第四話 森山月と、部室に現れた影
私立歌川雲雀高等学校、旧校舎。
軽音サークルの部室である理科室に、新しい仲間、森山月が加わった。
「初めまして、森山月です。今度、この学校に転校してきました」
黒髪のショートカットに、どこかクールな雰囲気を漂わせる月は、ギターケースを静かに床に置いた。
「ね、ねえ、どうして私たちが軽音サークルやってるって知ってたの?」
雪巴がそう尋ねると、月は少しだけ微笑んで言った。
「学校のウェブサイトで見ました。軽音サークルを設立したって。それに……」
月は、言葉を少し切った。
「私は、比良口大線の隣街に住んでいたんです。だから、ひまわり商店街も、勝屋伊吹駅も知っています。そして、この学校に転校すると決まってから、軽音サークルがあることを知って、とても嬉しかったんです」
陽菜が興奮気味に、「なんだ、じゃあ、隣町からわざわざ私たちのために来てくれたってこと!?」と尋ねると、月は少し照れたようにうつむいた。「違います。でも、この学校に転校すると決まってから、軽音サークルがあることを知って、とても嬉しかったんです」。月の言葉に、巴夏はクールな表情のまま、月を一瞥した。
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五人になった軽音サークルは、さっそく練習を始めた。
月が弾くギターの音は、巴夏とはまた違った鋭いメロディを奏でる。彼女の音楽知識は豊富で、バンドのサウンドは格段に向上した。クールな巴夏とクールな月は、言葉を交わすことは少ないが、音楽を通して互いを認め合っているようだった。
一方、雪巴は新たなボーカリストとして、より力強い歌声を探し始めた。葵は遠慮がちにドラムを叩いていたが、月や陽菜が「もっと音を出していいよ!」と声をかけると、少しずつ自信を取り戻していく。
練習も終わり、帰宅しようとしたその時、部室の奥に人影のようなものが見えた。
「ひゃっ! 今度は人影!?」
雪巴と葵は恐怖に震え、陽菜は「今度こそ本物だ!」と意気込む。しかし、巴夏と月は冷静なままだった。
五人が恐る恐る近づくと、人影はゆらゆらと揺れ、まるで手を振っているかのようだった。
「もしかして、あれって……」
巴夏がそう呟くと、月が静かに頷いた。人影の正体は、部室の壁に飾られた、美術部が描いたらしい風景画の影だった。廊下の窓から差し込む夕日が、絵画の木の枝の部分を壁に映し出し、それが風で揺れて、人影が動いているように見えていたのだ。しかも、その影はまるでギターを弾いている人のように見え、五人は思わず笑ってしまった。
「なんだ、やっぱりただの影か……」
陽菜はまたもやがっかりしたようにため息をついた。
しかし、雪巴は笑いながら言った。「でも、ギターを弾いてるみたいだね! なんだか、応援してくれてるみたいじゃない?」。
月という新しい仲間を迎え、軽音サークルはさらに賑やかになった。そして、音楽の力で旧校舎に光を灯していく彼女たちの物語は、新たな局面を迎えるのだった。




