閑話・三百話記念第三弾
シルバーンの日常と、兵器テスト2
小惑星破砕騒ぎの数日後、シルバーンは土星・天王星中間宙域に空間転移。
先の小惑星破砕の時のように、ゲーム世界から転移して初めての大規模要塞兵装の
試射を行った。使用された兵器は……
要塞表面上の対空砲塔群のビームを、操作可能な反射粒子にて一点に収束して発射する
大口径砲「アルキメデス・ミラー」
同じく。要塞表面上の対空砲塔群のビームを、今度は乱反射させて要塞全周上の物体を
オールレンジ攻撃する「ミラーボール」
以上の試射を行った。
結果は。前者は直径数キロに及ぶ光の奔流によって
予め用意されていた総数、千隻ほどのダミー艦隊を一撃で消滅させた。
後者は通称通り、光の乱反射によって要塞に接近中だった
他のダミー目標群を数分の応戦で一掃した。
side ヒルデ
懸案だった要塞兵器の試射も無事に終わったわね。
リースル中央管制室長の話だと、こちらに転移する前の時も使っていなかったそうだし。
ただ、「ギャラクシー・オブ・ザ・プラネット」内の大規模会戦。
第四十三次・馬頭星雲会戦で他のプレイヤーが保有するシルバーン級要塞が
同じ兵器を使って無双していたらしいけど……
あの兵器を撃ちまくる……(冷汗)
笑えないわ……(ガクガク)
大規模兵器による無双風景を想像して、青い顔をしていたヒルデであったが
地上拠点から依頼(押し付け)された、オガサワラオオコウモリの子供「サワ」の
世話をする為に自室に引き取るのであった……
なお。エピオルニスの雛達は、専用スペースで就寝中。普段は皆、そこに居る模様。
更に後日……
- 宇宙要塞シルバーン天頂(北極)エリア・第一中央宇宙港 -
この日。地球に向けて発艦する、数隻の艦(船?)があった。
-試作ガレオン型航宙艦・銀河級一番艦「銀河」-
ここ「銀河」の艦橋では、出港準備に追われていた。
side 「銀河」艦橋オペレーター・バイオロイドA
「艦橋より達する。総員、出港準備に移行……要員の配置を確認した。
中央管制室より『周辺航路状況、航路予定宙域に脅威となる物体無し』との返信あり」
「続けて、港湾管制より『貴艦の拘束アームを解除する』との通達あり
……拘束アーム、解除を確認した」
「ダメージコントロール要員は、主要区画監視を厳に。
出港に関する注意事項、休止信号、共に無し。
港湾管制からのデータリンクは継続中」
side 同・バイオロイドB
「各動力機関、主力安定。艦内重力制御装置、安全基準値オールグリーン」
side 同・バイオロイドA
「本艦からの出港要請に対し、港湾管制より
『許可する。出港速度を遵守せよ』との返信あり
続けて管制より『港内、減圧を開始する。要員は退避せよ』との連絡あり」
side 航海長・バイオロイドC
「メインゲート開放を確認。「銀河」出港する。
港内巡航モードで航行中……「銀河」出港ッ!」
かくして、試作ガレオン型航宙艦「銀河」を旗艦とする
数隻の試作キャラベル型航宙艦「宙艦級」で構成された艦隊が
地球の小笠原諸島拠点に向けて出港していった……
- 宇宙要塞シルバーン、最重要中枢区画・中央司令室 -
side ヒルデ
試作艦艦隊は、無事に出港したみたいね。
【しかし留守司令。今回建造の試作艦、あれほどの重武装で良かったのでしょうか……?】
と言ってモスは思考操作で空間コンソールを起動して、鼻で器用に操作しながら
私の周りに、出港していった艦船の情報を呼び出した。
【試作ガレオン型航宙艦・銀河級。全長百メートル。
全長が本来のガレオン船離れしているのは
あくまで「なんちゃって」ですから。いいのですが】
……いいんだ……(汗)
【武装が。片舷にカルバリン砲偽装型の粒子速射砲が八門
二連装ホーミングレーザー砲が一基、両舷合わせて
粒子速射砲が十六門・ホーミングレーザー砲が二基。
速射砲は、操作型反射粒子によって前方にも発射可能。
全てシルバーン製FCS制御で百発百中。
他に舟艇攻撃用のバショウカジキ型ロボット三体etc】
【試作キャラベル型航宙艦・宙艦級。全長五十五メートル。
こちらもキャラベル船としては、大きさがおかしいですが。今更ですね】
……(汗)
【武装は、銀河級と同型の速射砲が両舷合計で六門。
舟艇攻撃用イッカククジラ型ロボット一体。
更に。こちらには艦首に次元跳躍ミサイルセルの技術を応用して
敵船に直接「ギリシアの火」を吹き付ける「ブレス砲」が一基。
こちらもシルバーン製FCS搭載で、命中精度は銀河級と同じです】
「……今回の試作艦は、前に発生した遭遇戦を鑑みて。小笠原諸島拠点防衛と
確保している各拠点の防衛用の物だから、あれくらいで丁度いいのよ。
表には出さないしね。
まぁ、銀河級は史実カレー沖海戦時のアルマダ艦隊百三十隻を単艦で殲滅。
宙艦級は四~六隻で同じ事が出来る事をコンセプトに造られたけど
今後、運用データが上がってくるようになれば
もう少し武装を抑えた物も造られるでしょうね。
さてと。私はサワの世話があるから行くわね。後の事は、お願いね」
【承知しました】
敬礼のつもりなのか。鼻を掲げて言うモスに見送られて
ヒルデは司令室を出るのであった。
そんな彼女らを、司令室の一角に作られた専用スペースに居るガラパゴスゾウガメ達※が
静かに見ていた。
※ピンタゾウガメ・フロレアナゾウガメ・サンタ=フェゾウガメ
フェルナンディアゾウガメ。史実世界では絶滅種。
喧嘩をしないように、専用スペースは四等分に区切られている。
【後書き】
以上です。
拙作に登場した動物たち以外にも、シルバーンには多種多様な動植物たちが
DNAデータを含めて保護されております。
本編、第二十五話・お歯黒様と裏の話、参照。
試作艦には。試験的に、一部構造材にダマスカス鋼を使用しています。