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大陸物語~オクトリス国編~  作者: 時槻 翡翠
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妖精の国 2

村長の館の中は沢山の部屋があり、使用人も数人いた。だが、私達が近くに寄ると何事か思い出したように居なくなる。

「あまり気にしない方が良い」

クリスに言われ、気を取り直して村長の後について行った。

通された部屋は広い部屋で会議にも使えそうな応接間になっていた。

「どうぞおくつろぎください」

村長に促され、私とクリスがソファーに座り、ラルクとリルは私達の両隣に立った。

私の横に立ったリルが気づかれないようにこっそりと「何があっても良いようにです」と言った。

確かに警戒はしておいた方がいい。昨日の事もあるのだ。

村長はソファーに座るなり平伏すように頭を下げた。

「本当に申し訳ございません」

先程までの威厳など何処かに置き忘れたかのような謝り方だった。

「まあ、頭を上げてください。話しもできませんから」

クリスが苦笑して、促した。

「しかし……」

何か言おうとしたが、クリスの顔を見るなり言葉を失っていた。

私は横にいて良く見えないが、小さく悲鳴が上がる程度には怖い顔だったようだ。


しばらく近況を聞いていた。

村長が言うには私の敵対勢力にあたる宰相の派閥がこの村近くまで押し寄せて来たらしい。それを知った若者たちが村を守るために自衛をかって出たら私達と出会したということだった。

「本当に申し訳ありません」

村長はまたひれ伏して謝った。

「まあ、誤解も解けたことですし、それくらいで話をしましょうか」

クリスが苦笑して、話を促した。

「現在は我らの術で何とか隠しておりますが、時間の問題でしょう。できるなら妖精の国まで案内しなければなりませんが、一人でも欠けると宰相の手の者に見つかる可能性があります」

村長は恐縮して言った。心なしか手が震えているようだが、見なかった事にした。

「場所さえわかればなんとかなります。案内はしなくても良いですよ」

クリスの穏やかな口調に村長は明らかにホッとしていた。

「宰相の手の者の中に数名、かなり腕のたつ者がいるらしい。確かに時間はなさそうですね」

クリスはおもいだしたかのように付け加えた。

「この村は私達のものです。守ってみせます。新しい女王陛下に誓いましょう」

村長は私ににこやかに笑って深々と頭を下げた。

「ありがとうございます。私を女王と言ってくれたのは貴方が初めてです。私からのお願いは一つです。どうか誰一人欠けることなく、村を守って下さい」

私はせめてものつもりで言った。そう言葉をかけることしか私には思い付かなかった。

クリスは王子のような降るまいができているのに、私はこの国の女王なのにその振る舞いすらおぼつかない。

溜め息ばかりが私の口から零れ出す。

「…ティア、疲れているみたいだね。休ませて貰えるところを教えて下さい」

クリスは私の方をチラリと見てからそう言った。

私はクリスを見てから回りをさりげなく見回した。

「それは気づきませんで、申し訳ありません。」

村長はあわてて近くにいた使用人に声をかけて、案内するように申し付けた。


案内された部屋は二階のゲストルームで、私とリル、クリスとラルクが一部屋ずつ案内された。

「私が同じ部屋で良いのでしょうか?」

リルは恐縮して私に聞いてきた。

「別に良いじゃない。貴女と一緒の方が私は安心できるわ」

私は本気でそう答えた。

不意にドアが叩かれた。

「ティア、良いかな?」

クリスが開かれたドアの隙間から顔を出して聞いた。

「どうしたの?」

中に入るように促しながら尋ねた。

クリスは無言でリルに下がるように目で促した。

「聞くのは俺の方だと思うけど」

リルが出ていき、ドアが閉まったのを確認してからクリスは苦笑して言った。

「クリスには隠し事もできないね」

私はクリスから瞳を反らせて、窓の外を見るともなしに見た。

けれど、沈黙に耐えられなかったのは私だった。

「私はクリスのようにできない。どうしたら貴方のようにできるの?」

心の底から絞り出すように叫んだ。

「少し落ち着こうか」

クリスは冷静に私を宥めた。

その行動が何だか腹立たしい。クリスを睨むのを私は忘れなかった。

「…ごめん」

完全に八つ当たりだ。自分ができないのを人のせいにして、自分を守ろうとしている。

「ティアが謝る必要はないよ。ティアはティアらしくしていれば良いのだから」

クリスはいつも優しい。

「それではいけないの。私は仮にもこの国を治める女王なの。許されないわ。国を守ることが私の使命で、良い治世を行うことが私の義務だもの」

私は教えられた通りの答えを口にした。

「ティア、君の本当の気持ちはどこにあるのだろうね」

私の、本当の、気持ち?

クリスは私の瞳を真っ直ぐに見て、動じもしない。

やっと続き書けました。

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