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二十六

 十二月上旬。期末テストも無事終了して、冬休みを待つだけとなった平日のこと。

 この日の昼休み、僕は親しい友人三人と共に普段使われていない多目的室に来ていた。

「いやしかし、平日の昼間から人気の無い教室ってのは雰囲気あるな。」

武石は古びた窓やロッカーをまじまじと眺めなが呟く。

「雰囲気って、どんな雰囲気だよ。」

「そりゃあ、死体があったりとか凶器が落ちていたりとかな。普段使用されていない教室なんて、事件を起こすには良いシチュエーションだと思うぞ。」

危ない思考をしている。まぁ、言うだけで何もしないだろうけど。これで行動に移されたら、被害者は僕かも知れない。

 関係ない話はここまでにして、本題に入る。

「永江さん、紹介するよ。彼女が夏妃京香。僕の幼馴染。」

「どうも、よろしく。」

「よ、よろしく、お願いします……。」

永江さんは深々と頭を下げる。京香は彼女の緊張した態度など意に介さず、フランクな態度で接している。

「永江ちゃん、お肌綺麗だよね。ちょっとほっぺた触って良い?」

「え、あ、うん。良い、けどんみゃっ。」

永江さんが言い終らないうちに、京香の両手が彼女の顔を包み込む。

「わぁ〜モチモチしてる。特別なスキンケアとかしてるの?」

「と、特には何も。」

「えぇそうなの。それなら生まれ持ったものかな。両親に感謝しないとね。」

かつてないテンションの幼馴染と、されるがままのクラスメイト。なかなか面白い光景だ。

 そんな二人だけの空間に割って入る勇者がひとり。

「ちょっと待った。」

「あら、七咲ちゃんどうしたのさ。ボク、永江ちゃんプニプニするので忙しいんだけど。」

「それよそれ。」

七咲さんは二人の絡みに指を差す。

「さっきから黙って見ていれば永江ちゃんの可愛いほっぺをプニプニと……。」

「そう、だね。もう、この辺、で……。」

まぁ、ふざけるにしてもここら辺が潮時という事だろう。

「ズルいっ。わたしもプニる。」

おふざけ継続のようだ。七咲さんは永江さんに飛び掛かり、ほっぺを触り始める。

「おぉっ。凄く柔らかい。しかもスベスベ。お饅頭みたい。」

二人して永江さんの顔をペタペタ触っている。

 永江さんも初めは抵抗していたが、諦めたのかされるがままである。

「あ、樹と武石くんは来ちゃダメだよ。ここは男子禁制の花園なんだがら。」

「言われなくても行かないよ。」

男子禁制ならば、僕らは外に出るべきなのだろうか。まあ出ていけとも言われないので、黙って眺めているのだが。

 三人の周りに花畑の幻覚さえ見えてきた頃、武石が僕に耳打ちする。

「そう言えば、これってどういう意図の集まりなんだ?」

「テスト前に永江さんが、京香と話してみたいって言ってたじゃん。」

「そんなこと言ってたか?」

「言ってたんだよ。先週はじめのことだよ。」

テスト前日の一夜漬けで記憶が飛んでしまったのだろうか。

「まぁ、それは良いとして。その事を京香に話したら、是非会って話したいと言ってね。こうして昼休みに空き教室に集まったわけだ。」

「ふうん。ちなみに、空き教室にした理由は?話すだけなら、廊下や教室でも良かっただろう。」

「僕たちはともかく、3人は目立つからね。話に割って入る人がいるかなって思ったんだ。」

それに、と僕は三人の方を指差す。

「あんなの、人前に出しちゃダメでしょ。」

「それもそうだな。」

ファンシーな空気さえ漂う空間を見て、武石も納得したように頷いた。

 三人が落ち着いた所で、武石が口を開く。

「そう言えば、クリスマスってみんな予定あるか?」

彼の言葉に、三人は首を傾げる。

「予定、予定ね。あると言えばあるし、無いと言えば無いって感じかも。」

「ボクもそんな感じ。」

「わ、私も。」

ハッキリとしない発言に、今度は僕たちが首を傾げた。

「ごめん。どう言うこと?」

「俺もさっぱりだ。乙女心は理解に苦しむ。」

「ボクは、そんな大層なものでも無いんだけどね。二人はどうか分からないけど。」

京香の言葉に、七咲さんと永江さんは俯いてしまう。

「本当に分からないや。」

「右に同じだ。」

「まぁ、女の子の心は移ろう物なのだよ。男子諸君。」

彼女はそう言って話を締める。

 プライバシーに関わることかも知れないので、これ以上言及しない方が賢明だろう。

「話は変わるけど、京香ってずっと学年一位だよね。」

「定期テストのこと?それなら一位だね。」

「七咲さんは何位だったかな?」

「わたしはずっと三位だね。永江ちゃんは?」

「私、ずっと二位。勉強してるし、殆ど満点に近い、でも勝てない。」

確認しておいて何だが、こんな場所にクラスの成績上位者三名が揃い踏みとは。心なしか後光が差しているように見える。

「ボクたちだけ言うのも不公平だよね?樹の順位はどうなのかな。ずっと変わるなら大体でいいけど。」

「僕は大体、十五位から二十位くらいだね。三人に勉強を見てもらってるから、結構登り調子だよ。」

「そう言って貰えると、教え甲斐があるね。武石くんは?」

京香にそう話しを振られた親友は、深く深呼吸をして、爽やかな笑顔で答えた。

「下から数えて三十位くらいだな。」

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