「異世界からきました拾ってください」
「異世界からきました拾ってください」
視界に入った。目が合った。立ち止まってしまった。
ダンボール、とその前面に書かれた文字が。その小さな箱の中で膝をかかえ座りこちらを見ている少女と。頭に割り込む灰色、しかし鮮明な映像により。
どうしてお前が出てくるんだ。まだ許してはくれないのか。許すことはできないのか。
「これが最後……ファング」
彼女の呟きにはっとさせられ俺は現実に意識を戻す。ふっと一息つく。OK、クールだキンッキンに冷えてるぐらい悪魔的にクール。落ち着いたところでとりあえず状況確認だな。
えっと、夕方いつもの時間、学校からのいつもの帰り道。うん異常なし。そのほとりにダンボール。まぁ異常なし。そこに書かれた最近よく見かける異世界がなんちゃらかんちゃら系の文章。うん、うん?中にブロンドでボサボサロングヘアーの女の子。はい!ダウト!!異常あり!違和感!非日常!
あと身体が動きません☆
俺が己の身体とかつて無いほどの死闘を繰り広げていると目の前の仲間になりたそうにこっちを見ていた少女が
「あ……ダメ、魔力……げん……かい」
そう口にし、結局 しょうじょ は たおれてしまった ! ふわっと気を失い、こてんっと横にノびている。
あなた は どうする ?
戦闘は終わったのになぜか頭に選択肢が浮かぶんですが。それに身体も動くようになっている。
どうするかなーと考えつつ首を左、右と回し周囲を確認する。当たり前にいつもの帰り道の風景。大通りとは言えないが人通りは少なくない道。歩道に等間隔に植えられ、緑々とした木々。ちらほら見える同じ制服を着た生徒や仕事終わりで今日も一日乗り切りました、ビールが飲みたいってな顔をしているサラリーマン。皆、変わらぬ日常を送っているのだろう。
俺もその一人だったはず。いや、今もそうかもしれない。この子を拾ったとしても警察様に送り届けて何も起こらずいままでと同じような日常を送ることになるかもしれない。未来はわからない。
ただ、この少女から俺は何かを感じるのだ。単なる期待からくる自分勝手な妄想なのかもしれないが。
自分自身が問うてくるのだ。変えたいか、変わりたいか、と。
木々が一吹きした風により揺らされ、大きな音を立て、やがて静まっていく。
俺はひたすら選択肢の端を動き続けていた矢印を止め、スタートボタンを押した。