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二十四

 十一月下旬。期末テストが明日に迫ったある日のこと。

 昼休みの教室に、親友の笑い声が響いていた。

「お、お前。いくら、罰ゲームだからってこれは……。」

武石はスマホを片手に腹を抱えている。笑いのツボに入ったらしいが、余程捻くれたツボをしている。

「もう十分堪能しただろ。スマホ返してよ。」

「ふぅふぅ、悪い悪い。ほら。」

彼から返された携帯の画面には、先日カフェで撮った写真が表示されていた。

 もちろん、店員に撮らされた恥ずかしい写真じゃない。証明用に自分たちで撮ったものだ。

 写真には、大きなパフェを囲んでいる僕と幼馴染が写っていた。京香は写真映えしそうな笑顔だったが、僕の方は顔を赤くして俯いている。なんとも情け無い写真になってしまった。

「それでなんだ。律儀に別れるまで手ぇ繋いでたんか?」

武石は涙目になりながら聞いてくる。本当、いい性格をしている男だ。

「罰ゲームだからね。律儀だろうとなんだろうとやるよ。」

「真面目な男だな、相変わらず。」

「本当に真面目なら、休み時間もテスト範囲を予習するんじゃない?明日だぜ、テスト。」

「そうなんだよなぁ。」

彼は先程の笑顔から一変、沈んだ表情になる。

 机に突っ伏して頭を抱えている親友の肩に、僕はそっと手を置く。

「テスト範囲が狭いからって、勉強してないわけじゃないでしょ。そんなに悩むことある?」

「勉強なぁ。いや、したんだぜ。本当に。たださ、思うように捗らないって言うか、範囲が狭い分、応用とか深い部分までやるとシンドくてな……。」

「テストは明日だからねぇ。大人しく腹括るしかないんじゃない?」

「冷たいな、親友。そう言うお前は勉強出来たのかよ。」

「一応ね。誰かさんのお陰で、勉強のできる幼馴染と休日に会うことになったし。」

「くっ、俺の判断ミスだ。道連れにする奴が居なくなったじゃないか。」

「なんてゲスな男だ。」

と言うか、赤点さえ回避すれば補習は免れるのだから、今日から頑張ってもどうにかならないものだろうか。

 テストから、話題が切り替わる。

「そう言えば、七咲と永江はどこに行ったんだ?教室にもいないみたいだが。」

「なんだろ。野暮用があるみたいで、昼休みになるなり二人して出て行ったけど。」

「アイツらのことだから、呼び出しでもないだろうな。」

二人して腕を組み考える。男二人、ひとつの机に向かい合っている。なんとも華のない光景だ。

「文化祭とかも終わったからな。委員会の話でもないだろうな。」

「期末テストが終われば、イベントは無かったと思うよ。」

「期末テストは、一大イベントだな……。」

「赤点さえ回避すれば良いから。頑張ろ。」

再び気落ちした様子の親友に、励ましの言葉を投げる。

「お前、良い奴だな。」

「きみの親友に悪い奴はいないよ。」

「それもそうか、類は友を呼ぶ。俺たちは同類だな。」

「いや、変人と一緒にされるのは……。」

「誰が変人だ。」

 話が逸れてきたので、本筋に戻す。

「それにしても、二人とも遅いね。何の用事なのかな。」

武石は机に肘をつき、両手を組む。

「それについて、俺はひとつの仮説を立てた。」

「急に格好付けてどうしたのさ。」

「まぁ聞けよ。俺たちは華の高校生だ。」

「男二人で華があるかは微妙だけどね。」

そう言う言葉は、女子生徒に対して使うものだろう。

「そして、七咲と永江は何らかの用事で十分以上も席を外している。恐らく、教師からの呼び出しじゃない。」

「そんな予測をしてたね。」

「更に言うなら、もうすぐ十二月だ。」

「もう幾つ寝るとクリスマスだね。」

僕の言葉に、彼はカッと目を見開く。

「その通り。つまり、奴等はクリスマスを共に過ごさんとする男共に呼び出されているに違いない。」

「あり得ないことも無いけども……。二人とも、そんなにクラスの男子と交流あったかな。」

「分かってないな、お前は。」

武石はやれやれといったポーズで肩を竦ませる。

「男ってのはな、内面よりも外面で異性を見てしまうモノなんだよ。特に、思春期の男子高校生ともなればな。」

「つまり、二人して特に絡みの無い男子から告白されているってことか。」

「そう言うことになるな。」

「そう言うことにならないよ。」

得意げに頷く武石の背後から、七咲さんが現れた。

 彼女は僕たちの顔を見て、大きなため息を吐く。

「まったくもう。男子ってどうしてこう、お花畑なのか。」

「愛の告白じゃなかったのか?」

「そんなワケ無いでしょ。隣のクラスの友達と、少し話し込んでたのよ。」

「そうだったんだ。」

他クラスに友達がいたとは。なんて、考えてしまうのは失礼だろう。高校生になって、もう半年以上経っている。クラスの外に友達のひとりや二人いてもおかしくない。

 七咲さんは椅子を持ってきて、僕の横に座る。

「あれ?永江さんは一緒じゃないの?」

「永江ちゃんはねぇ、言ってもいいのかな?」

彼女は腕を組み、ひとり考え込む。そして、

「この話は他言無用でお願いね。もちろん、永江ちゃんにも。」

そう前置きして、言った。

「隣のクラスの男の子に、多目的室に呼び出されてたよ。」

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