奈那と怪獣
不登校は親がぶつかる大きな問題。
そんなこと、わたしには関係ない。うちの子は大丈夫。
だけど、ある日突然
「お母さん、学校へ行きたくない」
そう我が子に言われたときに、どう対処しますか。
この物語は、そんな対処法とか予防策とかを訴えるものではありませんが
少しでも考えるきっかっけ、悩んでるお母さんに自分だけではないと心を落ち着かせる
きっかけになってほしいと思い、書きました。
「奈那、どうして…」
お母さんは目にいっぱいの悲しみと怒りの涙を溜めて私を見つめる。
私は何も答えることができず、俯くことしか出来なかった。
私の心の中の怪獣が今日も暴れた。
もう一人の私は、怪獣におびえて表に出ることもできずに泣いている。
「学校へ行きなさい」その言葉が、鞭となって怪獣の体を打ち付け暴れさせるからだ。
ハッキリした理由なんてなかった。
何が嫌で何が辛いのかも私には分からなかった。
怪獣は学校へ行くという行為を激しく拒否した。だけど、いざ学校へ入ってしまえば
怪獣は私を表に出して、どこか心の奥へと逃げてしまう。
だけど、怪獣はとうとう私を檻の中へ閉じ込め私になりすまして
お母さんを傷つけたんだ。私は必死に檻から出ようと必死だった。
「お母さん泣かないで、ごめんなさい、ごめんなさい。」
叫んでも叫んでも、怪獣の大きな声に掻き消されてしまう。
私は結局何もできずに何日も何日も檻に閉じ込められたままだった。
お母さんの顔からは次第に笑顔がなくなり、私をぶつようになった。
「痛いよ、やめて…」
私の気持ちとは裏腹に怪獣も、お母さんに暴力を振るうようになった。
それだけでは、物足りないのか飼っていた犬にも罵声を浴びせ壁に物を投げつけ
お家の中は、もうめちゃくちゃになっていた。
お母さんは飼っていた犬を、おじいちゃんの家に連れて行ってしまった。
お父さんは遠くへ出張へ行くと言って帰ってこなくなった。
そんな中でも、お母さんは学校へ行かせようと必死だった。
無理やり車に乗せてみたり、病院にも連れていかれた。
近所の子と一緒に行かせようとしたこともあった。
それでも怪獣は暴れて拒否した。
私は怪獣を見ながら、どうして自分が生まれてきてしまったのだろうと泣いた。
ある日の朝、いつものように怪獣が暴れ学校へ行くのを拒否していると
お母さんは、泣きながら外へ飛び出してしまった。
しばらくすると、幼馴染の壮君のお母さんがお家の中に入ってきた。
壮君のお母さんは何も言わずに、暴れる私の姿をした怪獣を抱きしめた。
しばらく、怪獣は暴れていたけど観念したのか大人しくなり私を檻の外へと出した。
「壮君のお母さん…!助けてよ…私は、どうして生まれてきたの…助けて…」
私の目から大きな涙が沢山流れた。
壮君のお母さんは「大丈夫よ。大丈夫。」と涙を拭いてくれた。
「お腹空いていない?あら、下着だけど寒くないの?」と微笑みながら聞かれ
私は初めて自分の今の姿に気づいた。
暴れて暑くなったのか下着姿で腕や足にはアザがあり髪の毛もぼさぼさだった。
壮君のお母さんは、私を着替えさせて髪の毛を結ってくれた。
家の中の散らかった物を一緒に片づけて、お母さんが作ってくれた
おにぎりを食べた。その間も壮君のお母さんは何も言わず目が合うと微笑んでくれるだけだった。
「あのね…私の中の怪獣が学校に行きたくないんだって…」
自然と口から言葉が出ていた。
「行きたくなくて暴れてるとね、お母さんは私をたたくんだ。そしたら怪獣はもっと怒って怖くなるの。」
私は自分が檻の中で見ていたことを全部話した。
どうしてこなったのか分からないことも、どうすればいいのか分からないことも。
壮君のお母さんは、頷きながら話を聞いてくれて全てを聞き終わると
また抱きしめてくれた。
怪獣はいつの間にか私を閉じ込めていた檻の中に自分から入っていた。
「奈那……」
お母さんが、ゆっくりと家の中に入ってきた。
壮君のお母さんは私の手とお母さんの手をそっと握って二人の手のひらを暖かく包み込んだ。
何を言われたわけでもないのに、自然と涙があふれて止まらなくなった。
「お母さん…」
私は必死で声を出した。
「お母さん…ごめんなさい…。ごめんなさい。」
やっと、やっと、お母さんに対して自分の言葉が出た瞬間だった。
壮君のお母さんは、私のランドセルを手に取ると
「ランドセルを選ぶときって凄くワクワクした。制服を初めて着たときは
お父さんも、お母さんも嬉しそうに笑ってた。初めてクラスに入ったときは、お友達が沢山いて
仲良くなれるかな?って思った。初めての授業は分からないこともあって不安だった。
テストなんて間違えたら、どうして分からないの?って聞かれたし。お友達とも仲良くなったけど
喧嘩だってするようになって最悪だって思ったこともあった。
おばちゃんも、奈那ちゃんのお母さんも皆みんな、そんなことおがあったんだよ。」と教えてくれた。
「怪獣さんも何か不安なことがあって、その不安なことから奈那ちゃんを守りたかったのかもね。」
壮君のお母さんが、そう言ったときに怪獣が檻の中で泣いているのに気付いた。
「怪獣さん、もう大丈夫だよ。奈那ちゃんを守ってくれてありがとう。」
お母さんは、そう言うと私を抱きしめた。
…………ねぇ、怪獣さん。
私は大丈夫だよ。お母さんもお父さんも皆が傍にいるよ。
だけど、それは私にだけじゃなくて怪獣さんの傍にもいるって意味だよ。
涙を流しながらも少し嬉しそうに頷きながら怪獣さんは檻の扉を閉めた。
「お母さん、壮君のお母さん、遅刻だけど今から学校に行きたい。」
私は、制服に着替えると二人と一緒に学校へ行った。
駄文を読んでいただきありがとうございます。
私自身、小説を書くのが初めてで言葉はこれで合っているのだろうか?
などと考えながら書いてみました。
奈那は、結局どんな不安があったのでしょうね。
怪獣は、きっと檻の中にまだ住んでいて奈那を見守っていることでしょう。
今後、お母さんサイドから見たお話や
その後の奈那のお話を書きたいと思っています。
ここまで読んでくださり、本当にありがとううございました。
※この物語は、ノンフィクションです