- IF物語。もし久遠家諸島防衛艦隊と欧州合同艦隊が対峙したら? -
YVH様から頂いた作品です。
本編と必ずしもリンクしていませんので、ご了承ください。
-イタリア半島某所-
side ある枢機卿
「……聖下。御聖断を……」
ここ幾年か、新世界への布教が進んでおらぬ……
それと同じく、此方を支持する国々からの喜捨も減少しておる……
原因は分かっている。西の海(大西洋)に出没する怪物の所為だ……
それと、時を同じくして出てきたクオーンの黒い舟……
此方を支持する国々の船は悉く沈められるのに、彼の者たちの船は
まったく沈められる様子が無いという……
関係性は不明だが、全くの無関係ではあるまい。
これまでは各国に対応を任せてきたが、討伐が悉く失敗している現状では
海外に布教を行っている各修道会も騒ぎだすのは時間の問題……
からくも怪物の襲撃を生き延びた者たちの証言を総合する事によって
かのクオーンの拠点も、ある程度は目星が付いた。
黒い舟が多く出入りしているというジパングの何処かであろう……
「……よかろう。かのクオーンと、その一党を異端に認定し
各国に神聖同盟を結ばせよう。そして、彼の者どもを浄化するのじゃ。
ここに余の名で十字軍の派兵を宣言する!目的地は、かのクオーンの本拠じゃ!!」
かくして、イタリア某所の宮殿で、時の教皇の断が下った。
こうして欧州合同海軍と久遠家諸島防衛艦隊との戦闘が勃発する事が確定した。
その事を柱にとまっていた虫が見ていた。某年某月の事であった……
- IF物語。もし久遠家諸島防衛艦隊と欧州合同艦隊が対峙したら? -
-月宙域・宇宙要塞シルバーン-
side モス
「で、欧州の状況は?」
【はい。欧州監視班からの報告によりますと、大西洋岸の各港と
地中海の幾つかの都市国家の港に船が集結しつつあります】
数ヶ月前、欧州監視班から司令を始め、関係者全員が教会内で
異端認定されたと報告がありました。
すぐさま対策会議が開かれ、対抗策が話し合われましたが、どの程度の
対処にするか、司令とアンドロイド方の意見調整に多少手間取りましたが
最終的に敵艦隊の殲滅が決まりました。
手順としてはヒルデ留守司令以下、我々シルバーン組が敵の状況監視。
実際に対処するのは、硫黄島基地所属の諸島防衛艦隊と決まりました。
「そうか……白鯨部隊をジブラルタル海峡に移動させて、地中海から出てくる
艦隊は閉じ込めておきたいけど……」
おやおや、留守司令がぼやいていますね。仕方ありませんね……
【留守司令、今回は銀河級・宙船級の実戦評価も入っているのですから
その手は使えませんよ】
「分かっているわよ。今回。こちらは情報収集、及びサポート。
直接対処するのは硫黄島だって。でも、敵艦隊が動く事を
それとなくオスマントルコに流すくらいは良いわよね……
一応、司令たちから許可は貰っているし」
【その程度なら問題無いかと】
「それじゃあ、早速」
【了解しました。小アジアに展開している部隊に連絡致します】
以上のようなやり取りがシルバーンで行われた数ヶ月後、神聖同盟軍
合同艦隊百五十隻が大西洋から久遠諸島へ向けて出港していった。
- 地球、硫黄島・地下司令室 -
side マリア
「シルバーンより報告。敵艦隊が拠点を出港したとの事」
「了解しました。テレサに伝達を。
所定の計画に基づいて敵艦隊を殲滅せよ。と」
「了解しました」
ふぅ……ようやく動き出しましたか……
我々の活動で、史実よりだいぶ国力が落ちていますね。
史実のスペインなら、単独でこれだけの艦隊は出せたのですが
今は複数個所の合同でようやくですか……
イングランドは別班の働きで、今回の遠征艦隊に国としては
加わってはいないようですが、それでも一部の貴族達が合同で加わっていますね。
ウォルシンガムに潜り込んだめぐみが下手を打つとは思えませんから
後で確認しますが、恐らくは厄介払いでしょうね……
- 大西洋某所・久遠家諸島防衛連合艦隊 -
-旗艦・銀河級ガレオン型航宙艦。銀河級一番艦・銀河01、艦橋-
side テレサ
「提督、硫黄島より指令
所定の計画に基づいて敵艦隊を殲滅せよ。以上です」
「そうか、分かった。全艦隊に指令。
目標座標まで通常航行で進軍。現着後、別命あるまで待機」
「了解」
ようやく、銀河級・宙船級の本格的な実戦テストが出来るね。
ミレイ・エミールコンビも蟹江に移動になったから
これからはあたし達が島々を守らなきゃならないからね……
艦の性能は、しっかりと把握しておかなくちゃね。
- 大西洋某所・神聖同盟軍合同艦隊 -
-艦隊旗艦・艦橋-
side 艦隊司令官
実に壮観だ。
百五十隻のガレオン船で構成される艦隊。そして三万以上の兵……
これだけの戦力があれば蛮地の征服も可能であろう。辺境の異教徒風情が
我ら主に選ばれし欧州人に対抗しようなど愚かの極みよ。
「司令官殿。お忘れではないと思いますが、かの地の征服がなった暁には
クオーンの技術者たちは、優先して我らヴェネツィア・ジェノヴァが
技術奴隷として貰い受けますぞ」
……チッ。守銭奴どもが……
「分かっておるっ!
陛下からも、そう命じられておるわ!」
「なら、よろしいので御座いますよ……ふふふふ
では失礼を……おお!忘れる所でした!
彼のカルマ・クオーンの女を一人。
私めに頂ければ嬉しいですね……」
フンッ!好き者が……
「……クオーンの女の内、名が伝わっている
エル・ジュリア・ケティの三名以外は好きなのを連れて行け。
先の三名はビザンツ帝国の皇族の末裔かもしれんでな。
この三名については、陛下が愛妾にと望まれておる」
「ほうっ!それはそれは……
無事、愛妾にされた際には、所用品の御用は私めに……」
「……宮廷の者には伝えておく。用がそれだけなら下がれ」
「はい。そうさせて頂きまする……」
行ったか……
まったく、あのヴェネツィアの商人は好きになれん!
船と水夫を用立てたのでなければ、無礼討ちにしてくれるものを……
まぁ、よい。わしもクオーンの女を一人ばかりもらうとするか。
水夫と兵たちにはクオーンの領土で好きにさせるか……
……それにしても、この辺りは海鳥が多いな……
数日後の大西洋某所……
-銀河01・艦橋-
side テレサ
「先行中の海鳥型ロボより、敵艦隊の位置情報が入電。
我が艦隊から百キロ付近を、三日月型の陣形で航行中
スクリーンに出します」
へぇ……なかなか壮観だね……
でもね。その程度の艦隊じゃあ、ウチには勝てないよ……
「全艦隊に指令っ!
第一級戦闘配備っ!!
宙船級全艦は、銀河級部隊前方に横列で展開!
水流ブレス砲用意!」
ある宙船級……
side 艦長
「旗艦より入電。
宙船級全艦は、銀河級部隊の前面で横列に展開後
水流ブレス砲を準備せよ。以上です」
「分かった。本艦も行動を開始しろ」
「了解」
いよいよだな……
鏡花艦政長とギーゼラ技師長合作の艦の性能、存分に示そうではないか……
銀河01……
side テレサ
「全宙船級、展開完了」
それじゃあ、いきますか……
「攻撃開始っ!!」
ある宙船級……
side 艦長
「テレサ提督より攻撃命令、来ました!」
!よし!!
「水流ブレス砲、準備っ!」
「水流ブレス砲準備。タンク内、満水を確認!
艦首部・空間跳躍機関作動!ブレス砲とのリンク正常!
発射準備完了!」
「撃っ!」
私の命令で高圧で撃ち出された水の塊が空間跳躍特有の現象と共に消え
目標の敵艦に跳んで行った……
神聖同盟軍所属ガレオン船……
side 船長
本国を発って、ここまで出てきたが……
今の時点で何も無い事が不気味だな……
前の航海の時は、あの忌々しい教会の野郎を乗せていた所為か
すぐに怪物に襲撃されたが、今回は俺の船には居ないが
他の船には、司祭だ、司教だ、お偉方が乗っているからな。
なにがあっても……うぉ!?なんだ船が!!
「どうしやがった!!」
「せ、船長!船倉に突然、水が大量に!!」
なにい……!?
「穴でも開いていたのか!?」
「違いやす!本当に突然、船倉の壁が光ったと思ったら
大量の水が!」
なんだと……?
「!まずいぞ!!
すぐに水を掻き出せ!!」
「もうやってやすが!どんどんと水が!!
このままじゃあ……」
……こいつがクオーンの魔術か……
銀河01・艦橋……
side テレサ
連中。突然、船内に大量の水が出てきたら焦るだろうねぇ……
今も宙船級達から、水塊がどんどんと転送されているからね。
スクリーンを見ると、何隻かはバランスを崩して隣の船を巻き込んで
横転しているね。でも。此方の接待は、まだまだ続くんだよ……
「海鳥型ロボに攻撃命令。連中の帆や縄を切ってやりな。
続けて母艦機能のある全ての艦にバショウカジキ型ロボと
イッカククジラ型ロボを全機発進させるよう命令!
敵艦隊所属船の船底や舵を破壊させる」
この分だと、ガルバリン砲偽装型・粒子速射砲の実戦テストは
出来そうにないね……エル・セレス・鏡花・ギーゼラ達には
何て言おう……
神聖同盟軍合同艦隊・旗艦。艦橋……
side 艦隊司令官
ど、どういう事だ……?
まだクオーンの領域には程遠いというのに、この事態は……
「ええいっ!どうなっておるのだっ!!」
「分かりません!突然、船内に大量の水が出現する船が続出!!
既に相当数の船が水の所為で、バランスを崩して横転・沈没!
また未確認情報ですが、海鳥たちが帆や縄に突っ込んで来て
それらを破断したとの報告も!」
……クオーンは悪魔でも召喚したのか?
それとも、カルマ・クオーン自身が魔王なのか……
「司令官!第二十六号船が沈没!ヴァチカンから来られた司教猊下が帰天!」
なっ!?
「本当か!?」
「隣接する船からの報告です!
尚、急速に沈んだ為に、救助は出来なかったとの事です……」
何という事だ……
「司令官、指示を!
このままでは艦隊が……」
!そうだな……
「全艦隊に指令!!
各艦、間隔を広げて僚艦との衝突を回避せよ!」
「司令官!」
船長か。今度は何だ……?
「何か!?」
「舵が利きません!航行不能です!!」
な……んだと……
- オスマントルコ帝国・帝都イスタンブール -
-トプカプ宮殿内、某所-
side ある高官
「誠か?」
「は。例の船の商人たちからの情報です。
あの者らは異教徒ではありますが、西の異教徒と違って信用が置けます。
まず、間違いではないかと」
フム。確かに、あの者らは西の異教徒どもと違って信用できる。
地中海では随分と世話にもなっておるし。さて、どうしたものか……?
「……西の地に間諜を放て。彼の者らが言うように連中が大挙して
欧州を開けたのなら好機。スルタンにも奏上して、神の土地を増やす準備を致す」
「心得ました。神は偉大なり」
こうして放たれたオスマントルコの間諜たちが、宮廷の人間の言う
「例の商人達」の協力で得て情報を持ち帰った後
帝国は史実には存在しなかった、欧州遠征軍を編成し始めるのであった。
-硫黄島・地下司令室-
side マリア
『……と言う訳で。超遠距離からの攻撃で敵艦隊の八割を撃沈。
残存船は海流に流されて四散。こちらの損害はゼロだよ、姉さん』
「ご苦労様、テレサ。敵残存艦はシルバーンのヒルデ留守司令の指示で
白鯨隊とクラーケン隊が掃討したそうですよ」
『あれ?イザベラじゃないんだ?』
「彼女は尾張の屋敷に行っていますよ」
『そっか……これより硫黄島に帰港するよ姉さん』
「気をつけてねテレサ。
そうそう、鏡花とギーゼラが報告書を楽しみにしているそうよ。ふふ」
『ゲ……』
こうして、今回の騒動は無事に終わった。
遠征艦隊の壊滅は欧州諸国に多大な衝撃をもたらし
また無理に艦隊を編成した事により各国の財政は破綻寸前になったという。
イングランドでは遠征に加わっていた貴族たちが没落し、代わって
ウォルシンガム家の養女にして、エドワード六世付の秘書官である
マリン・ウォルシンガムの発言力が増すのであった。
久遠マリア・久遠テレサ
ギャラクシー・オブ・プラネットでは、シルバーンの鋼鉄の姉妹と
言われたアンドロイド姉妹。タイプは両者とも戦闘型。
久遠めぐみ
ギャラクシー・オブ・プラネットでは掃除の白魔女と呼ばれた
参謀型のアンドロイド。現在はイングランドで国王付きの
秘書官をしている。現地名はマリン・ウォルシンガム。