#10 数学の時間
自分の出張だということをすっかり忘れていたベルモンド。
生徒達の不信感はまだ募るばかりだ。
「まぁ、そんなことは気にしないで授業を始めるよ。学級委員の人号令をお願いね」
「起立、礼、お願いします」
「「お願いします」」
紫苑の号令で彼女らは動いているが、今回の号令はまるで、台詞の棒読みのような気がする。
「みんな、どうしたの? なんか変なものを見ているような目で見ているんだけど……」
ベルモンドはいつも通りではあるものの、生徒達の鋭い視線が彼を射抜いている。
「それは当然ですよ? ベル先生は僕達に不信感を与えたんですから」
「吉川くんもシビアな考えだね」
「僕は本編の方は生徒会役員ですので、そのような考えになるのは仕方ないことです(みなさん、すみません。さりげなく宣伝してしまいました……)」
修が彼にこう言うと、フィオナとラファが「先生、雑談はもういいですので、授業を始めましょう?」「そうですよ」と、どうでもよさそうにその話を流された。
「ま、まさか、転校生にまで……」
「どうでもよく言われましたからね。授業を始めてください」
「わ、分かりました。では転校生を除いた生徒達は小テストを行うから机の上を片づけて」
転校生達を除いた生徒達は机の上を筆記用具のみにし、小テストに臨んでいる。
彼らはその様子をじっと見ていた。
◇◆◇
約10分後……。
「止め! 後ろから回収して」
「「はーい」」
1番後ろの席の生徒が小テストを回収する。
この日の内容は「二次関数の平方完成」についての授業だ。
まずは解き方の復習を行い、ベルモンドから何問か問題を出し、平方完成を求める。
教科書にも何問か書いてあるが、おそらく練習問題として出題しているだろうと思われる。
「この問題を解ける人。手を上げないと指名するからー」
彼がこう言うと、誰も手を上げる生徒はいなかったため、彼は紫苑、ゆかり、栗原くん、崇史の高校3年生達を指名した。
彼女らは左手にはノート、右手にはチョークを持ち、その答えを黒板に書き込む。
その結果は全員正解だった。
ベルモンドが最後のまとめをしている時にチャイムが鳴ってしまい、キリのよくない締め方となってしまった。
2016/12/31 本投稿




