君との再開-3
私の宿泊している青海の間は十二畳ほどの広さで、畳敷きではあるものの、透かし欄間や窓枠は西洋の意匠を感じさせる。主の趣味なのか、建物全体が西洋の趣向が凝らしてある。この宿は江戸の頃より湯治場として、宿泊客が絶えないと聞く。
女将の言葉に甘え、入浴を済ませた私は縁側で煙草をふかしていた。
汚した着物は女将が洗濯をすると言って、取り上げられた。泥じみは早く洗わないと落ちなくなってしまうから、と言って、躊躇う私を尻目に有無を言わせず持って行った。女将には何から何まで世話になってしまった。後日お礼を贈らねば。
朝餉も済ませ、ようやく日常に帰ってきた心持ちがしている。
灰皿に煙草を押し付け、ふう、と紫煙を吐き出す。目を瞑ると目の当たりにした光景がよみがえってくる。
信じられないが、あれはどう見てもあの子の姿だった。姿形を変えず、あのまま生きながらえたのか。尋常であるならば、そんなはずはないとわかる。しかし、あの姿は異様なほど神々しく、それすらも可能にしたのでは、と思うほどだ。
もう、震えはない。が、どうしても、得心はいかない。私が見たのは幻だったのか。いや、幻にしては、余りにも鮮明で鮮烈であった。
あの子は死んだはずだ。私が殺めたはず。
この手に未だ残る、痺れるような感覚を。瞼の裏に染み付く、染まりゆく紅を。私は忘れたことはない。
読みにくい文章かもしれません。
意識して改行、行間をつけていきます。




