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白の姫  作者: 川端 怜汰
1/8

story 01 - 出会い

1500〜2000ずつ更新していきたいと思っています(´・_・`)





その地では絶望は白い色をしていた 。

砂よりも細やかな雪氷の嵐は 、

時に生物の温度を容易く奪ってしまう程の激しさだった。

一年の全てを白のヴェールに覆われたアナスタジア山脈は 、紅葉のひとつも無い秋を終え 、最も激しい季節へと移ろうとしていた 。




テオはアナスタジアの各族を治める

バルベルグ族 族長 ジル の双子姉妹の妹だった 。

ジルには男の実子が居らず、

故にテオは幼い頃から武術と政治の全てを小さな身体には酷な程に叩き込まれた。

先代族長の血を継ぐという男が見付かったのは、テオの15の誕生日だった 。

雪の荒ぶ昼よりも夜の方が静かなアナスタジアでは珍しい、満月の見える夜のことだった。

それが 、後のバルベルグ族長となる青年の生命を救う事となり、

同時にテオの存在意義を根源から覆す事となるとは、その時誰も思ってはいなかっただろう。


青年は 、先代族長の血を継ぐバルベルグの民だった。

バルベルグの子は産まれてすぐに身体の何処かにバルベルグの紋様を彫り込む。

敵を貫き切り裂く頑丈な爪を表した3本の線と 、

どんな脅威にも立ち向かう勇敢な心を表す心臓 。

族長の血を継ぐ者には 、王者の証として心臓の上に王冠が描かれる 。

青年の腰骨の上の小さなそれは 、

彼がバルベルグの王冠を受ける資格のある者と示していた。


途方も無い雪原を抜け 、青年は歩き続けたのだろう。

ぼろぼろの防寒具を纏い 、厚い防寒靴の底をすり減らし 、

バルベルグの集落手前で倒れていた 。

もしもその日が1m前も見えないような吹雪の日だったのならば 、

青年はその生命を白さに奪われていただろう 。

たまたま月を見に外へ出ていたバルベルグの民に彼は助けられ 、手厚い看病を受けた 。

そして 、その二日後 の事だった。

バルベルグの若族長の座に青年の名が刻まれた。

青年の名は 、マタイといった 。


マタイがバルベルグへ来たのは 、

アルベヴムの手から逃れてのことだった。

アルベヴムはアナスタジア山脈南のふもとに位置する

近代都市国家王家の事である。

日々着々とアナスタジア全域を侵略せんと企むアルベヴムとは、

山脈を尊み 、山脈と共に生きると誓った各族の中でも戦線の筆頭を走るバルベルグは

当然のように仲が悪かった。

マタイを産んだ母は 自分の子が戦乱の戦闘に立ち誰よりも死に近い道を行く事を否定し 、

マタイを連れバルベルグを去ったという。

マタイはアルベヴムでバルベルグの民だということを隠し 、

生き育ち 、そしてとある拍子で出生がばれてしまい

アルベヴムを追われたのだ 。

ジルはその生い立ちを理解し 、許容し 、

マタイをバルベルグの次期族長とした 。


テオは泣かなかった。

凛とした立ち筋でマタイの前に立つと、戦の前の気合い付けの様に空気を震わせた。


「 お初にお目にかかります、マタイ様。私はテオ。バルベルグ族長ジルの娘にて、貴方様の兄妹となる者。」


そして、滑らかな動作で膝を付いて。

伸ばしたことのない銀髪が地につくほど頭を下げて。


「 マタイ様、どうか、私を戦場に置いてくださいませ。駒として、私をお使い下さいませ。女の身でありながら、身の程を弁えぬ提案だと重々わかっております。なれど、私は、果てるなら、白の大地の上で戦って、果てたいのです。」


強調するべく区切った言葉は、彼には緊張として伝わったかもしれない。どちらでも良かった。

テオがマタイに身を焼く思いを抱かなかったのかといえば、それは否だったけれど。

それでもテオは、その相手に頭を下げても譲れないものがあった。


誇りと、熱を以て。私を、ただの女にしないで欲しい。

戦士としての私を、殺さないでほしいとテオは懇願した。


マタイは、何も言わなかった。

目の前の彼女が温い覚悟でないとわかっていた。

駒のように使う気が微塵もなくとも、その体が彼女の身を軽くするのならそれでいいと思った。


それの4年後、テオ19の歳の年、マタイがバルベルグ族長に即位した。

物語は、紡がれてゆく。

誤字脱字のオンパレード失礼致しました。

一先ず、ここまで読んでいただいた皆様に深く感謝の心を述べたいと思います。

もし指摘等ありましたらバンバン受け付けております←

よろしくお願い致します!

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