第20話 折れた剣とアルジール
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「そうか、分かった。……なら死ね」
お姉さんは左手から炎を作り出し、アルジールに向けて炎の渦を放つ。
「火炎流か」
第3級の炎系の攻撃魔法だ。恐らく先程洞窟で放った魔法と同じだが、今回は対個人用に範囲を絞って殺傷力を上げているのだろう。
どう考えてもF級冒険者が使える魔法ではない。
F級冒険者の場合魔法そのものが使えない者も多く、使えてもせいぜい第7級魔法であるファイヤーボールが関の山だろう。
アルジールはお姉さんが放った火炎流をギリギリの所で回避すると、炎の渦はアルジールの後ろに通り過ぎていく。
「甘い! 死ね!」
アルジールが炎の渦を回避したのを見たお姉さんがそう叫ぶと、後ろに通り過ぎて行ったはずの火炎流がありえない角度でアルジールに向けてUターンする。
それと同時にお姉さんはアルジールに向けて突進を開始した。
(結構強いな。火炎流をあそこまで自在に操作してる上に、戦い慣れもしてる。魔界の魔獣相手でも結構やれるんじゃないか。……しかし口悪いな)
少なくてもフェンリル程度なら容易く勝てる実力はありそうだ。口の悪ささえ直せば高名な冒険者にもなれそうだ。
「黙れ、女! 死ぬのは貴様だ!」
しかしアルジールも色んな意味で負けてはいなかった。
背後から迫る火炎流を俺が洞窟内で放った魔法ウィンドストームで迎え撃つ。
お姉さんと同じように範囲を絞ってのウィンドストームだ。
アルジールはこう見えて芸達者で全ての属性の魔法を万遍なく使える。
つまり俺の真似をしたのだ。俺を崇拝しているアルジールらしい。
後方の火炎流をウィンドストームで相殺したアルジールは迫りくるお姉さんを剣で迎え撃つべく俺が与えた初心者装備の剣で待ち構える。
……そう、お姉さんが持つアダマンタイトの細剣を俺が与えた初心者装備丸出しの剣でだ。
「ちょ、おい!」
俺は叫ぶ。流石にそれはムリゲーだ。
だが、俺の言葉が届いていないのか迫りくるお姉さんの剣をアルジールは初心者装備の剣で迎え撃った。
結果……。アルジールの持つ初心者装備の剣はお姉さんの剣戟により真っ二つに両断された。
「……な、んだと?」
アルジールは目の前の光景に絶句する。
俺が与えた初心者装備の剣でお姉さんの剣を受け止められるとそう信じ切っていたようだ。
その瞬間、アルジールの殺気が先程のものとは別人のように膨れ上がった。
お姉さんはアルジールの初心者装備の剣を断ち切って追撃のチャンスだというのに、アルジールの凄まじい殺気を感じ、すぐさま距離を取る。
「なんだ、貴様は!?」
お姉さんが問いかけるもアルジールから返事は返ってこない。
「よくも……」
アルジールはそう呟いた。
「よくもクドウ様より賜った魔剣を……。もういい。殺す。殺す。殺す」
アルジールは俺からもらった断じて魔剣などではない初心者装備の剣を真っ二つにされて、完全に我を忘れている。
アルジールの周囲、いやこの辺り一帯がさっきまで明るかったのが嘘だったかのように闇が落ちた。
そして、俺達の上空に圧倒的な魔力の塊が形成され、それが周囲一帯を覆いつくす雷雲へと姿を変える。
雷雲がバリバリと爆音を辺りに撒き散らし、アルジールの指示を待つかのように上空に待機している。
その光景を見たお姉さんはポツリと呟いた。
「……第1級魔法……雷神招来」
正解だ。
このお姉さんがなぜその名を知っているのかは知らないが、四天王筆頭、魔人アルジールの最大最強の魔法にして、人類では届き得ない魔法の極致、第1級魔法の1つだ。
ちなみに昔俺がアルジールと戦った際、自己紹介中の俺に対してぶっ放した魔法でもある。
既に準備は整った。
いつアルジールの攻撃は始まってもおかしくはない。
「待って! 貴様……いえ貴方は……」
お姉さんの様子がちょっとおかしい。
まるでアルジールの事を知っているかのような口ぶりである。
お姉さんはアルジールに制止を呼びかけるが、アルジールは冷徹に笑った。
「もう遅い。魔王様を愚弄し、魔王様より賜った魔剣を折った罪を懺悔しながら死ね!」
お姉さんの異変を察知した俺は攻撃が始まる直前、アルジールに制止するように叫んだ。
「待て! アルジール!」
咄嗟に俺はアルジールの本当の名で叫んでいた。
アルジールはそれに気づくが、アルジールの最強魔法雷神招来は既に攻撃に移った後だった。




