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二十七

 夏休みも目前に迫った七月の平日。昼休み、僕たちはいつもの四人で集まって昼食をとっていた。

「夏休み、みんなでどこか遠出したいと思うんだけど、どうかな?」

僕の提案に、武石と永江さんが強く頷いた。

「いいな。せっかくの長期休みなんだから、普段行けない所に行きたいな。」

「う、うん。私も、行きたい。」

二人の同意が嬉しかったのか、七咲さんは身を乗り出す。

「決まりだねぇ。どこに行こうか、泊まりは厳しそうだから日帰りでって話してたんだ。」

「お、二人で先に話してたのか。どこか良い所はあるか?」

「リゾート施設でゾンビに襲われる話だったよねぇ。」

「穏やかじゃあねぇな。」

「理性を失った武石くんは、ゾンビの群れに紛れてわたしたちに襲いかかるんだ。」

「俺、真っ先に犠牲になったのか。」

「ドンマイ武石、お前の眉間は撃ち抜かせてもらうよ。」

「少しくらい躊躇してくれよ、親友。」

「武石くん、私は、忘れないからね。」

「永江さんまで俺を犠牲にするのか。俺は悲しいぜ。」

項垂れる親友の背中をぽんと叩く。

「まぁまぁ。お前の墓標は立ててやるさ。それにその話だと、僕たち遅かれ早かれ全滅するよ。」

「バッドエンドじゃないか。言い出しっぺの七咲は生き残らんのか。」

「わたしは二人を逃すために犠牲になったよ。」

「俺の為にも犠牲になって欲しかったよ。」

「だって武石くん、目を離した隙にゾンビになってたんだもん。」

それは初耳だ。手洗いに行った先で噛まれたのだろうか。なんにせよ不憫な男だ。

 話が脱線してしまったので、軌道修正。

「話戻すけど、海にしても山にしても、人が多いよねって思うんだ。」

「近くに人気のないビーチとかないのか?」

「あるけど、遊泳、禁止。」

「うーん、それだとわたしは楽しいけどみんなが楽しくないよねぇ。」

「七咲、泳げないビーチが楽しいのか?」

「わたしはほら、砂のお山作るから。なんなら、トンネルだって開通させるから。」

久しぶりにわんぱく少女が出てきた。これで成績は優秀だし、陸上で中学記録を持っているのだから人間、分からないものである。

「ひとりで砂のお山は寂しいぜ。なぁ、海も山もダメならさ、電車に乗って都会に行かね?」

「都会?良いけど急だね。何かあるの?」

僕の問いに、武石は不敵な笑みを浮かべる。たぶん大したことないんだろう。

「ふっふっふ。聞いて驚くな。」

驚いちゃダメなのか。

「実は、パンダの、コラボカフェが、あるんだ。」

「あぁ、文化的パンダ?それで都会に行こうって話か。」

「パンダかぁ、良いね。わたしも行きたいかも。」

「なぁ、せめて俺の話を聞いてから話を進めてくれよ。」

どこまで行っても、不憫な男だ。

「それで、いつからコラボカフェは始まるの?」

「たしか、八月の、五日から。」

「だからみんなで朝から都会に行ってさ、コラボカフェついでに遊ぼうぜって話。」

「いいねぇ。わたしは賛成。」

「僕も良いと思うな。それじゃあ、そこまでは各自夏休みってことで。」

「おうとも。暇になったら連絡するぜ。」

「はいよ。あ、そう言えば数学の授業で夏休みの課題が配られたね。早めにやっておかないとだね。」

「夏休みの課題?あぁ、そんなのあったな。」

さてはこの男、夏休み後半まで課題に手を付けないつもりか。いや、僕も中途半端に残すから人のことを言えないのだが。

「まぁ、最悪夏休み終盤まで課題が残っていたとして、俺には頼れる親友がいるから大丈夫だ。」

「言っておくけど、僕は写させないからね。」

「教えることはできるけどねぇ。」

「私も、課題は、ちゃんとやるべき。」

「おぉ、見事に当てが外れたぜ。仕方ない、今年こそは真面目に取り組むか。」

まるで煙草を辞められない人のような言い分だ。

 武石にはあぁ言ったものの、僕も課題を全て完璧に解けるわけではない。特に英語は苦手なので、京香に教えてもらおうと思う。

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