#6 紫苑が保健室にいる間……
「私、ジャスパー先生と話せて幸せ!」
「大野先輩、私も朝話したので、幸せですよ!」
「まぁまぁ、2人とも、幸せオーラが出てますねー。僕も木野さんと同様に彼と話したので」
「そういえば、そうでしたよね!吉川先輩も捕まってましたしね!」
ゆかり、友梨奈、修の3人がわいわい話しながら教室に戻ってくる。
「先生、すみませんでしたー」
「如月先生、ただいま戻ってきましたー」
「先生、勝手に授業を抜け出してしまい、すみませんでしたー」
「いや、謝らなくていいけどさ……ところで、3人は桐山くんや栗原くんがこんな感じだけど、なんでか分かる?」
彼女らは空いている椅子に腰かけている如月に謝った。
しかし、今の彼にとってはそれに気にしていなかったらしく、机の上を涙で濡らしている崇史達を指さす。
「……うーん……」
「分からないですね……」
「何かあったのでしょうか……?」
3人は事情は分かっているが、如月には知らないと伝えるしかなかった。
なぜならば、彼らは紫苑を保健室まで運んだ時にジャスパーと会話したのはほとんどゆかりだったため、ショックを受けている。
「みんなが落ち着くまで、授業を始めないからねー」
如月は呆れながら生徒達に告げたやさきこう思った。
本当に彼は生徒に愛されているイケメン養護教諭だなぁ……と――。
「大野さんなら分かるはずなのに!」
「なんでそこで私が出てくるの!」
「ジャスパー先生とたくさん話しただろう!?」
「まぁ、そうだけど……」
栗原くんと崇史は涙でぐしゃぐしゃになりながら、ゆかりに問いかける。
彼らはティッシュではなく、ノートの最後の方を破って鼻をかんでいる。
それを見た友梨奈と修は2人にポケットティッシュを手渡した。
「2人が落ち着いたら授業を再開するからね!」
「はーい!」
「分かりました!」
◇◆◇
約10分くらい経ったあと、如月が落ち着いたと判断し、授業が再開された。
「じゃあ、教科書の250ページを開いてー……」
その教材は「努力は報われないと悩んでいる少年がある人物と出会い、直向きに頑張れるようになった」という内容だ。
彼は黒板に「なぜ少年は頑張れるようになったのか?」と書く。
「自分の考えをノートに書いてみよう。今日はいろいろあって始まる時間が遅かったし、次の授業の時に発表してもらうからね!」
「もう終わりなんだー」
「早いなぁ……」
如月は生徒達に問題を出すと、彼らはぼやきながらひたすら教科書を読み取り、考えをまとめていた。
彼が腕時計を見て、「もうそろそろ授業が終わるね」と言った時、チャイムが校内に響き渡った。
2016/12/31 本投稿