出したら、シラルークに残る戦力ではとてもではないが、太刀打ちできるはずがない。


それを悟った人々は遠巻きにエレメントドラゴン達の様子を窺っている。


エレメントドラゴンに相対しているのはギルドマスターと法王と都市長の僅か3人だ。



「アクア、怯えられているよ」



横にいたエレメントドラゴンがアクアに言う。


アクアが聖竜を止めに入った時にアクアに話しかけていた竜だ。



「そうね、ガイア」



アクアがそう言うと、3体の竜達が見る見るうちに体を変化させていき——


気付くとそこには2人の女性と1人の男性が立っていた。



「お騒がせしました。皆さま」



水色の髪の女性がそう言うと、腰を折り、ギルドマスター達に謝罪する。


声の感じからして、その女性はエレメンタルドラゴンのアクアだろう。


信じられない光景だったが、目の前で起きた光景にギルドマスターは無理やり納得することにした。


この女性がアクアなのだとすると立っている位置関係からアクアの左後ろに立っている茶髪の青年がガイア、右後ろの緑髪の少女は名は分からないが、ここに来てから一言も言葉を発していない残りのエレメンタルドラゴンだろう。


さらーっと3体の人間化したエレメントドラゴンを見たギルドマスターは—思った。



(美男美女だな! おいっ!)



アクアは身体の凹凸こそ少ないが、細身でかなりスタイルが良いモデル体型だ。今は少し困った顔をしているが笑顔もさぞ美しいに違いない美女だ。ていうか困っている顔も滅茶苦茶美しい。


次にガイアだが、普通に美形だ。うん。茶髪イケメン。


そういえば【魔王】のアルジールとかいう金髪もイケメンだったが、それに近いレベル。


ギルドマスターに言えるとしたらそれだけだ。ていうかそれ以上は何も言いたくない。


最後に名も知らない緑髪の少女。


目の色も髪と同じ緑眼であまり表情を表に出すタイプではないのか、こんな状況でも無表情である。


だが、例に漏れずとてつもない美形だ。大人になればさぞ美人になるに違いない。


というか既に大人なのか? だというのなら一生この容姿?


娘に欲しい。絶対欲しい。永遠に愛でれるではないか。……いかんいかん。


ギルドマスターの総評。全員顔小さい……以上。


一瞬の内に3人の評価を終わらせたギルドマスターは「こほん」と咳ばらいをした。



「顔を上げてください。えーっと——」



「アクアで構いません」



「え、あ、じゃあアクアさん。謝罪してくださったという事はあなた達にシラルークを攻撃する意思はもうないと考えて大丈夫なんでしょうか?」



わざわざ人間の形を取ってまで、シラルークの人々を落ち着けようとしたくらいだ。


恐らくそうなのだろうが、ギルドマスターとしては一応確認を取っておくべきだろう。——本当は都市長の仕事な気もするが、明らかにアクアがギルドマスターに話しかけているので仕方なくだが。



「はい、もちろんです。そもそも私達3人はシラルークを攻撃するつもりなどありませんでしたが、母様がその……」



あ、言わなくても分かります。止めても無駄だったんですよね。見てました。


ギルドマスターはアクアの次の言葉を待たずしてそう理解したのだった。

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