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第68話 最後通告

「なんでしょうだと! ……ふふふ、この世界で最も愛らしく、凛々しいが時におっちょこちょいな面もあってな。大きな角を生やしておるくせに人間界をこよなく愛していた。そんな所がまた可愛くてな。この前なんか美味いワインが手に入ったと言ってわざわざお土産にとても上質なワインをくれたりもして——」



目の前の威厳に満ちていた聖竜がいきなりデレ始めた。


先程までブチ切れていたのに、凄まじい落差だった。



(……話が長いな。大きな角? ドラゴンか?)



ギルドマスターは聖竜の話から聖竜の大事なものはドラゴンだと推定した。



(つまり、アリアス様は普通のドラゴンだと勘違いして、聖竜の子供を殺めてしまったという事か?)



それならまだあり得ない話ではない。


冒険者協会の討伐依頼には時々だがドラゴンが含まれることもなくはない。


ギルドマスターは聖竜の横にいたエレメンタルドラゴンをチラリと見た。



(だが、流石にあのクラスのドラゴンを倒したとなれば大騒ぎにならないか?)



ドラゴンはいずれも強大な力を誇る魔物の一種だが、勇者ともなれば討伐は可能だ。


だが、それは一般的なドラゴンであって、倒したとしても「アリアス様がドラゴンを倒したぞ! すげぇー!」くらいの話にしかならないが、仮に目の前にいるエレメントドラゴンクラスの竜を倒したというのであれば話は別だ。


間違いなく、今回の魔人討伐にすら匹敵する大ニュースとなっただろう。


だが、ギルドマスターはそんな話は聞いたことがなかった。


目の前でデレている最中の聖竜の話にギルドマスターは割って入った。



「聖竜様、失礼ですが、あなたの話には無理があります」



「……なんだと? 私が嘘を言っているというのか?」



デレから抜けた聖竜の重々しい声がまたシラルークの町に響き渡った。


聖竜の情緒はどうなってるんだ?——とギルドマスターは内心で思ったが、やはりギルドマスターはそれを口には出さない。



「嘘ではなく勘違いということはありませんか? 私は日々、冒険者協会で起きた重大事項には目を通しているつもりです。ですが、そちらにおられるエレメンタルドラゴンの皆様クラスの竜をアリアス様が倒したなどという話は聞いたことがありません」



「そんなこと私が知るか。私はあの子本人から直接聞いていたのだ。「しょっちゅう勇者がやってきてさー。ホントいい加減飽きてきたんだよねー」と言っているのをな。勇者とやらが可愛いあの子を殺したに違いない! ……それとも貴様は私の大好きなあの子が嘘を言っていたと言うのか?」



聖竜はそう言うと一気に感情を昂らせ、迫力が更に増した。


身体に纏わす魔力の濃度もデレていた時とは桁違いとなっている。


つまり簡単にいえば聖竜は怒っているのだとギルドマスターは理解した。



「お、おい、ギルドマスター。とにかく聖竜様に謝れ。まずいぞ、この状況は」



都市長が隣から耳打ちしてくるが、そんなことはギルドマスターも百も承知だ。



(……なんだ、その話は? 勇者がしょっちゅうやってきて? 飽きてきた? 聖竜は一体何の話をしているんだ?)



ギルドマスターには聖竜の言っている話が理解できなかった。


その『あの子』の言っていることが聖竜の言う通り嘘でないとすれば、たまたまの遭遇戦などではなく、明らかに何度も勇者が討伐に出向いているという事になる。


それでは言い訳のしようなどあるわけがなかった。


仮にその『あの子』が嘘をついていたのだとしてもそれをギルドマスターが証明する術など存在しない。


聖竜の言っていることが正しければ『あの子』は既に何者かによって討たれてしまっているのだから。



「アリアス様が何度も同じ相手の討伐に出向いているという話はありません!」



「くどい! 私もあの子も嘘をついているなどと言う事はありえない。ならば隠し事をしているのは貴様らという事だ!」



聖竜の身に纏う魔力の濃度がさらに増した。



「これで最後だ。……勇者はどこにいる?」



そんな聖竜の最後通告にギルドマスターが出した答えは——。

聖竜の情緒不安定ですね。

よほど『あの子』を愛していたんですね。


次回、あの人がシラルークを救います。そうあの人です。

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