最高か?
自室に戻ったイワーヌシュカはズボンを下ろし、包帯が巻かれた哀れなちんちんを見つめた。
「……俺の人生、終わりだ……」
涙が出そうだった。
まさかこんな形で軍医に晒すことになり、あまつさえ手当てされ、優しく扱われたせいで余計に恥をかくことになるとは。
「なにが猫は愛の神の使いだよ……!!」
イワーヌシュカは布団に突っ伏して泣いた。愛の神がこんな仕打ちをするか!? どこに愛があるんだ!?
「うえーん……」
もはや全てが嫌になった。
もう駄目だ。もう軍人なんてやってられない。もう一生、誰とも目を合わせられない。
——その時。
「にゃーん」
背後から、小さく鳴き声が聞こえた。
イワーヌシュカはガバッと振り返る。
そこには、あの猫がいた。こっちをじっと見つめ、尻尾をふわふわと揺らしている。
「て、てめぇぇぇ!!!」
イワーヌシュカは叫びながら、ちんちんを庇う。
「もう騙されねぇぞ!! お前の可愛さに!! お前のふわふわに!!!」
「にゃーん」
猫は何も知らない顔で、のんびりと毛づくろいをしている。
イワーヌシュカは震えながら後ずさった。
——しかし、その心のどこかで、ふつふつと湧き上がる感情があった。
あの柔らかい毛並み……温かいぬくもり……ぷにぷにの肉球……
「……くっ」
イワーヌシュカは拳を握りしめた。
そして、耐え切れず——
「にゃんこぉぉぉぉ!!」
泣きながら猫を抱きしめ、思いっきり猫吸いした。
最高だ。
ちんちんは犠牲になった。尊厳も失われた。だが、それでも——
猫は、最高だった。
「最高か?」
イワーヌシュカは猫を抱きしめ、顔を埋める。ふわふわだ。あたたかい。
猫のぬくもりと、心地よい喉のゴロゴロ音に包まれながら、彼はだんだんと意識を手放していった。
ねこかわいい。ねこ最高。
— そして、眠りへと落ちていく。
——が。
何かが、おかしい。
ぼんやりとした意識の中、微かな違和感がある。
……いや、これは……。
「うわあああああ!!!!!!」
イワーヌシュカは飛び起きた。
猫が!ちんちんを!ふみふみしている!!!!
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
彼は全力で猫を引き剥がす。
「そこはダメだぁぁぁ!!! 今一番繊細なんだぁぁぁ!!!!!」
猫はポイッと布団の上に投げ出され、きょとんとした顔でこちらを見つめる。
そして
「にゃーん?」
可愛い声で鳴いた。