表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『不適切な内容』  作者: 鯉壁副草


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/14

旅立ち、そしてふぐりの使徒

ふぐりに導かれし者、イワーヌシュカ。

彼は今、己が股間に刻まれた数々の激痛を胸に秘め、新たなる旅路を歩み始めていた。


ローシュランドの朝は、静謐であった。

だが、その静けさの中を、ひときわ騒がしく駆け抜けていく男がいた。


「行くぞ、ふぐりの巫女に会うんだ……!」


まるで聖地巡礼でも始まるかのような意気込みで、イワーヌシュカは軍営の門を突破した。

誰も止めなかった。止めようとすらしなかった。むしろ彼の姿を見る者の視線はどこか生温かく、あるいは哀れみすら滲んでいた。


──そして数日後。


イワーヌシュカは、ある村に辿り着いた。

その名を「フグリア」と言った。


「まさか、村の名前まで……偶然か?」

不穏な予感を覚えつつ、イワーヌシュカが宿に入ろうとした、そのとき。

「あなたが……“イワーヌシュカ”殿でございますね?」

突如、道端に現れた黒ローブの集団。

全員がふぐりのように丸くふくらんだ帽子をかぶっていた。

「わ、なんだお前ら……」

「われら、ふぐり教団でございます」

異様な沈黙が流れる。

その名を聞いた瞬間、イワーヌシュカの眉間には深いしわが刻まれた。

「何だそのバカみたいな名前……また悪ふざけか?」

「いいえ、これは神の名のもとに授かった高貴なる称号……!」

男たちは片膝をつき、イワーヌシュカを見上げた。

「……イワーヌシュカ殿。あなたを迎えに参りました。“ふぐりの巫女”として。」


沈黙。


「いやだよ!!!」


即答だった。即断、即拒否。

軍医に何度も晒したとはいえ、彼にはまだ羞恥心という高貴な感情が残っていた。

「なぜ俺が“巫女”なんだよ! 見ろ、男だぞ!? しかももうボロボロなんだぞ!? 見せてやろうか!? 包帯の──」

「いけません!」

教団の一人が慌てて止める。

そして、低く重々しい声で言った。

「イワーヌシュカ殿、あなたは“ふぐりの真実を知る者”。猫に選ばれ、神に試された存在。我らが求めていた救世主なのです……!」

「……救世主……?」

イワーヌシュカの心に、ざわめきが走った。

どこか懐かしい響き――否、なぜかとてもどうでもいい響きであった。


だがその瞬間。

ローブの下から姿を現した教団の面々の顔を見たイワーヌシュカは、思わず言葉を失った。

「……なんか、お前ら全員……やたら愛されオーラ出てね?」

「それが……ふぐりの加護なのです」

「は?」

「ふぐりを讃える者は、すべからく魅力を得る。人を惹きつけ、癒し、愛をもたらす。それが“ふぐりの神”の祝福なのです」

「ちょっと待ってくれ、それ本当なのか?」

「疑うなら、試してみてください」


一人の教団員がふぐり型の香袋(アロマ袋)を取り出した。

それは鈴カステラのような丸い形をしており、かすかにラベンダーの香りが漂っていた。

イワーヌシュカが手に取った瞬間、背後で村の娘がつぶやいた。

「……あの人、なんか……すごく素敵……」

「今の聞いたか!?」

「それが……ふぐりの力なのです」

「マジかよ……」


──イワーヌシュカの中に、一つの可能性が芽生えた。

この忌まわしきふぐりの呪いに、何か意味があるのではないかと。


そして、その真実を求める物語が、今幕を開ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ