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 二学期が始まってはや数日。実力テストも無事終わり、少しずつ変化していく平穏な日常を謳歌していた。

「そう言えば、もうすぐ体育祭だよな。」

いつもの四人でお昼を食べていると、武石が唐突に口を開いた。言われてみれば、午前中の体育の授業で先生がそんなことを話していた気がする。

「体育祭かぁ。気は進まないけど、真面目に取り組まないといけないよね。」

「雨天くん何弱気になってるのさ。体育祭が終われば文化祭、球技大会とイベント尽くめだよ。」

「確かうちの高校って、体育祭が終わってすぐに文化祭の準備があるんだよな。実行委員とか、そろそろ決めるんじゃないか?」

「先生に目を付けられないようにしないと。」

「私も、同感。」

「もー、二人ともなんでそんなにやる気がないのさ。」

後ろ向きな僕と永江さんに向かって、七咲さんは机を叩く。バンッというよりは、タンッという感じの音。力加減ができているのか、はたまた非力なだけなのか。

 昼休みの教室は賑わっており、僕たちが多少大声を出したとて、誰も気に留めることはない。

「体育祭、どうせメインは運動部の奴らだ。同然だ、普段から汗流して部活に取り組んでいるんだからな。輝く機会があって然るべしだ。」

武石は腕を組み、分かったようなことを口にする。

「武石くんさ、さては朝から配られた体育祭の種目(仮)に目を通してないな。先生の話聞かずに後で友達に聞くマンだな。」

「当然、一行目から見てないぞ。」

「胸張ることじゃないでしょ。」

「それで、種目に何か問題があるのか?」

「これ、午後の始め。」

僕たちが話している間に取り出していてくれたのか、永江さんが一枚のプリントを武石に渡す。

「えーなになに、昼一番から部活動対抗リレーか。これって別に俺たち関係ないんじゃないか?ん、各学年から帰宅部を二人ずつ出してリレーに参加?」

「そういう事。生徒全員参加のためなのか、運動部の優位性を示したいのか知らないけどね。」

「まじかよ。」

「それで、わたしと武石くんは声かけられるんじゃないかって話なんだよ。」

「七咲はともかく、俺もなのか?」

「武石、中学の頃水泳部で良いところまで行ったんでしょ。何か話が来てもおかしくないんじゃない?」

「それを言うなら、お前だって野球部だったろ?」

「僕はほら、ベンチ要員だったから。」

「そうか、すまん。」

気まずそうな顔で、武石は謝ってくる。別に、他の部員との関係も悪くなかったし、体力作りになったから後悔もないのだが。

 武石が押し黙ってしまったが、七咲さんがすぐに口を開いたおかげで会話が途切れない。

「永江ちゃんは、確か美術部だったよね?高校に上がってからも、やろうとは思わなかったの?」

「絵描くのは好きだけど、部活に参加してまで、やろうとは、思わなかった、から。」

「七咲も、陸上続けなかったのか?」

「えっとねぇ……。」

七咲さんは少し考える仕草をして、自身の足首を僕たちに見せてた。

「実ねぇ、練習中に少しやっちゃっててね。ずっと全力で走ったりしてないんだ。」

彼女の足首には生々しい傷跡があった。

「七咲、すまん。配慮が足りなかったな。」

「別にいいよぉ。走るのは好きだったけど、タイムタイムの練習には嫌気がさしてたし。良いきっかけだったよ。」

七咲さんは陽気に笑う。

「それじゃ、七咲さんは部活動対抗リレーは参加しないの?」

「うん、そのつもり。だから武石くん、頑張ってね。」

「俺もやりたくないんだがな。まぁ、もし声をかけられたら考えるわ。」

武石は面倒くさそうな顔をしながら、あんぱんを口に含む。

 話は変わり、文化祭の話。

「ところで、文化祭の実行委員っていつ頃に決めるのかな?」

体育祭が終わってすぐなら、話が出てきてもおかしくないと思う。

「うーん、どうなんだろうね。」

「体育祭が終わってからじゃないか?俺の芸術的な感性がそう言っているぜ。」

日程のあれこれに芸術も何もないだろうと思ったが、言わないでおく。

「文化祭、何やるんだろうね。体育祭も、できるだけ軽い種目が良いな。」

「それは負担か?点数か?」

武石の問いかけに答えつつ、弁当箱を片付ける。

「理想は両方だね。」

「俺も同感だな。なんならサボりたい。」

「サボるのはダメだよ。体育祭を友達と応援するのも、青春の一ページだよ。」

「青春は、ともかく、サボるのはよくない。」

欲を口に出した親友は、女の子二人から糾弾された。

 体育祭、正直言って面倒なのだが、参加することに意義があるのだろう。とは言え、種目は控えめなものに選出されるよう、祈っておこう。

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