国王はストリップを要求する
「では、そのコートを脱いでくれぬか? 我らが待ち望みし、《マヨイビト》よ」
スケアクロウさんに言われて石造りの王城の中を素足で進んで行った私に、頭に金の王冠を載せた白ひげのお爺さん……恐らくは王様さんが開口一番、そう話しかけて来た。
その隣に居る5人の黒ひげのおじさん達もうんうんと頷いている。
「え、えっと……その……」
いつの間に私は、年上の人達に援交を行う淫乱女子高生になってしまったのだろうか?
確か……王様に会えば全てが分かるとスケアクロウさんは言っていたが、あの極寒の寒空もこのための仕込みだったのだろうか?
いや、それにしては凍えるような北風や寒すぎる雪はリアル過ぎだし、第一手から出したあの炎もCGにしてはちゃんと熱も放っていて変だった。
そう思いながら、私はちょっと遠慮しながら王様から離れていた。
「王様、ちゃんと説明をしないと私達が、こんな年端もいかない少女に欲情する変態集団、と言う事になりますよ?」
と、王様さんの後ろから可愛らしい女の人が出て来る。
全身真っ赤なローブを着た、頭に黒系の鍔の広い、先が少し折れ曲がったとんがり帽子を被った可愛らしい容姿の、笑顔が眩しい美少女であった。
その美少女さんがそう言うと、王様さんは「そうだな」と頷いていた。
「……《マヨイビト》様、私はこの《雪原の国》ブルーチキンの王である国王ノース。そしてこちらは、私の業務をサポートする文官達だ」
と、横に居る5人の黒ひげ達をそうやって紹介してくれる国王のノースさん。
国王さんの紹介に対し、黒ひげさん……文官さん達はペコリと頭を下げていた。それに対して私は頭を下げながら、「ハハハ……」と気のない返事しか出来なかった。
「そして私は偉大なる大、大、大、大魔法使い様でいらっしゃいますフォーズ様の部下でいらっしゃいます、サウスと申します。私のような矮小な存在でよろしければ是非脳裏の片隅にでも覚えて貰えると助かります」
「は、はい! 風野ドロテアです! フォーズ……って、確か私と同じ《マヨイビト》の……方でしたっけ?」
スケアクロウさんの説明してくださっていた事を思い出していると、彼女は物凄い怖い顔になってこちらを睨み付けて、
「……フォーズ"様"でしょ?」
と、般若の表情でこちらに怒りの念を送って来る。
全身から真っ黒なオーラを出す彼女に驚いた私は、涙目になりながら謝罪する。
「ひ、ひぃ! すみません! すみません!」
「分かれば良いんですよ。《マヨイビト》のドロテアさん」
途端に元の可愛らしい笑顔をこちらに向けてくれるサウスさん。
……あの人、絶対にヤンデレだよとそう瞬間的に理解する私が居た。
「と言う訳で……《マヨイビト》であるからこそ、そのコートを脱いで欲しいと言う話になるんですが、理解されましたか? 《マヨイビト》のドロテアさん」
と、サウスさんはそう言ってくださるんですけれども、私には何も理解出来ませんのですが。
「もう少し分かりやすくお願いしたいのですが……」
私がそう言うと、文官さんの1人が何かに気付いたようでゴニョゴニョと耳打ちをする国王様。そして国王様はその言葉を聞いて納得したようである。
「……《マヨイビト》はこの世界に来る際に、果たすべき使命と、それとその使命を果たすだけの力をくださる。あなたの場合は、兵士スケアクロウの報告によると、あらゆる物を焼き尽くす業火の魔法のようだが。
そして《マヨイビト》はこの世界の物を身に着けていると、神から貰った力が使えないと言う制約があるらしいのだ。つまりは、あなたの場合はそのコートを脱がないと魔法が発動出来ない、と言う事だ」
「つ、つまりは……?」
と聞くと、国王様は「最初に言ったではないか」と言った後、こう告げた。
「あなたが使命を果たすには、炎の魔法が必要なので――――――魔法を使う時はビキニ姿になってください」
「そ、そんなバカな!」
と、私がそう思いながらさっきのように掌の上に火を点けようと一生懸命念じる。
(何でよ! あの時はあんなに、必要以上に出た癖に!)
兵士スケアクロウさんが言うには、私が元の世界に戻るには使命を果たさないといけないんだとか。
そして王様が言うには、神様はその使命を果たすためにこの炎の魔法をいただいた。そしてこの世界の物……つまりはビキニの上にかけているこのコートを脱がないといけないって事ですか!?
「え、えっと……その使命ってどんな……」
「神様に聞く……もしくは身体に直接聞く……」
えっ? サウスさん?
何、その後者の意味深な台詞は? ちょっと寒気がしたんですけれども?
「魔法、《キャットノウズ》を使えば、その《マヨイビト》がどんな使命を帯びているかを知る事が化膿ですが……」
「ふむ。フォーズ……様以外の《マヨイビト》は、そうやって使命を見出して来たのだ」
「じゃあ、そのキャット……なんとかで私の使命を教えてください! わざわざビキニ姿を見せたくないですから!」
どうもこの城は温かくて、コートを脱いでも大丈夫そうではある。
思えば、あの炎を消して、このコート1枚羽織っただけで、あの極寒の世界を歩いて来たのが不思議な話ではある。
感覚的にはちょっと寒い程度だったけど、ビキニの上にコートを羽織っただけでそこまで大丈夫になるはずないし。
だから脱ぐ分には構いはしない。ビキニは下着と違って、ある意味見せるための服装だから。
けれども、国王の横で鼻の下を伸ばしながらこっちを値踏みしている文官さん達には絶対見せたくない!
だいたい、視線がやらしいのよ。
横目で見ていれば判らないと思ってる?
甘いのよ。
女ってのは、男の視線が自分のどこに集まっているか分かるんだからね!
「……しかし《キャットノウズ》は、神様から貰った力に対して、行わないと使命が分からないと言う制約がございまして」
「つまり……何ですか。私がビキニで炎を出さないと、私の使命が分からない、と?」
「はい。恐らくは」
ガクリ、と項垂れる私。
まさかこんな城で、こんな親父共達に見られながら、コートを脱いでビキニを見せないといけないのに!
なんか、初めからビキニを見せるよりも恥ずかしい! 夏の海だったら別に何ともないんだけれども、こう言った所で脱ぐのって結構勇気がいるよね! ね!
「「「「「ストリップ! ストリップ!」」」」」
そこのエロ親父共! ストリップ連呼しないでください!