部分的共闘の一歩
フランシスカとホウオウは、第五聖地アクドラへと、ついに歩みを進めた。二人の間には、緊張が強まる。
景色は、グレイ。無限に広がるかのような灰色の景色。どこまで続いているのかわからない。民家もない。荒地である。
風が吹いてくる。冷たい、今後の運命すら冷たく感じさせるような、風が。
辺りを見回す二人。今の所、周囲には誰もいない。
「フランシスカ、どうする?元聖女が、襲い掛かってくる感じはなさそうだが」
「そうね……なら、早めに砦を作った方がいいかもしれない。あの忌々しい国王から、アクドラの拠点は貰っているから、そこに早めに到着しましょう。ん?」
フランシスカは、鋭く遠方を見つめた。誰か、来る。
馬だ。馬の姿が、接近してくるのがわからない。
だが、単騎。大勢といった具合ではない。それが、かえってフランシスカとホウオウを不安にさせた。来客者の意図が読めない。
「どうする?」
ホウオウはフランシスカに尋ねた。目は鋭い。
「話をしましょう。単騎なら……殺しが目的というわけではないでしょう。しかし、相手の思惑を探る必要はあるかも」
「暗殺者だったら?」
「それは困る。不戦の意図を示しても、相手が単騎では、相手全体にその意図は伝わらない……どうしたものかしら」
そんなことを二人で話し合っているうちに、馬はフランシスカとホウオウの元に到着した。馬に乗っているのは、金髪の美男子、シュクレ。白を基調とした、美しい金の装飾をした服が、彼に似合っていた。
「フランシスカ殿ですか?」
シュクレが尋ねた。
「そうですが、貴方は?」
「ああ、これは失礼しました。私は、シュクレ、ロアンターズ。このアクドラにて、中立の立場を保っている、しがない貴族です。どうか、お見知りおきを」
「シュクレ殿……ですか。初めまして。私は確かにフランシスカですが……どうして、私のことを知っているのですか?」
「あなたの国の国王から、書類が届きましてね。貴女が、追放されたと。それを見て、こうして馳せ参じたわけです」
「狙いは?」
「まあ、落ち着いて」
シュクレは微笑んだ。その姿は、少しフランシスカを安心させた。
「フランシスカ殿、先ほども申し上げましたが、私は中立の立場です。このアクドラでは、元聖女たちが争いあっている。その戦い……なんとかして、やめさせたいのです。しかし、上手くいかない。そんなところに、貴女が現れた。私にとって、これは千載一遇のチャンスなのです。勢力変化。元聖女たちは、貴女の動きを見るでしょう。率直に言います。貴女が欲しい」
シュクレは飄々と言った。
「プロボーズみたいですね」
「そうですね。ある種の、契約を結ぼうという意図はあります。どうですか?共闘を持ち掛けているのです。貴女と戦う意志はない。どうか、お付き合い願いませんか?レディ」
「口説かれて悪い気はしませんね」
フランシスカは笑った。シュクレの態度が、可笑しかったからである。
ホウオウはその間、この流れはいい流れなのだろうかと、考え込んでいた。
結論としては、非常に良い。