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この国はもうダメかもしれない

 ストリップ。

 正式名称はストリップティーズ。

 舞台上で主として女性のダンサーが、音楽に合わせ服を脱いでいくさまを見せる出し物のこと。

 古くからの大衆の性的娯楽の一つとなっており、日本では風俗産業の一つとしてされている。


 私がやろうとしている事はそれに近い事だと思う。

 本当はただの《マヨイビト》としての使命を確認するためだけの行為だけれども。


『ぬーげ! ほい! ぬーげ! 全部全てをぬーげっと!』


 あのエロ親父と言う名のブルーチキンの文官達が、私を脱ぐための音楽を堂々と歌って来る。

 あんなのが文官って……この国は大丈夫なのですか?

 マジで燃やし殺したい……。


「あの……国王さん、すいません。あのエロお……文官さんはどうしてもこの場に居ないといけないんですか?」

『ブー! ブー! ブー!』


 うるさい。

 抗議のつもりだろうけれども、あなた達の視線は既に害悪に近い。

 主婦の前に現れたゴキブリと同列、それ以下かも知れない。

 早く出て行って欲しいと直訳して言わない分、そこで察して欲しい物である。


「ふむ……。しかしだな、ドロテア様。彼らには彼らの使命があるのだ。サウスさん、説明を頼む」

「はい、国王様。ドロテアさん、実は《マヨイビト》さんは私が尊敬しています、大魔法使い様でいらっしゃるフォーズ様の他にも、多くの《マヨイビト》がこの世界に来て、多くの人様がこちらで使命を果たしました。

 何人かはこの世界に残られ、他の人達はこの世界から元の世界へと帰っていたのですけれども、その使命のほとんどが旅をしないといけない物でして……つまりはそれだけ色々な事をなされる方なのは明らかです」


 その説明の、どこにこの文官達が居ないといけない理由があるのでしょうか? 

 この文官達が今しているのは、私のビキニ姿を思い浮かべて妄想してハァハァしているだけなんですけれども?

 こいつらの仕事より、私のメンタルケアの方が重要じゃないの?


「それで、我が国はそんな《マヨイビト》を後の世に知らしめるために、絵として、本として残さないといけないと言う決まりがあるんです。国王である私の元の彼らは、それを残すために居るのですから」

『ちゃんと見て、後世に全て残させていただきます! グフフフフ!』


 ……あいつらにそんな役目があったの? 

 激しくどうでも良いんですが……。

 むしろ早く私のために居なくなって。

 もしくは死んで。


「え、えっと……絵は要らない、かな?」

「ふむ。……《マヨイビト》様の意思は尊重すべきだな。よし、絵画記録担当の文官は立ち去るように」


 ホッ。

 こっちの意思はちゃんと聞いてくれるんだ。

 良かった、これで少しは……って!?


「絵画記録担当!?」

「はい。《マヨイビト》たるお身体を案じるために、絵画記録担当の文官を2人、文面記録担当の文官を3人、そして奥の別の部屋にてあなた様の身体記録を取る文官が1人居ります」


 国王の隣で、ニヤリとこちらに笑い掛ける、文面記録担当とやらの3人の文官達。

 名残惜しそうに出て行く2人の文官達。

 5人から3人に減らす事が出来たけど、あまり変わらない。

 エロ親父5人が3人になっただけ。状況は好転していない。


「……ドロテアさん。これ以上、ごねると言うのならば、私許しませんよ。師である大魔法使いのフォーズ様が、円滑に進めるよう言付けをいただいているんです。

 ……これ以上はフォーズ様の円滑な進行とやらに支障が出るんです! さっさと脱いでください!」

「あなた、そればっかり!」


 速くしろと、怖い顔でこちらを見て来るサウスさんも加わり、私は仕方なくコートを脱ぐ事になった。

 脱ぐ事にはなったのだが、あいつらの顔がエロ親父くさい。


「ほうほう。まずはボタンを1つ1つ外して行くんですかな! なんともまぁ、そのたどたどしさは後世に残さねば!」

「そして、ゆっくりと肩に手をかけて、コートをゆっくりと脱いでいくのですかな! コートの下から見えてきたその柔らかく、なおかつ綺麗な玉のような肌がなんとも麗しいですかな!」

「ほうほう! その下から出て来たのは、過去の《マヨイビト》様達の資料で読む『びきに』とか呼ばれる奴ですかな! 下着のようでありつつ、そのボディラインを際立たせている所がなんともたまりませぬなー!」

「あの足を見てくださいよ! シミ一つなく、なおかつ艶やかな肌もありますぞ! 

 このような寒空の下をあのような綺麗なお足で踏みにじられたと思うと……あぁ、私も踏まれたいですなぁ!」

「いやいや! コートを脱ぐ前から見ていた足よりも、まず注目すべきはあの脇!

 うちの女房とかはあの辺りに、邪魔くさい毛なぞを生やしておりますが、あの方は全然ありませぬぞ! それどころか、どこかハーブのような、良い香りが漂ってますし、まるでこの世ではない、極楽の世界にいざなってくれるような香りですぞ!」

「いやいや! コートの下から現れたあの胸も忘れてはならぬだろう! 垂れもせず、崩れもせずに、なおかつあの大きさ!

 今年のミス・ブルーチキンなぞとは比べ物にならないくらいに大きく、そしてその上美しさを兼ね備えております! お二方、一番書き記すべきはあそこかと!」

「「然り! 然り! 然り!」」


 ……このエロ親父三人衆は、ちゃんと仕事をしているのかしら?

 私、ただコートを脱いだだけなのに、良くもまぁそんな言葉がへらへらと出て来る物です!

 こいつらの頭の中には、エロ語辞典でもあるんじゃないの?


「いっそこの炎で燃やしてしまいたいくらいですよ」


 そう言って私は手の平の上に、私の怒りを代弁するかのように轟々と燃え立つ炎を出現させる。

 そしてその炎を時々、強くして恐怖感を煽る。


「ひぃ!」

「止めてください!」

「是非、その顔のまま、踏んでください!」


 ダメだ。

 1人には逆効果みたいである。

 まぁ、こいつらなんてどうでも良いけれども。

 サウスさんは私の怒りの代弁者たる炎に対して、使命が分かる魔法の《キャットノウズ》を行ってくれている。


「……《かの者、旅をして魔女を倒す使命を帯びたる》ですか。王様、そうですので準備をお願いします」

「あぁ、分かったよ、サウス」


 そう言って王様は出て行ってしまわれた。

 ……って言うか、魔女を倒す使命って何!?

 私、魔女なんか倒せないよ!

 と言うか、王様カムバック!

 だって王様が居ないと残るのはフォーズ様至上主義みたいなサウスさんと……


「「「ぐふふふふふ! 《マヨイビト》最高!」」」


 そう言ってこちらを見る、エロ親父めいた顔を浮かべる文官3バカトリオの姿だった。

 ……この国、大丈夫だろうか?


「では、ドロテアさん。次は身体測定を行っていただけます」

「えー……。それって文官さんが行うんですよね?」


 確かさっき、王様が奥の別の部屋にて身体記録を取る文官が1人居ると言う話をしてくれていた。

 つまりはこのエロ3バカ文官達と同じと言う意味で……。


「安心してください、ドロテアさん。

 この国の身体検査の文官は大魔法使いのフォーズ様によって女性に変わられました。今までは男性だったのですが、こう言った女性の《マヨイビト》のためにと、女性に変えられたのです」

「それは嬉しい! 良かった! ありがとうございます、フォーズ様!」


 あなたはどんな人物かは分かりませんが、身体検査に女性を配置してくれたのは嬉しい限りです!

 あぁ、本当にありがとうございます!


「フォーズ様の偉大さが分かられて良かったです。では、ドロテアさん、こちらへ」


 そしてサウスさんに奥の部屋へと誘導されて、私は喜び勇んでその女性文官に会いに行った。


「ハァハァ……! お嬢ちゃん、私があなたの身体を全部調べつくしてあげるからね。ハァハァ……」


 ……本当にこの国、大丈夫?


「ハァハァ……! 良い物、触らせて貰いました。ごっつあんです!」

「……もうお嫁にいけない」


 ちなみに前者が女性文官さんの台詞で、後者が私の台詞。

 ……本当に女性文官さんったら、だ・い・た・んなんだから。

 何が起きたのかはご想像にお任せしますが、私が女性文官さんに対してこのようになっており、横であの3バカ(こっそり2人追加して5バカになってた)が鼻血を吹いて倒れているのから、状況を察してください。


「ドロテア様。あなたの神の使命を助ける3人の仲間を紹介致します」


 そう言って国王と共に入って来た3人の中に……


「「えっ……!?」」


 あのスケアクロウさんが居たんです!

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