#7 次の授業に遅れちゃう!
1限目が終わるチャイムが鳴る時まで、紫苑は保健室のベッドの中で過ごしていた。
「ヤバッ、次は美術じゃん! 急がなきゃ!」
彼女は起き上がり、慌ただしくベッドを簡単に直し、カーテンを開ける。
次の瞬間、ジャスパーが「おや、おはようございます」とパソコンから紫苑に視線を向けた。
「次の紫苑さんのクラスは美術なのですね? 彫刻刀とかは使っていらっしゃるのですか?」
「はい。今はレタリングなので、彫刻刀は使ってないです。なぜ、先生は心配してくれるんですか?」
「意外と実技系の授業って怪我が多いのです」
「確かに、体育も擦り傷や捻挫とかありますもんね……体育祭の時は先生が1年で1番大変ですね」
彼女が納得したように話すと、彼は「そうですね……紫苑さんは授業に行かなくて大丈夫ですか?」と問いかけてきた。
紫苑は保健室にかけられている時計を見て、「あっ、ヤバい……」と呟く。
「先ほどはありがとうございました。先生とたくさん話せて嬉しかったです。それと……」
彼女が一旦言葉を切ると、ジャスパーが「どうされました?」と訊いてきた。
「おそらく私のクラスメイトが騒がしくしてしまったと思います。ご迷惑をおかけしました」
「最初は驚きましたがね……また何かありましたら、いつでもお越しくださいね」
「はい。失礼しました!」
紫苑が慌ただしく保健室から教室へ向かった。
◇◆◇
彼女が教室に着くと、そこには崇史とゆかりがいた。
「あっ、紫苑」
「大丈夫なの!?」
「うん。噂の保健室の先生とたくさんしゃべったよ」
紫苑が彼女らに話すと、ゆかりは「羨ましい!」と言い、こう続けた。
「ジャスパー先生といっぱいしゃべったの? 私も紫苑みたいに気絶して保健室に担ぎ込まれたい!」
「はいはい、紫苑と大野さん。授業に遅れちゃうから、急いでいこう?」
「そうだね。ところで転校生のラファさん達は?」
「あの子達なら、さっき、木野さんとかと一緒に美術室に行ったけど……」
崇史は彼女らに移動しようと促そうとするが、聞く耳を持ってくれない。
「そうなんだ。ゆかり、あとでノートを取らせて!」
「いいよ。授業はあんまり進まなかったから書いた量は少ないけど」
「そんなに進まなかったの?」
「そうだよ。どこかの誰かさんと誰かさんがショックから立ち直るまでに時間がかかったからねー」
「って、おいっ!? 大野さん!」
「桐山くん!」
「崇史!」
「「早くしないと遅刻するよ!」」
彼女らに言われ、崇史もあとに続けて、美術室へ向かった。
2016/12/31 本投稿