閑話・オスマントルコの欧州遠征 1
本作はYVH様からいただいたものになります。
-インド洋、アラビア半島沖・海底-
-ホースヘッド級 工作・戦闘型重巡洋艦「ブルトン」-
-同艦・艦橋-
side:マハル
「監視部隊より報告。アドリアノーブルに集結していた
オスマントルコ軍が進軍を開始したとの事です」
漸く動いたか……
「進軍方向は?」
「掴んでいた情報通りです。真っ直ぐに欧州を目指しています」
此処までは計画通りか……次は……
「欧州方面に進出している、我が方の工作部隊は上手く遣っているか?」
「はい。順調に侵攻ルート上の民衆のみを避難させています。
物資・財貨は、そのまま村や街に残しています」
「よし。現地部隊には、そのまま進める様に指示。
オスマントルコ軍が国境を出て欧州に入る直前で
順次、サファヴィー朝イラン・ポーランド=リトアニア
クリミア=ハン国・ムガール帝国・ロシアに工作を開始」
「了解しました。現地潜伏の部隊に通達します」
これで欧州・中近東は、暫く他所に目が行かなくなるな。
精々、我々の用意した舞台で踊り狂って貰おうか……
特に欧州とロシア。後々の為に、此処で勢力を削り取る!
-神聖ローマ帝国-
side:ある諸侯
東の異教徒共が再び動いた……近隣の領主達にも報せ
ウィーンにも急使を出したが、我らでは何処まで持ち堪えられるか……
「お館様!斥候より急報です!!
異教徒共の侵攻ルートになると思われる地域から
民衆達が消えておるとの事です!詳細は不明!」
なんじゃと……?
「真か!?」
俄かには信じられぬ……
が、しかし……家臣が嘘を報告しているとも思えぬが……
「第一報故、真偽の程は分かりかねますが
斥候が立ち寄った村には人っ子一人、居なかったとの事」
うーむ……如何いう事じゃ?
儂は退避命令など出しておらんし……
これでは追加の兵が集められんではないか……これは困った……
-ポーランド=リトアニア-
-宮廷-
side:ある廷臣
「これは面白い事になって来たぞ……クックク……」
先程から陛下の御機嫌がよい。
彼の異教徒の軍が再び神聖ローマ帝国に侵攻を開始したとの報に接し
急遽、会議が開かれたが。陛下は、ずっと笑みを浮かべていらっしゃる。
「西の諸国は先般、クオーンとかいう者の討伐に大軍を派遣しておる故
異教徒迎撃の兵力が不足するであろうな……
ハプスブルクの者達は、如何にするのかのう……ふふふ
放置しても面白いが、それだと彼の地が失陥し
異教徒共の力が強まってしまう……実に困った事だ……
諸臣よ、我が国は如何に動くべきと思う?
忌憚のない意見を述べよ」
我らと西方の国々とは、仲が好いとは決して言えぬが同じ主を奉じる者。
傍観は出来まいな……
side:ポーランド=リトアニア君主
ククククク……好い、実に好いぞ!
過日の戦いで我らに敗れたツァーリを僭称せしモスクワ大公めは
今度は東に出ていこうとして、彼の山々(ウラル山脈)を越えた地で
新たなタタールと激突し泥沼状態。
西の国々も教皇の要請で無謀な遠征を計画・実行した挙句、異教徒共の再侵攻を招くか。
我が国にも来た遠征参加の打診。
新たなタタールに備えるという口実で断って正解だったわ……
この我が国にとっての好機。存分に活用させて貰おうぞ!
-進軍中のオスマントルコ帝国軍-
side:ある将軍
集結地を発って、どのくらい経ったやら……
大軍ゆえ、進軍速度は遅いが。着実に欧州に近づきつつある。
クーオンの商人達のお陰で、火器を除く武器・食料補給の懸念をせずに済むのは
実に有難い限りじゃて。
昨夜の食事も戦陣とは思えぬ程の物じゃったな……
旨味を十分に吸い込んだピラウ(ピラフ)・肉のスープ。
それにナッツの入ったバクラヴァ(パイ菓子)・冷えたアメユ(飴湯)……
特にアメユは驚きであったな。どうやったかは分からぬが、充分に冷えた飲み物……
惜しい……実に惜しい。彼の者らが、我らと同じ教えの元に居れば
どれ程、帝国に貢献してくれたか分からんな……
ん? 後方が騒がしいが……?
「帝都より急報!!
サファヴィー朝イランの軍が国境を越えて、聖地に向けて侵攻!!
現地部隊と交戦中!! 欧州遠征軍は直ちに帰還して
聖地二か所を守備せよ。との伝令!!!」
なん……じゃと……?