プレートブーツ
プレートブーツ
「すいませぇ~ん、コレクターズさんお仕事でぇ~す。」
「おぅ、どうした?」
「えっとぉ~、この方が装備についての相談が有るそうでぇ~。」
「そうか判った、んでお前さんが依頼人か?装備品の相談なら任せておけ!」
「よろしくお願いしますっ!」
オレは冒険者クラン(*1)『コレクターズ』の一員でロッソと言うおっさんだ。
今日はギルド当番の日で朝からギルドのロビーで待機と言う名の暇を持て余ましている処だな。
他の冒険者PT(*2)やクランじゃこんな事は無いんだが、うちはここの冒険者ギルドとの契約していて、毎日このギルドに最低でも1人を常駐させる事になっている。
なんでそんな契約するんかって?危ない討伐依頼を受けなくても最低限の衣食住の保障がされて手が空いているメンバーは冒険者として自由に活動して良いって条件にうちのメンバーどもが喰い付いてな。
そこでメンバーで話し合って条件付きでここのギルドとの契約をしたって訳だ。
そうそう、言って無かったが。うちのクランが契約しているギルドでの仕事内容だがズバリ相談窓口ってヤツだ。
普通はギルド職員で対応するんだが、開拓中の村では今まで誰も経験した事の無い問題だって発生するからギルド職員じゃ対応しきれない。
そこで周囲の探索とその情報提供、さらには後に続く冒険者への相談までを一括で請け負った訳だ。細かい契約内容の説明は省略するが、開拓最前線の辺境ならではの未知への挑戦と安定した収入を両立するかなり特殊な立場なのは間違いないな。
~それはさておき、相談だ~
「それで?相談って事だが、何処で何をする為の装備なのかを聞きたいんだが。」
「はい、北の伐採地の奥に川が流れてるじゃないですか。」
「あるな。たしか川幅が2m程で深さは30Cmくらいだったか。その川がどうした?」
「詳しいですね、その川に沿って少し上流に行くと針モグラのコロニーが有るんですよ。」
「おぅアレか足元でチョロチョロ走り回ってチクチク刺してきやがる。」
「そうそう、その針モグラの討伐に行ってきたんですけど1日掛かって10匹しか仕留められなくて、その原因ってのが針モグラに足を刺されてケガが絶えなかったんで、ヒーラーが消耗しちゃって撤退したんですよ。」
「なるほどな、つまり針モグラ対策の装備を相談したい訳か。」
「はい、何かお勧めの安くて良い装備って有りませんかね?」
「お前らのPTで怪我したのは前衛だけか?」
「いえ、ほぼ全員がやられました。」
「確認するがケガをしたのは足首~ヒザの間で間違いないな?」
「えぇそうです。」
「それなら簡単だ、要するに膝から下だけ集中的に防御すれば良いんだから、その依頼が終わるまで一時的にプレートブーツにするんだよ。すぐに装備の用意してやるからPTメンバーを全員集めて来い。」
「判りました、すぐ呼んできます。」
ロビーで30分程駄弁っていると、さっきの若者が3人の仲間を連れて現れたのでオレも窓口に外出を告げて一緒に防具屋へ出掛けた。
この村には開拓の最前線とあって開拓者や冒険者向けの商店や工房が多く、ここもそんな商店の一つで金属製の部分鎧をメインに扱う防具屋だ。
「おぅ、親父さん忙しいか?」
「当たり前だ、てめぇらが毎日防具を壊す所為で修理依頼が貯まっとるわ。」
「そうか、こいつらにブーツ見繕って欲しいんだが、忙しいなら余所の店に行くが?」
「何言ってやがる、わざわざウチに来たって事は余所じゃ無理そうな話なんだろ。」
「判ってるじゃねぇか、針モグラ対策でヒザ下までのプレートブーツが欲しい。いつまでに用意出来る?」
「グリーブじゃなくてブーツだな?4人なら全員分すぐに用意してやるから靴脱いで待ってろ。」
「さすがだな。」
やり手の商人ってのは常に客のニーズを捉え、必要な物は事前に仕入れておくってもんだ。
これは口で言う程簡単な事じゃない、周囲の生態も完全には判って無い開拓の最前線なら難易度はかなり高くなる。
その点ではこの店を含む幾つかの店主は優秀で、度々ギルドに来ては最新の開拓情報や魔物、動物、植物、果ては地質まで調べて次に売れる物、つまりは必要とされる物を考えて仕入れて来る。
「ロッソさん、オレたち全員分の防具を買うお金なんて有りませんよ。」
「そこは大丈夫だ、壊さずに返品すれば8割の返金が有るんだ。要するに2割の金額でレンタルすると思えば良い。」
「わざわざ買わんでも使える上に次に買い替える時の参考にもなるだろ。ウチでフルセットを買えとは言わんが気に入ったら買い替える時にウチの店を思い出してくれればええよ。
ウチとしても元手を残したまま収入が有るのは助かるしな。それと、返品するつもりなら壊すんじゃねぇぞ!」
「了解です。そういうことなら是非お願いします。」
「ふむ、そっちのガタイの良いヤツはコレ履いてみろ。んでお前さんはコレだな。たぶん少しゆるいはずだ。足の甲と足首にクッションとして綿袋を詰めて調整しろ。慣れるまでは歩きにくいから腰のベルトからロープで吊る感じにしておけば楽だろう。もし買い取るなら帰って来てから言えば専用のサイズに打ち直してやる。」
「ふえぇ、コレで歩いて北の森まで行くんですかぁ。」
若い魔法使いっぽい女の子が泣きごとを漏らすが、誰だって好んでプレートブーツで行軍なんぞしたくない。これも仕事の内だしアドバイスしておこう。
「確かに慣れないプレートブーツで無理に歩いても現地に着くまでに消耗しちまう。そんな時は目的地の近くまで今までのブーツで歩いて行って履き換えれば良いんだよ。日帰りなら荷物にも余裕はあるだろ?」
「そうですねロッソさん、背負子かソリでも作ってみますよ。」
こうして送り出したPTだが2日後には無事に依頼を達成して帰って来た。腕を磨いて物理で殴れ。とか言うヤツも居るが、使える道具は使わなきゃ損だし状況に合わせて装備を変えるのも実力の内だろうよ。
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続くよ
(*1)クラン この作品ではパーティーよりも大規模な人数の集まりとする。
日本語では血盟、意味としてはギルド(組合)と似ているがギルドは職業的な集まり、クランは個人的な集まりを指す事が一般的。
(*2)PT パーティーの略語、派生してPTL パーティーリーダー