入学式
私立鷹月学園は家から15分程度の場所に位置する。駅からも近く、女子の制服が可愛いという理由でも結構人気である。
制服が可愛いと自ずとレベルの高い女の子達が集まるので男子は青春を謳歌すべく集まってくる。
自由な校風で、生徒に自治の大半を任せているので何をしても大概許される。
それだけ緩くて大丈夫なのか?と思うやつもいるかもしれないが、結構偏差値が高いので不良みたいな奴はいない。だからそんな緩い校風でも大丈夫。
まぁ、俺は別に可愛い女の子目的でこの学校に決めたわけでない。ただ家から近かったからでしかない。
「そういや愛神。周りの視線とか大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないからお前の背に隠れてるんだろ?」
帝の背に隠れてながら小声で言う。もう学校に近いので鷹月の生徒がちらほらいる。
昨日よりは大分マシになったが怖いことに変わりない。ただし男共の下心満載の視線には未だに泣きそうになるが。
「お前はなかなかに美少女だから視線を集めるよなぁ」
「そうなんだよなぁ、ってちょっと歩くの早いよ」
小柄なこの身体だと歩幅がとれず、長身の帝について行くのはなかなかキツイ。
それに俺の乙女の神域を守るのがこの防御力の薄い布切れ一枚なので自然と歩幅が短くなる。
「おっと、悪い」
帝が歩くペースを落してくれたので帝の上着の裾を握り、背中にピトッとくっつくようにして歩く。
「なんか妹ができたみたいだなぁ」
「それだとお…私は兄離れ出来ない妹って感じなのかなぁ」
「まぁ、そう見えなくはないが……あれ?そういや神戸はどうしてるって設定なんだ?」
「あ〜、なんか海外への留学にが急に決まった兄の代わりに病院で療養中だった妹の私が来るってことらしいよ」
「なんかありきたりだな」
「そう言うなって」
程なくして学校に着いた。クラス割を確認しに行かなきゃ。
「……帝と同じクラスかなぁ…不安だ…」
「俺もだ………」
誰も知り合いの居ないクラスなんて絶対に嫌だ。どうやら帝も同じみたい気持ちみたいだな。
「よし!なら俺が見てきてやる。お前は人混みが苦手なんだろ?」
「えっ、ほんと?」
「あぁ、だからちゃんとここでまってるんだぞ?どっかフラフラ歩いて行くなよ?」
「子供じゃないんだからそんなことしないよ!」
ハイハイとちょっと笑いながらクラス割が貼ってある昇降口の近くの掲示板のほうに歩いて行く。
………あ、帝が戻ってきた。あ、あれ?なんか凄く残念そうな顔してるんだけど…
まさか………!
「…………」
「あ、帝!ど、どうだった?」
帝は何も言わず、悲しそうな顔をするだけ。この様子をみるに一緒になれなかったか……
……凄い不安だ…周りに誰も知り合いがいないなんて…
俺が泣きそうになっているのに気づいた帝は俺の頭をポンポンと叩く。
「良かったな。一緒のクラスだったぞ!」
帝は嬉しそうに言った。は?いや、さっきまでの悲しそうな顔はなんで?あれか?俺をからかうためだけに演技してたのか⁈な、なんて奴だ…!
「さっきまでの悲しそうな顔はなんだったんだよ⁉」
「えっ?あぁ、それはな……なんかさ、俺がクラス割りを見ようと人混みに近づいたらさ……」
再び悲しそうな顔をして無駄に溜めをつくる。な、なにがあったんだ……?気になる……
「モーゼの滝も真っ青な勢いで人混みが割れてな………」
「…………」
なにも言えなかった。
俺達は校舎に入り、自分達のクラスがある3階に向かっている。すれ違う度に先輩達や新入生が俺を見てくる。さっ、と帝の後ろに隠れて視線を逃れる。必然的に俺が隠れた帝に目が行き顔を見た瞬間凄い勢いで顔をそらす。あ、帝がちょっと傷ついたような顔してる。
そんなことが10回以上に渡り繰り返された頃に俺達のクラスである1組に着いた。
教室に入ってみるとまだあまり生徒は来ていなかった。
ラッキーと思いながら窓際1番後ろという絶好のポジションに座る。帝はその隣に座る。
「少し早く来すぎたか?まだほとんど来てないな」
「でもそのおかげでこんな絶好のポジションが取れたんだから良しとしようよ」
「まぁそうだな」
入学式まではまだ時間があるので帝と駄弁ってる。
「あぁ、それしても不安だよ………ちゃんと友達できるかな…?」
「俺のほうが不安だ。お前は可愛いから良いかもしれないが俺は今朝の人混みの件とここにくるまで件で自身が喪失した」
「…………まぁ大丈夫だよ!ぼっちになっても私が友達だから!」
「ぼっちになることは決定事項なのかよ…」
「あ、いやそういうわけじゃ……」
話して気がつかなかったがもうほとんどの生徒が来ていた。だが、皆揃って俺達のほうを見てヒソヒソ話している。
な、なんだ?なんか変なとこあったのか…?
帝も気づいたのか皆のほうに目を向ける。
……バッと凄い勢いで目を逸らした。
帝はもう慣れたわ、なんて言っている。
するとガラッと教室の扉が開き担任らしき先生が入ってきた。なんか熱血!って感じの先生だなぁ。
「もうすぐ入学式だから体育館に移動してくれ!」
帝と一緒に体育館に向かう。
体育館に並べてあるパイプ椅子に座り、入学式が始まった。あ〜……眠い…
長い入学式が終わって教室に戻るとホームルームが始り、自己紹介をすることになった。
「え〜と赤間 茂です。趣味はーーーー」
出席番号の1番から始まった自己紹介。
自分の番号が近づく度に心臓の鼓動が早くなる。
「や、ヤバイ……凄い緊張してきた…!」
「大丈夫だって。ほら、深呼吸とかしてろ」
帝に言われたとおりに深呼吸して緊張を解そうするがあまりを意味はない。
「よし、次か。姫乃!壇上に上がってくれ!」
遂に俺の名前が呼ばれた。ガタッと立つと皆の視線が集まる。
ヒッ!と声が出そうになるのを気合で抑え、震える足で壇上に向かう。
壇上に立つとおおっ!と男共の野太い声が聞こえる。そして下心の含んだ目で俺を見てくる。
もう泣きそう……怖くて怖くてしょうがない。
「ひ、姫乃、……あ、……愛神…で…す。よ、よろしくお願いします………」
最後のほうは若干涙声になってしまったが言い切った………
よくやった俺。
「姫乃はついこの間まで療養中だったそうだ。仲良くしてやってくれ!」
自己紹介の終えた俺は自分の席に戻る。
「よく頑張ったな、偉いぞ」
「上から目線なのが気に入らないけど頑張ったよ………」
隣に座っている帝がねぎらいの言葉をかけてくれる。
もう2度あんな体験したくない。
最近文字数が少ない気がするのは気のせい?(; ̄ェ ̄)
*修正しました。