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脱ハーレム勇者パーティ ~サラの王都滞在編  作者: kay
第三章 訓練場の乱
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3-1

 先日の軍議で冒険者としてロビンと共に遊撃部隊に組み込まれることになり、討伐に参加する冒険者たちと騎士たちの交流も兼ねて騎士団の訓練場で稽古をすることが提案された。

 騎士団に籍を置いていた私たちは兎も角として、自由に動きたがる冒険者たちは集められたことに不満を言い、始終面倒臭そうにしている。その様子を見た規律の厳しい騎士たちはそんな冒険者たちを見下しており、とにかく訓練場にはギスギスした空気が漂っていた。

 冒険者だけとか騎士だけとかならまとめることは可能ではあるが、混成部隊を作れとか無茶振りにも程があると思った。

 冒険者たちの取りまとめ役であるアサギ君は、騎士たちの横暴っぷりを見た瞬間にやる気をなくして、早々に私たちに役割を放り投げてきた。あの人たち本当に自由すぎる。


 そんな最悪な空気を打破したのが、前線部隊である第五騎士団の破天荒な面々だった。元々ロビンが所属していた部隊であり、魔物の討伐を主に受け持っている者たちのため冒険者寄りの考え方を持っている者が多かったのだ。


 誰が発端なのか分からないが、お互いの実力を知ろうと言いだし冒険者に対して軽い挑発をしたりした結果、なんと冒険者と騎士の8割が参加する混合勝ち抜き戦を始ることになってしまった。

 一部のノリの良い騎士と冒険者が組み合わせをどうするかと考え出した時に、騒ぎを聞きつけた騎士団の指揮官たちがやってきた。



「貴様ら、そんなことをやっている場合か!」


「ん~、別に良いんじゃないの? 交流しろって言われているのだから、僕はやってみればいいと思うけど」


「どうせ、頭でっかちな騎士様たちは、俺らに負けるのが怖いんだろ?」


「何を言うか! 貴様ら無礼であるぞ!!」


「なら良いじゃない。実力があるところを見せればいいんだからさ?」



 ロビンの義兄を筆頭にした騎士団の指揮官たちは苦言を呈していたが、まとめる気もないくせに、暇そうにしている傍観していたアサギ君がやってみればいいじゃないと言い出した。騎士団の上官たちは冒険者に煽られて、うかつなことに言質を取られてしまい、最終的にはアサギ君の一言で彼らは後に引けなくなってしまった。

 煽るだけ煽っておいて自分は参加しないアサギ君は、おそらく適度な暇つぶしが欲しかっただけだろうなと思った。



 お互いの鬱憤を晴らすように全力で行われた勝ち抜き戦は、最終的には冒険者の勝利で終わった。



「お前、なかなかやるな!」


「ああ、貴殿も素晴らしい剣捌きだった!」


「お前、あの剣の打ち方はねえよ。魔物相手なら速攻でやられてら」


「俺もそう思った。もっと精進しないと駄目だな!」



 全体を見てみれば、いい試合内容だったと思う。

 訓練された型どおりの剣術を使う騎士たちは、我流ではあるが無駄をそぎ落とした柔軟な冒険者の動きに翻弄されており、彼らも冒険者の実力を認めたようだった。

 両者共に戦闘に身を置く者たちだ、剣を交えれば後は打ち解けるだけだった。

 そこかしこで脳筋的な話が飛び交っているが、結果的に打ち解けたのなら良いかと思った。



 お互いの実力が知れたところで訓練に入ったのだが、そこに遅れて勇者とそのハーレムメンバーがやってきた。

 彼らが今更やってきたのかという視線を送っていると、何を勘違いしたのか訓練場でいちゃつきだしたのでこの場に居る全員が殺気立った。

 何というか、独身者が多い騎士と冒険者たちが共通の敵を見つけたことで強固な絆が出来た瞬間だった。



**********************************


 訓練の最中にロビンのかつての部下だったアスラン君が声をかけてきてくれた。

 前は独身だったが、何と結婚をしたらしい。平民出であるが可愛い奥さんを貰ったと報告をしてくれた。



「第五の方はどうだ?」


「えっと、ロビンさんが抜けてから団長がやりたい放題している状態です。作戦を練るのが得意な方ですが、現場を知っていたロビンさんが調整を入れてくれていたのが無くなったので、無茶振りが多いと言うか……」


「……すまんな」


「いえ、現場は出来ることをするだけですからね。一応手順だけ踏んでいればあの方は文句を言いません」



 ロビンの腹違いの兄であるヴェンデル・トル・クライフは第五騎士団の団長を務めており、同じ騎士団で大隊長の任に付いていたロビンは腹違いであるがヴェンデルの顔を立てていたのだが、実力で弟に負けていた彼が一方的にロビンを嫌っていたのだ。初めて会った時に、器の小さい男だと思ったのを良く覚えている。

 尚且つ、私とロビンが付き合い始めた時にめちゃくちゃ邪魔をしてきたのがヴェンデルだった。ロビンよりも自分の方が良いだろうと売り込んで来たりしてウザいことこの上なかった。

 おそらく、私と結婚した場合ロア公爵が持っている爵位の一つを引き継ぐことになるのは確実だったため、ロビンの爵位や姻戚関係が華やかになるのを嫌い焦っていたのだろう。

 そんな事情もあり、ロビンの身内ではあるものの、私にとって心象は最悪であった。



「あの時はまさかロビンさんが近衛に行くとは皆思ってもいなかったんですよ。ほら、近衛って騎士団の中でも花形じゃないですか、出世街道に乗ったのに団長がものすごく上機嫌だったので、何かの間違いじゃないかと思っていたくらいなんですから」


「それ本当?」


「はい。鼻歌を歌いそうなくらい上機嫌でした。弟であるロビンさんを妬ましげにしているのを第五に居る奴らは全員知っていましたから。まぁ、結果としてはお二人とも騎士団を去ることになってしまいましたから、ああ団長が上機嫌だったのはこういう事だったのかと思いましたよ」



 アスラン君に当時の話を聞くと、案の定ロビンの異動にはヴェンデルが関わっていたようだった。第五騎士団は平民出身者が多く、指揮官も今までは平民よりの考え方を持った者が多く、モンターニュ将軍も第五騎士団を率いていた時代があったほどだった。

 アスラン君の話では、ヴェンデルは権力というものにあこがれがあるのだろう、今ではヴェンデルは近衛騎士団長であるシントラー公爵とずぶずぶの関係になっており、かつての第五騎士団も近衛には入れなかった貴族出身者などが多くなっており、平民出身者と衝突することも多くなってきているとのことだった。



「第一から第三までは今まで通りモンターニュ将軍が取り仕切っているので、安心なのですが第四がうちと同じくシントラー公爵の派閥に付きそうだという噂です。あそこの団長は形ばかりの騎士団長ですから、中央への出世欲を駆られたんじゃないんですかね?」


「ここでの訓練も派閥関連での揉め事が増えそうか?」


「基本的に第三から第五が集められていますからね。うちに関しては、ここにいる面子は平民出身者だから安心してください。ロビンさんの指揮ならうちの野郎どもは従いますよ!」


「助かる。お前にも十分に働いてもらうつもりだ、気張れよ?」


「もちろんですよ!」



 アスラン君との話はかなり有益だった。冒険者として私たちが参加すると決まった時点で、現在の騎士団の情報をまとめてくれたらしい。

 しかし、未だに騎士団が二つの勢力に分裂しているとは思わなかった。

 第一王子の派閥であるシントラー公爵が何をしてくるかは分からないが、そのあたりはモンターニュ将軍と兄様が知っているだろう。

 以前と違い権力に守られている立場ではないため、私たちは情報を得つつ兄様が不利にならないよう、出来ることをすべきだとロビンと頷きあったのだった。


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