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武器と力

ギルド設立の翌日、俺とリナは都市の中心部にあるファイさんの鍛冶屋へと向かっていた。


「ファイさんまた凄い武器作ってくれてるかな?」


新しい武器を楽しみにしていたリナが声を弾ませながら楽しそうに横を歩く。


「あの人の作る武器に凄くなかった武器なんてないからなぁ」


過去にもファイさんには武器を作って貰っているのだが、この国一番の鍛冶師と言わしめるその腕前は素晴らしく、そして俺達の体の事を知っている数少ない人物だ。


「あと、武器受け取ったら酒場に行って仕事しないとね」


「分かってる、新しい武器も使って見たいしな」


俺とリナの家はファイさんの鍛冶工房と同じ都市の中心部にあるので、話しているとすぐに着いた。


「ファイさん、武器を取りに来たよ」


扉を開け、壁にかかった武器を眺めるこの店の店主に話しかける。


「おう、来たか」


白髪の短髪に無精髭を生やし、いかにも職人という雰囲気を漂わせたこの人が俺達の武器の世話をしてくれているファイ・ニックだ。


「新しい武器が出来たって聞いたから」


「今回のは自信作だぜ」


不敵な笑みを浮かべファイさんが二本の剣を取り出した。


「お前らの力を抑える為に大量の封石と、強度を保つのに秘蔵の素材を使ってやった最高傑作だ」


二本の剣の一つは刀身部分を漆黒に染め上げ、見る者を引き寄せ、もう一つは逆に純白に輝く刀身をしていた。


「凄いな、ちなみに秘蔵の素材って?」


「ふふん、竜の牙だ」


得意気に腕を組むファイさんだが、自慢したくなる気持ちは痛い程分かる。

今の世界に竜はほとんど存在しない。かつて世界を蹂躙しつくした竜族は、一人の賢者の力によってその数を激減させ、人々が住む土地から姿を消して以来、竜を見たという情報はほとんどなかった。


「一般人が簡単に手に入れられるものじゃないよな」


「そりゃそうだ、これをくれたのはライラ姫だからな」


「・・・は?」


思わぬ人物の名前に俺とリナの二人は驚愕する。


「姫は知っちまったらしいぞ、アイルとの関係も今まで何をされてきたのかも」


「なんで・・・」


呟いたのはリナだった。


「なんでライラがそれを知ってるんですか!?」


取り乱し、ファイさんに掴みかかろうとするリナを何とか抑える。


「誰から聞いたとは言わなかったが、あの事を今知ってる奴と言えば限られてくるな」


「リナ、落ち着け、ライラはなんにも悪くない」


「私が言いたいのはそうじゃなくて、あの時国王はライラにだけは私達の秘密を教えないって約束したじゃない、それなのに」


「ライラは頭のいい子だから、遅からず俺達の事には気づくだろうし、それが思ったより早かったってだけの話だ」


リナが落ち着きを取り戻したのを確認して、ファイさんが口を開く。


「アイル、お前やっぱり国王を、父親を恨んでんのか?」


「俺はあいつを父親なんて思っちゃいない、でも、いずれ報いは受けさせる」


ファイさんの質問に即答する俺を二人は悲しい顔で見つめる。


「あいつは俺だけじゃなく、リナまで実験の道具にした外道だ、正直バッカスさんが俺達を解放してくれなかったら確実にあいつを殺してたよ」


俺が何をされようが構わなかった、ただ俺の実験が上手くいかず、暴走を抑える力を持っていたせいでリナの人生を狂わせた。


「やっぱり、もう治んねぇのか」


先程の笑顔が嘘のように無くなったファイさんは力のない声で問いかける。


「自分の体は自分が一番分かってるつもりだよ、だからファイさんにわざわざ剣を作って貰ってる訳だし」


ファイさんが打ってくれた剣は只の剣じゃない、武器として使う以外にも役割を持っている。


「正直、もしお前が力に完全に飲まれちまった時は、俺の武器でもどうしようもなんねぇ」


申し訳なさそうにするファイさんの隣で、今まで俯いていたリナが顔を上げる。


「その時は私がアイルを止めるから大丈夫です!」


まるで自分に言い聞かせるようにリナは声を張り上げる。


「まぁ、そうならないように願っとくぜ」


やっと笑顔を取り戻したファイさんが差し出して来た武器を受け取る。俺には純白の剣を、リナには漆黒の剣を。


「その剣に組み込まれてる封石は互いに共鳴しあう、万が一アイルが暴走した時は、リナがその剣で封石を発動すれば、アイルの持つ剣が暴走を止めてくれるはずだ」


「ありがとう」


剣を受け取り、ファイさんに礼をして工房を後にした俺とリナはとりあえず、ギルド酒場に向かう事にした。


「でも、ライラが知ってしまったって事は、もしかしたらアイルに会いに来たりするかもね」


「俺は王族でもないし、ライラもそこはちゃんと弁えてるはずだ」


「だといいんだけど」


俺は今の国王の息子として生まれたが、王族を名乗った事は一度もない。既に第一王子が生まれ、ライラと双子でこの世に生まれ落ちた時から、王族の血を使って戦争に勝つ為の道具として使われる事が決まっていたのだから。

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