投げナイフor投げ矢
今回は短いです
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はぁい、久しぶり、レイラよ。
ここ最近は殆ど雨が降らなくて乾燥した日が続いているわね。
おかげでアタシも得意のファイアボールの魔法がほぼ使えなくて面倒だわ。
どうして?って、うっかり延焼したら草原一帯が火の海になっちゃうじゃない、だからウォーターバレットかウィンドカッターを使ってるんだけど得意な属性じゃ無いから魔力の無駄が多いのよね。
まぁ、アタシに限らず中堅以上の魔法使いなら各属性の魔道具を持っていて場面に併せて使い分けるのが定石なんだけど、開拓地に来ている駆け出しの子達には少々厳しいお値段だから魔法使いの子でも投擲武器を持つ事もあるのよね。
相談窓口に来る冒険者で多いのが『効率の良い稼ぎ方』『安全な戦い方』『装備の選び方』の相談が圧倒的に多いわね。
細かく分ければもっと増えるけどこの3つに大別出来る相談が殆ど。
さてと、前置きが長くなったけど今回の相談内容はそれ以前の問題ね。
「投げナイフが刺さらないんです。」
ですって?
「練習しなさいよ、それでも当たらないなら諦めなさい。」
「いえ、当たるんですけど距離によって刺さらないんです。」
「う~ん、それを練習しろって言ってるんだけど、理解できないかしら?」
「投げナイフの講習とか有りませんかね?」
「そういう事なら講習しても良いけど、とりあえず腕前を見せてもらうわね。」
そして毎度おなじみの練習場での確認作業、
スタイルとしては半打ち(*1)で姿勢も悪く無いし動作も素早い。
・・・当たるわね。それも結構な精度で的のほぼ中心に当たってるわ。
そうなると問題は刺さらない事の方か。
「ねぇ、今度は距離を変えて投げてみて。」
「経験的にこの距離以外だと殆ど刺さらないんですけどね。」
「それを確認する為に投げるのよ、さっさとなさい。」
距離を変えて調べた結果は刺さるのが5~6m、十分な威力で当たるのは10mまで、当たるだけなら15mが限界って感じね。
装備の相談用でギルドに常備させている武器の内で、数種類の投げナイフを試しに使わせてみると鉤付きで両端が刃に成っているモノと投げ矢の相性が良さそうね。
「貴方、今持っているナイフは全部下取りに出して別のを買いなさい。」
「えぇ~っと、まだ最近買ったばかりなんですが・・・」
「刺さらない投げナイフ持ってるよりマシよ。」
「うっ、判りました。どんなナイフ買えば良いでしょうね?」
「選択肢としては大きく2種類、投げナイフの柄の先に尻尾を付けるか投げ矢にするかよ。」
「柄の先の尻尾とはなんですか?」
「あぁ、そこから説明が必要ね。簡単に言えば矢に羽根が付いているのと同じ事、重量の有る先端部、軽量で空気抵抗の有る後端部、この二つが揃うと重たい先端が常に進行方向を向くのよ。
似た物としては凧揚げの尻尾を想像してもらえば判るかしら?」
「どちらが安いでしょうか?」
「それはお店や品質によって違うから直接確かめに行きなさい。」
「判りました。」
「それと、投擲武器に紛失は付き物だから、発見率を高くしたいなら尻尾付き投げナイフにすれば目立つから見つけ易くなるわよ。」
「それなら投げナイフにする予定で行ってきます。ありがとうございました。」
まぁこの程度の相談ごとなら可愛いモノね。
本業は魔法使いなんだけど、魔法関係の相談なんて多くは無いのよね~。
誰か魔法関係で面白そうな相談でも持ち込んでくれないかしら。
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続きます
(*1)半打ち ナイフの投げ方の種類、刃の方を持ち、投げる時に回転が掛かり、刺さる時に丁度半回転する。