ゴブリン転生=乙女ゲーム!?
なせ・・なぜだ!嘘だろ!?
暗い森を抜け、目の前にある泉をのぞきこむ。そしてそこに映っていたのは、真っ赤な瞳・・尖った耳・・そして何より・・緑色の肌!!
そう、俺はーーゴブリンになっていた。
俺は、極々普通のニートであった。ちなみに年齢は魔法使いになれる年とでも言っておこう。家族構成は父と弟がいる。母は事故で数年前に他界した。父は仕事が忙しくてあまり家にいないから、必然的に俺が弟の面倒を見てた。弟はいいぞ~。お兄ちゃん!お兄ちゃん!ってとっっっても可愛いんだ!いまだって高校生なのにお兄ちゃんお兄ちゃんってなついてくれてるんだ。ブラコン上等!はっはっはっ!
ある日、父や弟に内緒で、とある物を買いに外へ出掛けたら・・死んだ。事故だった。
まさか・・
足元にバナナの皮が落ちているなんて!!
なんて間抜けな死に方をしてしまったんだ俺!アホ!童貞野郎!・・悲しくなってきた。
まぁそんなこんなで死んだ俺は、生まれ変わった。そう、ファンタジーな世界にー。
ん?なんで分かったかって?
だって見ろよ!この尖った耳!真っ赤な瞳!緑色の肌!あり得ないだろ!?ゴブリンだぜ!?ゴブリン!あのRPGなんかでレベル1でも大丈夫!サクッとお手軽に殺せますよ~☆がキャッチフレーズみたいなザコキャラに転生しちまったんだぜ!?
ううぅ、しかも一人ぼっちだし・・。仲間は俺のこの鼻を見て捨てていきやがった。この世界のゴブリンは、鼻が長いんだ。けど俺の鼻は、まるっこかったんだ。・・ちくしょー。
あ~あ、なんでゴブリンなんかに生まれて来ちまったのかな・・。普通の人間がよかったぜ。はぁ・・。
泉をのぞきこみながら黄昏ているとガサッ、と後ろから音がした。ピクッ、・・誰だ?。ここは滅多に人も動物もこない場所だが・・。音のした方へゆっくりと慎重に向い、木々の隙間から除き混む。
そこには、見たこともないような綺麗な子供がいた。だが、とても痩せている。まるで何日も飯を食べてないみたいに・・。そして、所々にある紫を通り越して黒くなっている殴られたかのような痣・・。
・・DVか?
ーこちらに気付いたのか、彼は目をゆっくりとこちらに向けた。そして俺を見て、怯えたかのように体が震えたが、動けないのだろう。彼は諦めたかのように目を瞑った。
えーっと・・。俺、何もしないんだけどな・・。
あ~、う~。どうしようか迷い、辺りを見渡す。
おっ!いいのあるじゃん!
木の上に生えていたのは、リコムの実だ。
リコムの実は、赤や紫など毒々しい色をしているが、林檎と桃を足したような味だ。旨いぞ。
「ギィ、ギィギィ!(ほら、食えよ)」
俺はリコムの実をもぎ取って差し出した。
すると彼は恐る恐る目を開き、俺が手に持ってる物をみるときょとんっ、と間抜けな顔をした。
「えっと、くれ・・るの?」
「ギィ!(おう!)」
俺の言いたいことが分かったのだろう。
彼は手を伸ばし、リコムの実を受け取り、かじった。ぱく、しゃり・・。半分ほど食べると、彼は顔を下にふせ、ぽろっ、ぽろぽろ・・。静かに、涙を流したー。
「ギッ!?」
な、なんだ!?どうしたんだ!?
俺、なにかしちまったのか!?
慌てていると、彼が顔を上げ、泣きながら喋りだした。
「ふっ・・ふえっ・・、こんな、やさし・・ひっく、・・初めて・・で」
「ありがと・・」
ほにゃっ、と彼が笑った瞬間、思い出してしまった。
まさかこ、こここは・・あの、『虹ファン』の世界なのか!?
ーー前世で、『虹色ファンタジー』という乙女ゲームがあった。攻略対象者は7人。
その内の一人がこいつ、
レイリア=サヴァレオ=ノーレウスである。
こいつはこの国の第一王子であるが、母親が庶民だったことと、魔力が全くといっていいほど無かったことから捨てられたのである。だから今は確か・・5歳の筈だ。
ちらっ・・。
ちいせぇな。なんかこいつ見てると、弟がちっせーときを思い出しちまったぜ・・。
・・ーーよし。
決めた!こいつは俺が育てる!
前世の弟のように可愛がって可愛がって構いまくってやる!だからまずは、
ーー意志の疎通からだな。
ゴブリン
名前はまだない。レイリアを拾った。
前世はニート。弟溺愛してた。
レイリア=サヴァレオ=レーノウス
5歳。この国の第一王子。
金色の髪に金色の瞳。
母は庶民。父は国王。
魔力が無い。母に暴力を振られ、捨てられた。
初めて優しくしてくれたゴブリンになつく。




