第33話 アルメイヤの回想①
蛇足だよ!って言われちゃいそうですが、書いている途中で思いついてしまったので、アルメイヤがシラルークに来るまでの話入れちゃいました。
さっさと勇者と主人公会わせろって読者のみなさんすいません。多分すぐに終わります。多分w
アルメイヤはなぜかそんな高級宿に泊まれるほどの金を持っていたらしい。
異次元空間に人間界の金をしこたま放り込んでいた俺とは違い、アルメイヤが魔界の金ならともかく人間界の金を持っていたとは思えないのだが……。
アルメイヤの話では準備する間もなく俺の転生に巻き込まれたのだ。事前に準備しておくことは不可能だ。
「この街に来る途中にもらいました」
「誰から!?」
意味が分からない。
美人とはいえ、どこの誰とも分からないアルメイヤに金を恵んでくれる人間がどこにいるというのか?
よくよくアルメイヤから話を聞いてみると、転生後に見知らぬ土地に放り込まれたアルメイヤがどうするか途方にくれていた所、見知らぬ男の集団に囲まれたのだという。
男たちのリーダーらしき男はアルメイヤに言った。
「げへへ、姉ちゃん高そうな装備品つけてるじゃねぇか? 俺達金に困ってんだ。俺達にくれねぇか?」
なんとも丁寧な盗賊である。問答無用で襲い掛かったり、口汚く暴言を撒き散らさないあたりどこぞの兄妹よりも好感を持てる。
するといやらしい笑みを浮かべていたリーダーの男にアルメイヤは冷たく言い返した。
「黙れ、ごみ共。困っているのは私の方だ。死にたくなければ今すぐ消えろ」
アルメイヤの言葉が理解できなかったリーダーの男は一瞬固まった後激高し、アルメイヤに襲い掛かった。
「死ぬのはてめぇだ!」
リーダーと共にアルメイヤに襲い掛かった集団の男たちは数秒後には全員地面に這いつくばっていた。
アルメイヤが言うには全員奇跡的に生きていたらしい。
アルメイヤが這いつくばるリーダーの喉元に剣をつき付けながら言う。
「遺言はいらないな。では死ぬがいい」
「ちょちょちょ、ちょっと待て! いや、待ってください! 聞けば貴方様は何かお困りの様子! 俺達ならば貴方様のお悩みを解決できるかもしれません! だ、だからどうか命だけは!」
リーダーの男は既に抵抗は諦めていた。目の前のアルメイヤの機嫌を取るべく、命を助けるよう懇願した。
「……ではここはどこだ?」
「えっ、シラルーク近くの街道ですけど?」
「聞いたことがないな。どなたの領地だ?」
「えっ、誰でしょう? そこまでは分からないです。すいません」
「なんだと! 貴様! そんな事も知らないのか!」
「ひぃぃ、すいませんすいません!」
盗賊が今いる土地の領地など知っているわけもないが、アルメイヤはここが魔界のどこかだと思っていた。
つまりアルメイヤからすれば、目の前のこの男は今いる場所を支配している四天王の名すら知らないということになる。
唯一の情報源でなければ首を斬り飛ばしていた所だろう。
「まぁいい。それにしてもお前達は弱いな。どなたの配下だ? まさかお兄ちゃんってことはないだろうが」
まさか木っ端魔人とはいえこんな雑魚が至高にして最強(魔王様は除く)である魔人アルジールの配下など考えたくもない。
だが目の前の男はこんな状況だというのに凄い冗談をぶっこんできた。ちなみにアルメイヤはつまらない冗談は嫌いである。
「……はっ? 配下? 俺達フリーで盗賊やらさせている者なのですが……」
「つまらない冗談だ。余程死にたいらしいな」
魔界にいる魔人は強さに関係なく必ずいずれかの四天王の下についている。
例外があるとすれば魔王ギラスマティアただ1人である。
「いやいや! 今時盗賊なんてみんなフリーですって!」
男の必死の形相を見てさすがのアルメイヤも何かがおかしい事に気づく。
「4人の魔王軍四天王の方々の名を言ってみろ」
アルメイヤの突拍子もない質問に男は変に思いつつも素直に答えた。
「えっ、えーと有名なのは魔人アルジール。それに魔人ブリガンティスでしょうか? あとはすいません、ちょっと分からないです」
有名なのは……もクソもない。全員が有名だ。
魔人アルジールの名が最初に出てきたのは褒めてやりたい点だが、魔人であれば全員の名を即答できなければおかしい。
「あっ、俺、知ってます! 魔人アルジールの姉の魔人アルレイラ。そいつも魔人四天王の1人ですよ」
後ろの下っ端盗賊の男がリーダーの男の答えを補足するが、他に声は上がらない。これだけの人数がいながら3人しか答えられないのは明らかに異常だ。
そして、アルメイヤは1つの可能性に行き着いた。
「貴様らもしかして人間か?」
「えっ、逆になんだと思っていたんですか?」
男は即答した。
どうやらそうらしい。……ということは。
「……ここは人間界か?」
「えぇ、そうですよ?」
明らかにリーダーの男は不審そうにアルメイヤを見ている。
盗賊にどう思われようが、アルメイヤは気にはしないが仮にここが人間界で目の前の盗賊達が人間なのだとしたらおかしな点がある。
「なんで貴様ら私を襲おうと思った?」
勇者ならともかく一般人が魔人に襲い掛かるなど考えられない。
理由は簡単だ。仮にアルメイヤが木っ端魔人だったとしても只の人間に勝ち目などあるはずがないからだ。
「あ、いや、貴方様みたいな美人で華奢な女性がまさか高ランクの冒険者とは思ってもみなくて……。どこぞの金持ちのお嬢様がはぐれたものかと思いまして、高級な装備をはぎ取ってしまおうかと……」
美人はともかくアルメイヤは龍神族だ。明らかに人間とは違う身体的特徴を持っている。金持ちのお嬢様どころか人間と見間違えることすらあり得ない。
「私のどこがにんげ……えっ」
そういえば尾の感覚がない事にアルメイヤは今になって気付いた。
慌てて、アルメイヤは顔や頭をペタペタと触るがあるはずのものがない。
更にアルメイヤは魔獣の皮で作った薄手の手袋を慌てて外すと——
「なっ!」
そこにあったのは、つるつるとした白い肌。これではまるで……。
「貴様ら、私が何に見える?」
「えっ、いや、だから美人なお嬢さん……」
「……人間に見えるんだな」
「えっ、あっ、はい」
ますます男はアルメイヤを奇妙なものを見る目で見るがそんなことはどうでもいい。
「なるほど、魔王様が言っていたことはそういうことだったか」
おにいちゃんと魔王様の話がたまたま聞こえていたのだが、その中で転生やら主人公やらのワードがちらほらと聞こえていた。
ここで初めてアルメイヤは自分が人間に転生してしまったことに気づいたのだった。




