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ギルド設立

ギルド酒場は夕暮れ時という事もあって依頼を終えた人や酒場で夕飯を食べる人などで賑わっていた。

とりあえずは報告の為にヘレナの元へと向かう。


「戻りました、あとこれを」


受付に座っていたヘレナは一度安堵した様な顔を見せ、次に俺の手に握られていたオークの魔石を見て唖然とする。


「ほんとに倒してきたんですね・・・」


「これでギルド作るのは大丈夫ですか?」


「問題ありません、むしろ先程は余計な事を言って申し訳ありませんでした」


立ち上がり頭を下げてきたヘレナにリナが声をかける。


「謝るなんてやめてください、むしろ私達を心配して下さった事はとても嬉しかったです」


これは建前などではなく、リナの本音だ。そしてそれは俺も同じ気持ちだった。道具同然に使われていたあの頃、俺達の身を心配してくれる大人なんていなかった。


「これからも色々とお世話になると思うんで、よろしくお願いします」


俺が頭を下げると隣でリナも頭を下げる、それに驚いたヘレナの慌てる様子は少し可笑しかった。


「そんな、二人共顔を上げてください!こちらこそよろしくお願いします」


お互いに頭を下げた後、ギルドについての説明を受ける事になり、ヘレナが説明を始める。


「まず、このギルド名簿に名前を書いて頂いて、その横に指に魔力を込めて判を押してください」


「魔力を込めるんですか?」


「そうです、いきなりこんな話をするのも酷ですが、時には危険な依頼で命を落とす方もいらっしゃいます、この魔力判はその人の生命力とリンクしていますので、もし何かあった際にこれで生存を確認する事ができるんです、そして別の道具を使ってその人の大方の位置を確認する事もできます」


なるほど、それはかなり便利な機能だ、大きなギルドなどでは人数も数百人になったりすると聞くし、メンバーを管理するのにも凄く役立つだろう。


「わかりました、ここに押せばいいですか?」


「はい、大丈夫です」


俺が名前を書き判を押し、リナがそれに続いて名簿に名前を書いた。


「ありがとうございます、次に何ですがギルド名はもう決めていらっしゃいますか?」


これはリナと話して決めていたので問題ない。というかリナが既に決めていた。


「ギルド名はミーティアでお願いします」


「流星ですか、素敵ですね」


そう言いながらヘレナはギルド名を記入した。

この名前を俺はあまり気にいらなかったのだが。


「じゃあ、最後にギルドのランクについての説明ですね」


そう言うとヘレナはもう一つの紙を取り出した。


「ここに、書かれている通りギルドのランクはDからAがあり、更にその上にあるのがSランクとなります、しかしSランクギルドはこの王国に一つしかないトップのギルドに与えられるランクになっています」


「一つしかないんですか?」


「そうです、これは毎年Aランクで最高の成績、簡単にいえばどれだけ難しい任務をより多くこなせたかで評価します、その、一番のギルドと今のSランクのギルドがギルド戦をして勝った方がまた一年間Sランクを名乗れると言う訳です」


早口で説明したヘレナが一息つき、また説明を始めてくれた。


「そしてあなた達のギルドランクなのですが、もちろん最初はDランクからとなります、ただオークを二人で討伐してしまう程の実力をお持ちですから、ランクはすぐに上がると思いますよ、ランクが上がれば私達の方から出す依頼も当然増えていきます」


それと、と付け加えてリナは小さい袋を取り出した。


「こちらが今回のオーク討伐の報酬となります」


「え、今回のも貰えるんですか?」


「当然です、正式な依頼として出した案件ですので」



今回の依頼は、ギルド設立の為に行ったものなのでこの報酬は正直嬉しい。


「じゃあ、ありがたくいただきます」


「ねぇアイル、せっかくだしここでご飯食べていかない?」


「そうだな、せっかくだし食べてみるか」


「あ!リナさん!ここでご飯食べていくなら一つだけ言わせて下さい」


「なんでしょう?」


強ばったヘレナの表情にリナが少し身構える。


「ここの男性達には気をつけてください、あのハイエナ達がリナさんみたいな可愛い子をほっとく訳がないですから」


きょとんとした顔のリナはヘレナの言った言葉の意味を理解するとふふっと笑い、俺の腕を掴んだ。


「それなら心配ありません、そんな人がいたらアイルが黙っていませんから」


まぁ、事実なのだが当然の様にそれを言われると何か、凄く恥ずかしい。


「あら、素敵なナイトさんですね」


まるで幼い子供を見るような暖かいヘレナの視線が痛い。


「では、また明日にでも伺いますね」


「はい、お待ちしてます」


結局俺は何も話すこと無く二人で会話を終えて、ヘレナに挨拶を済ませ二人が座れる場所を探す事になった。


「うーん、多くて座れる所探すのも大変だね」


先程よりも人が一段と増え、酒場は大勢の客でごった返していた。


「あ、ここ空いてるみたい」


リナが空いてる席を見つけ、そこに腰掛ける。こんな大勢の客がいるにも関わらずウェイトレスは俺達の所にオーダーを取りに来たのには驚いた。


「とりあえず、エールを2つ」


かしこまりました!と元気な返事で去っていったウェイトレスはすぐにジョッキいっぱいに入ったエールを持ってきた。


「アイル、今日はお疲れ様」

「お疲れ様」


二人でジョッキを合わせ乾杯をする、料理は肉か魚を選んだらその日のお任せででてくるらしく、俺は肉を頼みリナは魚を頼んだ。



「それで明日から早速依頼を受けるの?」


「うん、でもその前にファイさんの所に行って新しい武器を貰いに行かないと」


「そっか、今の武器じゃそろそろ抑えれなくなるよね」


「今より強力なのを作ってくれるって言ってたから期待しとこう」


そんな話をしていたら料理がテーブルへと運ばれてきた。

ウェイトレスが持ってきた料理は鶏肉と野菜を炒めたシンプルな物と白身魚の香草焼きで、味は想像より遥かに上手い一品で二人で満足していると、リナの隣に男が腰を下ろしてきた。


「姉ちゃん、見ねぇ顔だがここは初めてか?」


大柄な男はいかにもな笑みをを浮かべリナに話かけるがリナはそれを完全に無視する。


「おい、聞いてんのか?」


「黙れよおっさん」


耳障りな声に思わず声がでる、あえて俺を無視していた男は眉間に皺よせて俺を威圧してくる。


「言葉遣いには気をつけな、俺を誰かも知らねぇようなガキが口挟むんじゃねぇよ」


「お前こそリナに気安く話しかけんな、それと、俺とこいつは同い年だ。俺をガキ扱いするならガキを口説こうとするお前はとんだロリコン野郎だな」


「女の前だからって調子に乗るなよ!」


勢いよく立ち上がった男は顔を真っ赤にして俺の胸倉を掴む。

流石にこの騒動に気づいた周囲の連中がこっちの方に注目しだした。だが男は余程頭に血がのぼっているらしく、今も何か喚きちらしている。どうしたものかと考えていると、人垣をかき分け一人の老人が出てきた、やばい、挨拶するのを忘れていた。


「ここがどこか分かっておらんのかの」


その一言、ただ問いかけた一言で周囲は静まる、胸倉を掴んでいた男はその人物に恐怖し、俺から手を離した。


「喧嘩をするなら他所でる事じゃな」


「すいませんでしたぁ!」


男はすぐさま退散し、残された俺とリナの元へと老人、バッカスさんが近づいてきた。俺の前で止まると腕をあげる。ゲンコツが飛んでくると覚悟したが、予想を裏切ってバッカスさんは俺の頭を撫でてきた。


「よく暴れなかった、偉いぞアイル」


「え?」


「リナもよく耐えた」


「ありがとうございます、お久しぶりですバッカスさん」


リナは椅子から立ち上がり、礼儀正しくバッカスさんに挨拶をする。俺もリナの横に並び同じように挨拶をした。


「お久しぶりです」


バッカスさんは先程の事は本当に怒って無いらしく、俺とリナを交互に見て満面の笑みを浮かべた。


「さっき、ヘレナから聞いだが無事ギルドは立ち上げた様じゃの、積もる話もしたいがなにぶんワシも忙しい身での、また詳しい事は今度聞かせておくれ」


「はい、私達も話したい事がたくさんあるので」


「わかった、ではまたの」


バッカスさんが去っていき、安堵のため息と共に椅子に座る。


「怒られると思ったんでしょ」


「そりゃそうだろ、絶対頭こづかれるかと思った」


バッカスさんにだけは逆らえないというか、返しきれない程の恩があるので、どうしても頭が上がらない。


「あのぐらいじゃ怒ったりしないよ、それより周囲の視線も気になるし、早く食べて帰りましょ」


「そうだな」


先程の一件で少なからず周囲からチラチラと見られるのは確かに居心地が悪い。俺達は残った夕食を急いで平らげ、酒場を後にした。

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