魔王城で働く人の対談(番外編1)【拍手再録】
ユイ「今回は、番外編。魔王城で働く人に、魔王様について語ってもらおうのコーナーです。司会は、いつも通り、魔王様の家庭教師として働いている私が行っていきます。この番外編は次回も引き続き行い、次回はフレイ君に司会を任せ、勇者パーティーメンバーに勇者様について語っていただくことになっています」
ハティー「ねぇ、ユイ。私が喋っちゃっていいの?やっぱりメイド長とか、そういうヒトの方が良くない?」
ヴィリ「俺も同じくそう思うんだけど」
ルーン「そうですねぇ。その辺りどうなんですか?賢者様」
ユイ「大人の事情というものがありましてね、やっぱり若い美人メイドとかイケメン調理師と銘打った方が皆読んでくれるんですよね」
ルーン「そうですね。メイド長も調理長も年は経ているので、若いという言葉はつかえませんね」
ユイ「はい。大人の魅力でクラクラという方法もありますが、今回はあえて若い組で集めてみました。ええ、世の中にはおっさん受けとかもあるので何とも言い難いのですが」
ヴィリ「オッサンウケ?……まあ、男は、若いねーちゃんの方が良いって話はあるもんな」
ユイ「まあ、そう言う事です。では、早速魔王様について語ってもらいましょう。誰から――……、では満場一致で皆視線を集めたルーンさんからどうぞ」
ルーン「私ですか?」
ユイ「はい。ルーンさんは小さい時から魔王様の事を知ってみえるんですよね」
ルーン「はい。はじめてお会いしたのが魔王様が3歳の時でしたので7年ほどの付き合いとなっています。その頃から、魔王様は聡明な方でした」
ユイ「おお、早速の親ばか発言ありがとうございます」
ヴィリ「おまっ、正直すぎだろ」
ユイ「えっ?何がですか?親ばかは褒め言葉ですよ?いいですよね、親ばか。美味しすぎです。では、気を取り直して、魔王様の普段の仕事の様子を教えて下さい」
ルーン「一番多いのは書類業務でしょうか。一日の半分はこちらに費やします。残りの時間は、勉学に励まれ、剣術なども欠かしません」
ユイ「想像以上に忙しそうですね。お体を壊されないか心配です」
ルーン「健康管理には気を付けておりますし、魔王様の種族は丈夫な方が多いので大丈夫かとは思いますが、そうですね。魔王という業務は精神的な負担も大きいので。賢者様。どうぞ、魔王様の事をよろしくお願いします」
ユイ「はい。できる限り、楽しく充実した授業ができるように頑張りますね」
ハティー「……あ、なんだ。そういう意味ね!そうかそうか。あー、ちょっとびっくりしちゃったわ」
ユイ「ん?何かびっくりする事ありましたか?魔王様って、本当に大変ですよね。できたらその負担を減らしてあげたいものです。まだ幼いですから」
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ユイ「では続きまして、メイドの皆さんの魔王様像を聞いていきたいと思います」
ハティー「お手柔らかにしてね」
ユイ「はい。では、魔王様の印象を教えて下さい」
ハティー「印象というか、恐れ多くて語れないというのが正直なところかしら。雲の上の人みたいなものだから。とくに、メイドのほとんどは、同じ城の中にいるのだけど、魔王様を見たこともないの」
ユイ「なるほど。もしかしたら、気が付かない間に会っている可能性もありますけどね」
ハティー「まあ、稀に魔王様の外出時にちらっと遠目で見る事が出来た子もいるわね。そういう日は、いい事が起こると言われているわ。でも普通は、魔王様にお会いしたら頭なんて上げていられるわけがないから、やっぱり見る事は叶わないのよね」
ユイ「なるほど。メイドは多いですが、ほとんどが魔王城の雑務担当で、魔王様付じゃないですもんね」
ハティー「そうよ。魔王城は、魔王様以外にも多くの魔族が住んでるもの。城下町で部屋を借りてる人もいるし、大きな屋敷を持つ貴族も働いているけれど、そうじゃなくて、魔王城で住み込みで働いている者もいるから。そんな人たちを支える、縁の下の力持ちが私たちよ」
ユイ「そうですね。兵士の方の洗物とか、すごく多いですものね。では、魔王様の身の回りのお世話をするメイドの方はどのような方がみえるのですか?」
ハティー「私みたいな地方中流貴族じゃなくて、大貴族のご令嬢が花嫁修業として勤める事が多いわ。ただ、稀に、とても優秀なメイドがその業務につくこともあるわよ。やっぱり、質は大切だもの。今は亡き魔王様の御母君のメイドもそう言う優秀なメイドだったと聞くわ。一説では、友人だったそうで、今のメイド長という噂もあるわね」
ユイ「そうなんですねー……って、友人だったんですか?」
ハティー「噂よ、噂。まだお互いが、妃とメイドになる前に付き合いがあったのは本当みたいだけどね」
ユイ「なるほど。それは面白い噂ですね。ルーンさんは知ってみえましたか?」
ルーン「ええ。魔王様の御母君とは話した事がありましたから。少し貴族としては変わった方でしたから、メイド長と仲が良かったというのも変な話ではないですよ」
ユイ「そうなんですね。では、今度は魔王様の体を作る源。厨房での魔王様像についてヴィリに話してもらいましょう」
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ヴィリ「いや、俺のところもメイドと変わんねーよ?やっぱり魔王様は雲の上の人みたいなものだしな。俺らもメイドと同じで魔王様以外の食事もまかなっているわけだし」
ユイ「確かにそうですね。特に厨房の方は、厨房から動くことがないから、他部署とのつながりも薄いですしね。じゃあ、魔王様の食事で気を付けている事はありますか?」
ヴィリ「そんなの、毒を入れられない事だろ」
ユイ「……なんだか、想像と違うデンジャラスな言葉が聞こえてきました。えっと、味とか見た目とかでなく、毒を入れられないようになんですか?」
ヴィリ「もちろん、味や見た目も気にするようにはしているさ。でも、一番大切なのは安全性だろ。一応魔王様が食べる前に毒見役のメイドもいるけど、そいつが死んでも寝覚めが悪いからな」
ユイ「えっ。メイドが毒見してるんですか?」
ヴィリ「そうだぞ。歴代の魔王様も毒を盛られた事があるからな。細心の注意が必要なんだ。世の中色々な考えの奴がいるからな」
ユイ「なるほど。暗殺なんて、私の国だと中々起こらない事なので、ごはん一つ食べるのも命がけなのにはびっくりです。ところで魔王様は好き嫌いとかあるんですか?」
ヴィリ「まだ口がお子様だからな。甘いものが好きみたいだ。オレンジジュースとかよく部屋に運ぶな。逆に苦みや癖の強い食べ物は得意ではなさそうだな。野菜類もあまり食べられないし」
ユイ「ああ。そうなんですよね。もっと魔王様は野菜を食べるべきだと私も思います」
ヴィリ「でも最近は、マヨネーズで野菜を食べられるようになったぞ?ユイのおかげだな」
ユイ「それは良かったです。食育が必要そうな食べ方をされていると、将来が心配なので。やっぱりデブメンはモテませんし。魔王様には今後も食生活などは気を付けてもらいたいものです」
ヴィリ「せめてそこは病気にならないようにと言っておけよ。デブメンって、ビジュアルの問題だけじゃないか」
ユイ「ビジュアルは大切ですよ。魔王様は必ずかっこよく成長されるとは思いますし、運動量もあるのでたぶん若い時はあまり太らないと思うんです。でも、中年以降も痩せていられると思ったら大間違いです。食べ物は体を作る源ですから。それなりの食生活だと、それなりの体になります。将来、奥さんになる方や子供に、パパキモイとか言われたらと思うと……」
ヴィリ「言うなよ。マジで言うなよ。お前が正直者だとは知っているが、魔族領の平穏を守る為に絶対言うな」
ユイ「言いませんよ。というか、私は部下の事ではなく、奥さんの事を言ってるんですってば。やっぱり、お腹がぽよんでは絵面が締まりませんし。ねぇ、ハティー?」
ハティー「私に回さないでよ。ルーン様、何か言ってやって下さい」
ルーン「賢者様が魔王様の食生活を管理すればいいだけの話じゃないですか?それも、ある意味仕事でしょう」
ユイ「あれ?それって、家庭教師の仕事なんですか?まあ。確かに、食育という学問もありますしね」
ヴィリ「ハティー、ツッコミはするなよ。もう流せ」
ハティー「……努力はするわ。ユイが、それでいいなら」
ユイ「何がいいって言うんですか?でも世界平和のためにも、ビジュアルは大切ですしね。では、いい時間になってきましたので、この辺りで閉めたいと思います。では最後に1人1言お願いします」
ルーン「私の力など些細なものですが、魔王様の為に身を粉にして働き、支えていきたいと思います」
ハティー「縁の下の力持ちとして、これからもメイド一同頑張ります」
ヴィリ「とりあえず、魔王様の安全をこれからも守っていくつもりだ」
ユイ「はい。皆様今日はありがとうございました」