結婚式の裏側で。或いはヒルデの憂鬱
本作はYVH様から頂いたものです。
- 千五百四十九年十二月頃 月宙域、宇宙要塞シルバーン ー
-シルバーン内、最重要中枢区画ヒルデ執務室-
side ヒルデ
……尾張の司令からプライベート用秘匿回線で連絡があり
難題を依頼されてしまった……
副司令以下、上級幹部連に気付かれないように
金で百二十二個の結婚指輪を制作してくれと……
「どうしよう……
材料に関しては司令のへそくりから出す許可をもらったから
中央管制室で管理している数字からは気取られる事は無いけど
問題は加工場所よね……」
ペシペシ
「シルバーンの工廠だとギーゼラ技師長に気付かれそうだし……
いまモスが探してくれているから、連絡待ちね……」
ペシペシ;ガゥッ!;
「え!?ビックリした……大牙、なに?」
;グルグル。ガウ♪;
考え事に没頭していて、大牙が部屋に入ってきたのに気付かなかったわ……
「やっと気が付いた」と言わんばかりな顔をして、ニコニコしながらお座りをして
尻尾をフリフリしている。
それにしても、改めて見ると大きくなったわね……
保護した時はロボやブランカと同じくらいだったのに、今ではシェパードクラス。
「それで、どうしたの大牙?」
私が問いかけると;ガウ;と鳴いた後、大牙の背中からオガサワラオオコウモリのサワが
ヒョコッと出て来て大牙の首にあるペンダントをいじると、3Dホログラフが投影されて
見慣れたマンモスが映し出された……
『【ご報告いたします。留守司令、加工できる場所を見つけました。
場所はシルバーン南半球エリアのD538区画です。一応調べましたが
中央システム、中央管制室の制御・監視は受けておりません】』
「そう、よかったわ……で、司令の注文通りの物は作れそう?」
『【はい、大丈夫でございます。司令は金を、おそらく純金をご指定でしょうが
それですと強度に不安がございますので、指輪を贈られる方々の
氏名・結婚年月日が記録されたデータチップ、GPS発信機を封入した
カーボンナノチューブ製のリングを芯にして周りを純金で覆い
指輪の内側にも氏名・結婚年月日をレーザー刻印した後に
対爆、耐衝撃性に優れた分子結合皮膜を施した物を作ろうと存じます】』
「ちょっと大げさな気もするけど。戦場に出る方々もいるし、妥当かしらね。
あ。後、装着したら婚姻記録が自動で中央システムに送られるようにして置いてね」
『【了解しました。期日までには仕上げて、特務輸送隊に渡します】』
こうして、要塞側の段取りが他のアンドロイド達・各要員に気付かれずに用意がなされ
定例になっている全アンドロイド達の年末年始・一斉尾張訪問直後に指輪が制作されて
かねてからの手順通り、尾張の久遠一馬の元に送られたという。
結婚指輪の話を読んだ後に、突発的に浮かんだネタです(笑)