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冬心

年が明けると、それまでのクリスマスモードはどこへやら、学校内はピリピリとした空気に包まれていた。

もう数日もすれば3年生にはセンター試験が待ち構えていて、それを皮切りに受験が本格的に始まってしまう。

当事者たちは気を引き締め、下級生たちはその空気をどことなく意識しているのだろう。

学校全体が妙にこそばゆいような緊張感を漂わせていた。


……けれどそれもこの美術準備室には関係のないことである、今となっては。

マグカップを片手に、いつも少女が勉強していた机に目を向けてみる。

家では集中して勉強できないとこぼしていた彼女の面影が一瞬脳裏にちらついたが、かぶりを振って余計な想像を追いだす。

あれ以来、彼女がここに来ることはなかった。

これで良かったのだ。そう思いながらコーヒーを啜る。

一人きりの部屋はヒーターをつけていてもどこか寒く、そして暗く感じる。

冬の太陽の角度のせいだけでもないだろう。


それにしても暇だ。

今までも暇は持て余していたが、それでも喧騒があった。華やかさがあった。

気分転換にと図書館で借りてきた小説も、ほとんど読まれることなく放置されている。

時刻は午後二時。

残念なことだが、放課後まではまだ腐るほどに時間がある。

イスに深く腰をかけ、再び小説を手に取る。

集中して文字の羅列に目を滑らせていれば、時間も飛ぶように過ぎ去ってくれるはずだ。

そう思い、心を落ち着けて文字を追う。

けれど、小説の内容は一向に頭の中に入って来なかった。

再びコーヒーを啜ると、胃の中の熱された空気を出すついでに、私は小さくため息を吐いた。


意識はいつまでも……開かない扉に注がれている。


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