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極寒なのにビキニ一枚  作者: アッキ@瓶の蓋。


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正しいタルへの入り方

『そのジャック、実はとんだ食わせ物かも知れないわ』


 宿屋にて、海賊のジャック・オータンの事を話した時、ティンロガーさんはそう言っていた。

 恐らくだけれどもティンロガーさんの中ではどうも、オータンと言う名前、もしくは海賊のどちらかに対して信頼のおける所があって、それ故に『とんだ食わせ物』と言う事を言ったのではないだろうか?

 どっちかはあの時の台詞だけでは、残念ながら分からないけれども。


(でも……)


 イエロドックのリキュールグレイノリーにて、ジャック・オータンさんと待ち合わせしていた私は、スケアクロウさん達、3人を連れて待ち合わせ場所に行ったのです。

 ……行って、ちゃんと会ったのですが。


「あぁ! まさか4人も連れて来るだなんて! こんなに人と話すのなんて、何年振りなのだろうか! うぅ……生きてて良かった」


 目の前で人と喋れて号泣しているこの男に、そこまでの価値を見いだせないんですが?


「これが……あの。ウフフ……♪ 可愛いわねぇ♡」


 あの……ライオネルさん? 笑っていないで、ね。

 海賊、ジャック・オータンの話をして、『とんだ食わせ物』と言った意味を教えて欲しいんですが。

 気になって仕方がないから、早く!


「うぅ……酒臭くて吐き気が……」

「大丈夫ですか、ライオネルさん? 全く……だからもう少し、横になっていた方が良いって言ったのに」

「大丈夫です……騎士として……《マヨイビト》の……ために……ううっ……」


 相も変わらずライオネルさんはと言うと、吐き気と戦っているようで、その横でスケアクロウさんが擦っている。

 ……ライオネルさん、大丈夫かな?


「ううっ……女の子が3人も同じ場所で! しかも同じ目的を持って集まっているなんて! こんなの初めて!」


(3人!?)


 この場には女子は、私と、ライオネルさんしか居ませんが!?

 それともジャックさんの眼にはスケアクロウさんか、それともティンロガーさんのどっちでしょう?

 多分、後者だと思うけれども(心の中で)言っておきます、その人はただの男性、しかもオカマですから!


「まぁ、当初の計画よりも人数が若干、多いけれども、大丈夫! さて、気になっている人も居るだろうから、そろそろ侵入経路を教えようじゃないか!

 俺達のリキュールグレイノリーへの侵入手段は……あれだ!」


 そう言って、ジャックさんが指差したのは、


「……堀?」

「そう! リキュールグレイノリーへの侵入を困難にしている一因であり、なおかつ侵入への道となる! 

 堀の中を見て欲しい、堀には水が流れているように見える。しかし、あれは酒であり、なおかつ泳げない酒の海だ」


 そう言ってジャックさんが説明している通り、堀にはこんな寒いのにも関わらずに水がたんたんと流れている。

 ジャックさんが懐から木片を取り出して、風に運ばせるようにして木片を堀の水の中へと落とすと、堀の中に落ちた瞬間に、木片が真っ赤な燃え盛る炎となって発火する。


「――――――今、木片が燃えたように、このお堀の中の水はこのリキュールグレイノリーの主である酒蔵のウィンキー。

 その主が飲むためだけに作られた、アルコール度数100%以上の酒。液体の状態では何かがほんの少しぶつかっただけで発火するくらい燃えやすい酒、《ウィンキーレル》があのお堀の水の中には多く含まれており、なおかつ泳ぐ事も、船を出す事も出来そうにない。だから、リキュールグレイノリーではこの水路からの侵入を予期しておらず、出入り口だけ守ってれば良いと思ってる」


 確かに……ちょっと木片を落としただけで燃えるような海では、泳ぐのも船も出来そうにない。

 ここからの侵入は難しそう……と言うか、出来なそう。


 しかし、ジャックさんはと言うと、今度は別の水色の球体を取り出す。


「だから侵入するとしたらここだ。液体状態ではちょっとしたショックで燃えてしまうが、凍ってしまえば固体で燃える事も……ない!」


 そう言って水色の球体をジャックさんはお堀の中へと放り投げると、不思議な事に水面が瞬く間のうちに凍りついて行ってしまった。

 そりゃあもう不思議なくらいで、まるで魔法のように水面が凍りついてしまったのである。


「よっ、……っと!」


 そしてその凍った水面の上にジャックさんが降り立ったが、さっきの木片と違って水面へと降りましたがジャックさんが燃える事はなかった。


「ここから水路を通って、リキュールグレイノリーへと侵入する! ただしこちらは、こちらの用があるので手伝えるのはこれまでだ! では、アディオス!」


 ジャックさんは凍った水面を走りながら、水路の穴を通って中へと入ってしまわれた。


「さっき、ジャックさんが投げ入れた球は一体……」

「さぁ……恐らくは水面を凍らせる魔法がかかった球だとは思いますが……あそこまで簡略化した魔法は少ないですし……。それに……」


 と、そう言って考え込むスケアクロウさん。


「ともかく考え込んでいるばかりじゃあ、いけませんわよ♡ 男は度胸、そして女は愛嬌♡

 男は来たるべき時まで待ち、そして女は来たるべき時に……向かうのよ!」


 そう言いながら、ティンロガーさんはジャックさんと同じく、氷の上へと降り立って水路の中へと向かっていかれる。

 スケアクロウさんは、ライオネルさんと共に氷上の上へと降りて、そのままティンロガーさんの元に行ってしまった。


「ほーら、ドロテアちゃんも早く! 早くぅ♡」

「は、はいっ! い、行きます!」


 私もまた3人について行って氷上へと降り立って、ティンロガーさん達の方へと走っていくのでした。


 ……私、不法侵入しているんだけれども、ここの主を殺さないと使命を果たせないんですよね?


「はい、そうですよ♡ 大丈夫、ドロテアちゃんは間違ってないから」


 ……なんか丸め込まれているような気になりながら、私はそのまま中へと入って行った。

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