愛神の誕生
ここは……どこだ?目を覚まして周りを見ると慣れしんだ風景が見えた。俺の部屋か。
なんで部屋にいるんだ?確か俺はナンパ野郎に無理やり連れて行かれそうになってーーー!!
ショッピングモールでの出来事を思い出し、身体が震え始め、嫌な汗がブワッと出てくる。恐怖で頭が埋め尽くされる。
必死に落ち着こうと自分の身体を抱くように小さくなる。
10分くらいするとだんだん収まってきた。
もうあの事を思い出すのはやめよう。
そう思っていると1階から帝の声が響いてきた。お袋と帝はリビングにいるのか?
まぁ、声がしたんだから十中八九いる。
1人でいるのは怖いので1階に降りてリビングに向かう。
リビングに入ってみると帝とお袋が先に夕飯を食べていた。
「あら、神戸。もう大丈夫なの?」
「あ、うん。もう大丈夫だけど…腹減ったから俺も食べていい?」
今日は昼ご飯食べてないから凄い空いてる。
「今よそってくるからちょっと待っててね」
お袋が立ち上がってキッチンのほうに行ったのを見ながら帝の隣の椅子に腰を下ろす。
「おい神戸。本当に大丈夫なのか?」
帝は心配性だなぁ。別に何ともないのに。
「あぁ、大丈夫だって」
「……そうか」
少し安心したようだ。
……なんかやけに優しいな。
「ほら、早く食べちゃって」
今日はカレーか。俺結構好きなんだよな〜。
腹が減っていたので夢中で食べていたら、玄関が開く音がした。
親父か?いや、飛鳥もいないみたいだし飛鳥か?まぁ、別にどっちでもいいが。
ガチャッとリビングのドアが開いて飛鳥が入ってきた。
「お腹空いたーー!おっ!今日はカレーじゃん!ラッキー♪」
「食べるのはちゃんと手を洗ってからにしなさいよ?」
「わかってるよー」
飛鳥が洗面所に行った後、前を向くとお袋が俺をみていた。
「どうしたの?」
「いやね、今日はずっと神戸神戸って読んでたけど学校だとその名前使えないわよね?」
「あ」
お袋のその一言で姫乃家+帝で《神戸君の緊急お名前会議》が開かれた。
夕飯を食べ終わった後、飛鳥を加え俺の新しい名前を感える事に。
「どうする?」
「いや、どうするって言われても…希望を言えば俺の名前を少し残して欲しいかな」
「神と戸ね〜…」
みんな思い思いに考えてくれているようだが一向に意見が中々出てこない。
「あっ!なら愛神ってどうかな?お兄ちゃんの神を残して」
おっ!飛鳥のその名前結構気に入った。
「俺はその名前気に入った!」
「なら今日から神戸改めて愛神ね」
「いい名前じゃないか」
お袋や帝も良いと言ってくれているので俺の新しい名前は愛神に決まった。
「あとは学校だけど…学園長とお母さんはまぁ、古い知り合いだから話をつけおいたわ。愛神は神戸の親戚として学校に行ってもらうからね」
お袋は学園長と知り合いなのか。よく男が女になったなんて突拍子もないことを信じてくれたな。
「あ、うんわかった」
「それと愛神」
「なに?」
「学校では口調とか歩き方とかに注意しなさい。スカート履いてガニ股で歩くなんてことしたら愛神の可愛らしいパンツを世の男共に見せることになるわよ?」
げっ、そうだった…面倒くさいなぁ。
ガニ股で歩くなとかあぐらをかくなとかなるな。あ、口調はどうすればいいんだ?
「なぁお袋。口調はどう変えればいいんだ?」
「まずはそのお袋っていうのを直しなさい。お母さんと呼べばいいわよ。できればママと呼んでもいいわよ」
「お母さんでお願いします」
お母さんか……なんか恥ずかしいな。
まぁしょうがない。女の子が母親のことをお袋なんて言うのは俺は見たくないし。
「あとは言葉を柔らかくするか、難しいなら敬語で話せば良いと思うわよ」
柔らかくするってどうやんだ?あ、今のどうやんだ、をどうするの、に直す感じか?
「あと、俺っていうのはやめなさい。一人称は‘私’にしなさい」
私、か。なんか慣れないなぁ。まぁ心の中でも変える必要はないか。
「わかった」
「まぁ、ずっとそんな調子で喋ってると疲れると思うから家の中なら普通に喋っていいわよ」
家では普通に話していいのは嬉しい。
「わかったよ。お母さん」
「ん、よろしい」
お袋は満足げに笑っているので合格なのだろう。
「あ、俺はそろそろ帰ります。時間も遅いので」
時計の針は22時をさそうとしている。
確かにもう遅いな。明日は学校だし早めに寝るつもりなのか?
「あらそう?ならさっきのことよろしくね」
「わかってますよ」
さっきのこと?お袋と帝はなんのことを言ってるんだ?
「じゃあ、また明日な神戸….じゃなくて愛神。明日は迎えにくるからちゃんと起きてろよ?」
「えっ?あ、うん。迎えにくんの?まぁいいけどさ」
「ほら、愛神。言葉遣いがちょっと荒いわよ」
あっ、ヤバイヤバイ。学校ではやらないようにしないと。
「ははっ、じゃあな」
帝はそんな俺とお袋のやり取りをみて少し笑ってから帰って行った。
あ、そういえば。
「お母さん。制服はどうするの?」
「あぁ、制服?それならもうあるからあとでお母さんの部屋に取りにきなさい」
いつの間に制服買ったんだよ………。
「わかったよ」
◇ ◇ ◇ ◇
お袋の部屋に制服を取りに行ったあとは部屋に制服をおいて風呂に入ろうとしていた。
「大丈夫、大丈夫。自分の身体だ。大丈夫」
自分自身に暗示をかけるように何度も言いながら風呂に入る。
しかし、体を洗わなきゃならいので触ってしまうのだが……
フニョン
「ウヒャ!」
胸に手が触れる度に奇声をあげてしまう。
俺は無心になりながら体を洗う。
そして湯船に浸かり今日の疲れを癒す。
今日は凄く濃い1日だった。突然女になったりして疲れが凄く溜まっている。
ゆっくり湯船に浸かりホクホク気分で風呂から出て、また無心になりながら白いレースのブラとパンツを履く。
なんか女物のパンツってトランクスを違ってフワフワした感触で肌にピトッと張り付くような感じ。
部屋に戻りベッドにダイブする。
本当に今日は疲れた………
寝っころがっていると強烈な睡魔が襲ってきたので俺はその睡魔に身を任せた…。
やっと明日から学校篇に入れる(;´Д`A