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三葵・挑戦

私は、卒業したら必ずパリのルーブルへ行くと決めていた。


友人の南向愛美と卒業旅行へ向かった。素晴らしい…やはりルーブルに来てよかった…


心からそう思った。愛美とは別行動で、大好きな絵に囲まれ私はとても楽しかった。


ふと前に向くと、外人の仲の良さそうなカップルが見つめあいながら何か囁きあっていた。


少し恥ずかしくなって目をそむけてしまった。


(私もあの人とこんな風にデートをしたかった。)


そんなことを考えてまた照れた気持ちになって恥ずかしくなってしまった。


ルーブルはいくつかの部屋に別れている。私は次の部屋へ行こうとしたその時だ。


「佐々木?」

聞き覚えのあるテノールの声…


振り返ると、あの人がいたのだ。

一瞬声がでなかった。先輩もそのようだった。


「すごい偶然だね。卒業旅行?」


驚きと嬉しさで涙がでそうだ。もう二度と会えないと思っていた。


「はいっ。愛美と来てます。先輩はどうして?」


先輩はパリでアトリエをひらいていると言った。年間パスポートがあるからよく訪れるとも言った。


偶然会えたんだからお茶でもしないか誘いたいけど、相手がいる旅行中じゃ申し訳ないねと言われた。


ルーブルは明日一人で別行動したらいいし、愛美との約束までまだ3時間あったので大丈夫だと告げた。


私たちは、ルーブルをでてシャンゼリゼ通りの近くのカフェに入った。


「何にする?」


胸の高鳴りがおさまらない。正面に座った先輩の顔もよくみえない。


「じゃあ、ダージリンお願いします。」


先輩と二人きりになるのは、実は初めてだということに気づきさらに焦ってしまう。


先輩は、フランス語で注文をしてくれた。


「旅行楽しい?」


「はい、すごく楽しいです!」


明日は何処を巡るとかそんな表面的な会話を繰り返す。


(本当はもっとききたいことがあるのに…)


「ところで、卒業後の進路はどうするの?」


「沢村先生にお世話になるか考えています。先生が来ないかと言ってくださっていて。」



ちらっと先輩を見ると窓をみやっている。


(あれ?先輩、退屈してるのかな。)


「せ、先輩はいつからこちらへ来たんですか?」


「ああ、幸子の知人の紹介でね。なかなか快適だよ。とてもよくしていただいている。」


幸子という言葉に胸が張り裂けそうになった。やはり再会なんてしなければよかった。幸せに暮らしている二人を見るのは苦しかった。まさか結婚しているのだろうか…


「そうなんだ。お、お二人でいらしてるんですね。」


(何を聞いてるんだ、私。そんなこと聞いても落ち込むだけなのに。)


「え、何で?大学時代に俺達は別れてるんだよ」


先輩は苦笑いをして当然のことを言ったという顔をしている。


私は、知らなかったのに…


「え!」


思わず声があがってしまい、先輩もとても驚いた顔をしていた。


気まずい空気が流れた。というより私は、過去の自分が知らなかったという事実を悔やんでいた。


しかし、一方で何か心の奥底から沸き上がる想いがあった。


先輩は、何事もなかったかのように自分のアトリエの話をしだした。


そして私はある決意をする。


「先輩、お願いがあるんですが…」

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