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白の姫  作者: 川端 怜汰
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story 02 - 族長さま

あばばばこの回さらに短いあばば






その日 、テオはバルベルグ集落の手前の丘で 、前方に続く平野をただ眺めていた 。


「 テオさま 」


声は幼いバルベルグの民のものだった 。

見た所 10 、それより少し上かという所の女子だった 。

その身体には身重であろう銀の剣を重そうに抱えながら 、テオの後方で小さくお辞儀をしていた 。

厚い防寒具を重ね着しても 、幼子には辛い寒さだった 。

テオは自分の着ていた外套を幼子に掛けてやると 、膝を折り目線を合わせながら 「どうした?」と問うた。


幼子は先ず、外套への御礼を述べた。

そして 、寒さに潤んだ瞳を真っ直ぐテオに向け 、言葉を述べた。


「 テオさま。私の 、族長さま 。」


テオは驚いた 。

前日 、バルベルグ次期族長として挙げられたマタイの名は 、例え幼子であろうとも知らぬはずが無かった 。

けれどテオはその言葉を遮りも 、否定もせず 、幼子の言葉を聞いた 。

幼子の言葉は重く 、君主を崇めるような言葉付きと目線だった。

故に 、遮ることが出来なかったのだ 。


「 私は 、幼い頃からテオさまに憧れておりました 。女の身にあられるのにお強く 、凛々しくある貴方様のようになりたいと思っていました 。」


幼子は 、噛み締めるように

ですから 、と続ける 。


「 マタイ様のこと 、私は認めません 。けれど 、反対もしません 。ただ 、私にとっての族長さまは 、貴方様です 。貴方様なのです 、テオさま。」


歳に似合わない堅苦しい言葉は 、その真剣さを引き立てた 。


「 テオさま 。私の父は 、戦で死にました 。二つ前の戦でしょうか 、イエルバ族との小競り合いです 。結果は 、私達バルベルグの圧勝でしたね 。けれど 、父は死にました 。 ... もしも 、生命を落としたのが 、関わりもない人だったならば 、私は今こうして貴方様の前にはいないでしょう 。」


幼子は 、泣かなかった。

声の震えこそあっても 、堂々と凛とした姿はテオを憧れたというだけの事はあった 。

抱えていた銀の剣をテオの足元に置くと 、

幼子は可愛らしい花のような笑顔を浮かべた 。


「 戦の場から降りぬ意思 、お聞きしました 。


... 生きてくださいませ 、テオさま 。

私は必ず力をつけ 、この剣を振るい貴方様を守れる戦士になります。

ですから 、それまで 、死なないでくださいませ 。

貴方様を思う者がいることを 、

忘れないでくださいませ 。」


幼子の言葉は 、そこまでだった 。

テオは足元の剣を手に取ると 、立ち上がり幼子を見下ろした 。

ひとりの戦士として 、見るという意味を込めたものだった 。

幼子もそれを理解したのか 、緩んでいた口元を引き締め、テオに向き直った。


「 戦の場に立てるのは 、バルベルグの戦士のその精鋭のみだ 。お前のような者が今から鍛え上げたところで 、道は狭いぞ 」


テオの冷たい言葉に 、幼子は嬉しそうに 「構いません」と答えた 。

テオはそれを見て 、笑った 。

馬鹿にするようで 、呆れるようで 、幼き頃の己を見るような目で幼子を見つめた 。


「 ... 明日から 、稽古を付けてやる 。お前 、名は?」


幼子は勢いよく額を地につけ 、喜んだ 。

仰ぎ見れば 、愛しい君主がいた 。

その小さな身体に似合わない大きく強い心の中で 、「 必ず 、必ず 御守りします 」と呟きながら 、

己の名前を告げた 。

個人的にエルザとテオコンビ大好きなんです( しらねえよ )

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