#1 遅刻寸前だった生徒達
ここはとある学校。
その校門に向かって2人の生徒が走っている。
1人は男子生徒で、もう1人は女子生徒だ。
「間に合わない!」
「遅刻するー!」
彼らは慌ただしく校門を潜り、昇降口に向かう。
そこで通学靴から上履きに履き替え、ほぼ同じくらいの速度でバタバタと音を立てながら廊下を走る。
そんな2人の様子を見ていた白衣に身をまとった銀髪隻眼の男性に捕まってしまった。
彼らはなんでその日に限って遅刻しかけてしまったのだろうとがっくりと肩を落とす。
「おやおや、友梨奈さんと修くん。2人とも、遅刻しかけて急いでいらっしゃるのは分かりますが、廊下は
くれぐれも走らないでくださいね?」
「……ジャスパー先生……」
「……分かりました……」
「あとで、担任の佐藤先生に伝えさせていただきますからね?」
「「はい」」
友梨奈と修と呼ばれた生徒達は返事をし、競歩選手並みの速さで教室に向かった。
「って……人の言うことを聞きなさい!」
ジャスパーがこう言っている間には修達の姿はどこにも見当たらない。
「なんて、逃げ足が速いこと……」
彼はこう言いながら保健室に向かった。
◇◆◇
「間に、合ったー」
「間に、合い、ました、ねー」
彼らが息を切らしながら、教室に着いた時にはすでに生徒が揃っており、楽しそうに談笑をしている。
「「お、おはようございます」」
「「おはよう!」」
「ところで、吉川くんと木野さん、あと少しで遅刻だったんだよ? ねぇ、ゆかり」
「そうそう。紫苑が気づかなかったら私達――」
「あ、あのー……夏川さん、大野さんコレには事情がありまして……」
「そうなんです。朝からジャスパー先生に捕まってしまいまして……」
紫苑とゆかりと呼ばれた女子生徒が修と友梨奈に説教じみたことをし始めたが、彼がゆかりの言葉を遮った。
友梨奈もそれに続ける。
「そりゃ、そうだよ。2人の足音がうるさいから、ジャスパー先生に捕まったんじゃないんかな?」
栗原くんと呼ばれた男子生徒が紫苑に「栗原くん、それは重要なこと?」と問いかけた。
「い、いや。夏川さんがそうでもないと思ったら忘れてくれていいよ?」
彼は彼女に首を横に振りながら答える。
そのことを聞いた紫苑は「ならば、すっぱりと忘れる」と答え、自席に戻った。
「紫苑は意外とあっさりした答えだな」
「ちょっと、崇史! 馬鹿にしてるの!?」
「馬鹿になんかしてないよ? 切実に……」
「「あははは……」」
チャイムがなるまでの間、今日の授業の準備をしたり、年齢も異なるクラスメイトと楽しく話したりして過ごすのであった。
2016/12/31 本投稿