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卒業式はつつながく進行する


生徒たちが巣立って行く。

そんな様子を教師として眺めるのは今年が最初で最後になるだろう。

私の教師としての任期も、残り10日足らずで終わってしまう。

さして教師らしいこともしてこなかったが、それでも胸に溢れるものはある。

この一年のことを考えながらも、目線は誰かを探すように腰掛ける卒業生の間を彷徨っている。

結局あの日以来彼女と授業以外で顔を合わせる機会はなかった。

そのため、受験の合否も知らずにいる。


校長先生からひとりひとりへの卒業証書授与が行われる。

壇上はまるで祭壇で、校長はさながら司祭のようである。

やがて彼女の呼ばれる番になり、綺麗な声が響くと壇上に姿を現わす。


これでいい。これでよかったのだ。

さまざまな思いを抱えながら、きっと私も卒業となるのだ。


式が終わると、

特にすることもないので美術準備室に引きこもろうとしていると後ろから「先生!」と声をかけられた。

振り返ると、今となっては懐かしい少女がこちらに駆け寄ってくるところだった。

「先生のお陰で、無事に志望校に受かりましたよ」

そう嬉しそうに笑う少女。

まるで何事もなかったように一礼をして走り去っていく。

その足の向こうには幾人かの男女でできたグループ。

そのうちの一人の男子と腕を絡ませると、少女がこちらを一瞥し、小さく笑った。

あぁ、そうか。きっとそういうことなのだろう。

自嘲的な笑みが口を付いて出る。

それ以上気取られないように、踵を返して棲みかへと戻ろう。



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