第二夜、草原にて
なぜ続いた、、、今回はMonkeymagicのBreatheとかアニソンとか聞きながら書きました。
アヤメの花言葉は「message」「hope(希望)」「faith(信頼)」「friendship(友情)」「wisdom(知恵)」
こんな夢を見た。
草原で私は馬に乗って決して近くはないどこかに向かっている。頬に当たる風は冷たく、手綱を握る手はもうあまり感覚がない。馬に乗ってからどれほどの時間が経ったのだろうか。私は自分のことも、どこから馬に乗ったのかも、どこへ向かっているのかも分からない。馬に乗るのは存外体力を使う。遠方へ向かうのであれば適度な休憩を取りながら行くのが通常だが、馬は私を休むことは許さないようにひたすらに走り続けている。空腹ものどの渇きも尿意も感じないので無理をすればもう何時間はこのまま走ることは可能だとは思う。しかし、私はあとどの位こんな風に走らなければいけないのだろう。何か気の紛れるようなことをして時間が早く過ぎることはないだろうか。楽しいことを思い出そうとしてもやはり何も思い出せない。股から感じる馬の筋肉質な固い体の振動だけがリアルだ。それ以外のものはこの草原以外には何もない。何時間も走っても景色もほとんど変わることがない。もしかすると核戦争でも起きてしまってこの世界は私とこの馬しかいないのかもしれない。私は生き残りの人間を探すために走っていたのかもしれない。
日が沈んで湖があるところで馬は足を止めた。私の体力はもうほとんど限界だったからか、水場を見つけたからかは分からない。湖に三日月が映っている。水を飲むときに私は自分の顔を見た。20代後半ごろの時分で造形は良くも悪くもなく、無精ひげ以外の特徴はこれといってなかった。二時間前に見た自分の顔をもう思い出すことができない。コートのジッパーを閉じて私は馬に近づいた。
「アヤメ、私は一体どこに行けばいいんだ?」
木の近くに大人しく座っている馬の鐙には「アヤメ」と書かれていたことに先ほど気付いた。それからは私は馬を「アヤメ」と呼んでいる。ただ、そう呼んでも「アヤメ」は私にどこに行けばいいのかということは教えてくれなかった。「アヤメ」は「以前どおり自分の行きたいところに行きなさい。」と言っている気がした。
座り込んでしばらくすると少し意識が飛んでいた。覚醒してから数秒ほどで私は短刀を持った男たちに囲まれているのに気付いた。私は眠っていたのだろうか、男たちはどこから湧いたのだろうかとぼんやり考えた。ほとんど気配を感じなかった。まるで草原から生えてきたかのようだ。男の中で40代半ばごろの厳つい男が口を開く。
「お前、ここで何をしている。どこからやってきた。」
私こそどこから来たのかを知りたかったが、それを正直に言っても男たちは納得しない気がした。寝起きで体が冷えているからか、私は冷静でこれといって動揺もほとんどなく、容易にこの状況を切り抜けられる気がした。厳つい男は私を警戒しているが、起きるのを待っていたところ問答無用で殺してくる気配はなかった。
「北の方から。私の無知から迷惑をかけたようで申し訳ない。」
思ってもないことをつらつらと述べることができた。もしかすると私は記憶のないころは役者だったのかもしれない。
「北から?寒さにでも耐えられなくなったか?」
「いや、仲間を探しているんだ。散り散りになってしまったが、もう一度会いたい。それだけだ。」
「ふん、この時分に殊勝な奴だな。」
警戒が解かれたような気がした。あとは恐らく含みのある言い方をすれば問題ない。
「ここには村があるのか?それであれば私の仲間がいるかもしれない。良ければ村の人に会わせてほしい。」
「…。いいだろう。見たところお前は食料も持ってないし私どもを襲おうとはしなさそうだ。どこまで本当かは指摘はしないし、住みたければ私どもの住処に住んでもいい。穀潰しは要らないがな。」
「把握した。」
「俺の名前はパドマだ。その名前だけいったん覚えておけ。」
パドマはモンゴル語で睡蓮だったような気がする。
「私の名はネルグイだ。」
私は適当な名前を言って村に滞在することにした。
パドマ以外の男はまだ私を警戒している。だが、それも時間の問題だろう。恐らく私はこの村で困ることはないだろう。村の美しい女を妻にすることも、村を治めることも口だけは達者な私であれば問題はないと思う。
そうほくそ笑んだとき、私は夢から覚めた。
続く?
結構適当に書いてしまったので後程修正かけると思います。→修正済み!
ちなみにモンゴル人は子どもが病気や災害で亡くなるのは魔物のせいだという考え方があり、魔除けのために人間の名とは到底思えない名前をあえて付ける風習があるそうです。へー。ネルグイは名無しという意味です。
第三夜までは話何とか思いついた。
そろそろいい年だし、小説本気でやろうかなー・・・。