海に行く話(塗るとあったかくなる薬)
ユーリが階段を降りてくる音はいつも通り激しい音である。
違いは、その激しい動きから揺れる爆乳がほぼ丸出しであることだ。
「なんだその珍プレーな格好?」
フランに驚かれたユーリの恰好は、上下赤いラインの入った白のビキニである。惜しげもなく肉付きの良い太腿と胸を出した姿は見る者の目を惹きつける。
「博士、海に行きましょう」
「なんで?」
「そりゃあ決まっているでしょう!!」
と大きな声を出してユーリは徐に胸を強調するポージングや大胆に足を開くポーズを取り始める。
「このダイナマイトバディを曝け出さずにどうしますか!? せっかくあるものは見せつけないと損でしょう! イヒヒヒヒ!!」
「じゃあ勝手に行って来い」
「そんな冷たいこと言わないでくださいよ。一人で行くなんて糞ボッチな真似できるわけないじゃないですか」
「つってもお前、今何月だと思ってんだ? 冬だ、冬。誰もいねえよ、曝け出すだけ無駄だ」
フランの言うことが百パーセント正しいのである。もうこの議論はやめよう。
「……で、なーんで俺はここに来ているんだろうな」
ざざーんと波が打ち寄せる音が虚しく響く。灰色の空は視覚的に、厳しい潮風は体感的に、温度を機能的に奪っていく。
「さ、さ、さ、サム、サムミッ! なんですかこれ!」
研究所では大胆にポーズを取っていたユーリも、今やガタガタと震えて縮こまり、広大な海に臨むことしかしなかった。
「満足か? なら帰るぞ」
「ま、ま、満足なわけないじゃないですか! こういう時は……これ!」
ユーリは大きな胸の間から透明の薬が入った試験管を取り出し、それを体に塗り出した。
「むむむ、こういう時は『ねぇ~ん、塗ってよぉ~ん』と男を誘うものですが、寒すぎてそれも憚られます」
「なんだその薬?」
「塗るとあったかくなる薬です。ほらもうポカポカしてきましたよ」
携帯用カイロみたいなものか、とフランは適当にあしらって、やっぱり気にしなかった。
「じゃあ帰るか」
「待ってくださいよ、せっかくですから芸術にうつつでも抜かしましょうか」
フランは心底面倒臭そうな顔をした。フランは芸術などとんとわからぬ。ユーリの考えもわからぬ。
「一人でやっとけ」
「何言っているんですか! ってかそもそも海に来たんですからあなたも脱ぎなさいよ!」
「何言ってんだよ、俺水着なんて持ってきてねえし」
「裸で泳げばいいでしょう! 誰も見られないし!」
と言いながらユーリはフランのズボンに手をかけ始めた。
「ちょ、やめ……」
「よいではないかよいではないか!」
「お前殺すぞ!」
「たとえこの命燃え尽きたとしてもぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!」
しらなみの
青海にのぞみ
でるち○こ
ユーリ
これはしらなみの、という枕詞が青海に繋がり、白と青という情景の描写が効果的で、またち○こという体言止めなど多くの技法が使われた非常に優れた……? いや優れてない、むしろ非常識、過去最低の俳句と言っても過言ではない、下品、ゴミ、屑、狂人から出たカスである。
パンツをはき直したフランはユーリを殴って失神させ、研究所に戻りましたとさ。
ちなみに塗るとあったかくなる薬はメラヘンに渡された後、国で正式に採用された。
北方に軍を動かす時、寒さでかじかむ体を効果的に温められるためである。
手袋やカイロでは温めにくい体の細かな部分まで温められるため、銃を撃つものにとったら特に効果的なものであるらしい。
たまには短く楽しくって感じでね。あと水着回必須だし