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ここに六つの聖女を立て、お前を殺そう。国王。  作者: 夜乃 凛
第四章 第三聖女への誤算

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お前を殺そう

 フランシスカとミリアムは、急ぎナイム領に辿り着いた。

 そこにいたのは、他でもないナイム。ミリアムと目が合った瞬間、お互いに火花が走っていた。周りには殺気が漂う。仲介するのはフランシスカ。


「ミリアム、ナイム。いざこざがあったのは認めます。しかし、今は国王を倒すことに尽力すべきです。私情を捨てることは、貴女たちには出来るはずです」


「何もしらない貴女に言われたくはありませんね」


 嫌味を吐くミリアム。ねっとりと。


「こういう性格だから、こいつ嫌いなんだよね」


 ナイムも乗っかる。もはや喧嘩寸前。

 戦力は揃っている。この喧嘩さえ乗り切れば。


「喧嘩と人生、どちらを取るか」


 ホウオウが呟いた。深い赤の瞳で。


「人生でしょ。ありがと、ホウオウちゃん。わかった。私情は捨てる。で、国王ぶっ殺す準備は整ってるけど、そっちは準備出来てるの?」


 ナイムが返した。ホウオウには心を開いている。


「まだ準備は終わっていません。情報の共有が必要です。ナイム、状況を教えてください」


「ほいさ。えーとね……」


 ナイムが語りだした。周りにいる者はみな、その言葉を聞いていた。



 そして、その後。

 フランシスカが指示を出す。全員の中枢はフランシスカであり、指揮官である。戦場での指揮官はマリアンヌ。


「行きましょう。洞穴へ。国王をすぐにでも断罪すべきです。あの国の未来と、我々を救う。今こそ勇気を出して、飛び込みましょう。未来を掴み取るために」


「早い方がいいよね。国王に動きバレるから」


 ナイムが賛同した。

 ここに六つの聖女が立った。後は、国王と戦い、勝つか、死ぬか。


 フランシスカ連合部隊は、洞穴へと歩みを進めていた。絶対にバレていないはずの洞穴。

 ここさえ抜ければ、国王に見つからずに、国へ侵入できるはずの洞穴。

 緊張が走っている。なにせ、見つかったら先制を許して終わりである。

 先頭はナイム。最後尾がホウオウである。

 バレてない。聖女達はそう確信していた。主にミリアムの魔力である。


 慎重に、先へと歩みを進めた。洞穴の中は薄暗く、まるで暗闇が、こっちにおいで、こっちにおいで、と手招きしているようだった。

 その招きにも応じよう。そう言わんばかりに。

 戦いに身を投じる。そう決めた聖女達に揺るぎは無い。


 一方、国王。


「くだらぬ酒だ」


 酒をあおっている。不愉快そうな表情だ。それが完全に染みついている。

 彼は気づいていない。聖女達の接近に。来る戦いの幕開けに。


「聖女共は無能だな。どの聖女を選んでも、役立たずばかりで。話にならぬ」


 ゴクリ、ともう一口。


「そもそもが女如きが、偉そうにするなどと。笑わせてくれる。所詮は手駒に過ぎない者どもが」


 フッと笑う国王。

 それを遠くから窓ガラス越しに盗み見ていた者も、フッと笑った。


「じゃあ手駒にぶっ殺されてもしょうがないよね」


 ナイムだった。先陣を切るのは彼女。


 勿論、ナイムを先頭に立たせる不安は聖女達にあった。水晶玉で未来が見えていたからである。だが、ナイムが譲らなかった。戦いの鍵を握るのはホウオウであると。ホウオウだけは死んではいけないと。その要求を聖女達は飲んだ。ホウオウも。


 聖女達は城の一階正門前。国王は三階の自室。

 国王も流石に気づいた。国王は雑魚ではない。


「反乱か?」


 すぐに意図に気づく。国王は近衛兵を呼ぼうとした。

 瞬間、ミリアムが跳躍。魔法である。三階と同じ高さまで。


「私次第なんだから、やることやらなきゃね」


 ミリアムが呟いた。そして、光の矢を空中に放ち、三階を狙い撃ち。

 国王は反撃に転じる。

 ミリアムと国王の、壮絶な打ち合い。

 この戦いは、ほぼミリアムにかかっている。国王に接近できるだけの時間を稼げるかどうか。ミリアムがそれまで持つかどうか。


 マリアンヌは一階正門前で待機。指揮官。イグドラシルも隣にいる。さらにオルエン。

 ナイムとフランシスカ、ディークとホウオウは中へ。ディークは部下と共に、二階を鎮圧させる役割。残念ながらディークに国王と戦うだけの力はない。

 渾身の力で祈るしかない。四天王の指輪をつけているのは、ナイム、ホウオウ、ミリアム、マリアンヌである。この際重要なのがマリアンヌ。


『2階左手に近衛兵』


 マリアンヌのテレパス。しかも対象は全体。かかる負荷は半端ではない。

 それでもやるしかない。状況を見なければ勝つことは出来ない。


 ミリアムは敗色濃厚を感じている。やはり国王は強い。全力を出しているのに、相殺で手一杯。国王は本気を出していない。甘く見られてこの状況。


「フリーズ」


 氷の壁を作り出すミリアム。そして魔力を貯める。国王は遠慮なく魔法を撃ってくる。


「早くしろよなナイム」


 チッ、と舌打ちしながらミリアム。


 ナイムの位置。俊足の彼女は三階に到着していた。隣にホウオウ。他はまだ二階である。

 要するに、ナイムとホウオウだけが国王と対峙できる。ミリアムの時間切れもあと少し。


「ホウオウちゃん、絶対落ちちゃダメだよ。私は見捨てること。忘れるな」


「はい」


 ナイムが先陣を切って、国王の部屋の扉をぶっ壊した。

 俊足。地面を滑り、国王の懐へ。


「死ね」


 ナイムの俊足の一撃。

 だが、国王はそれを懐刀で受け止めた。

 ナイムは悟った。ああ、やっぱり駄目だったか、と。

 反撃の一撃。ナイムはそれを読み切れない。

 直撃。ナイムが切られ、血が染み出る。

 それを目視していたホウオウ。だが、向いているのは国王の方。

 約束したから。絶対にナイムより国王の撃破を優先すると。

 悟ってもいた。自分しか国王には勝ち得ないのだと。


「巻き起こすごと風の如く」


 突風を巻き起こすホウオウ。ナイムの血も宙に舞う。


「殺す」


「聖女以外の曲者か」


 上から見下すような国王。ミリアムはもうほとんど魔力切れである。

 フランシスカが三階へ。治療。治療。最優先。

 ホウオウは一撃で決める気でいた。


「閃光」


 踏み出す。国王を貫通して、国王の背後に。

 背中から横一閃。取った。

 国王の体が。上半身と下半身。真っ二つに割れた。


 勝った。そう安堵したホウオウ。

 だが、次の瞬間、分離した国王の体は、引き寄せ合いくっついた。


「は?」


 ホウオウ。


「曲者にしてはやるではないか。命の宝珠を使うことになるとは……私はね、一回死ねるのだよ。さて、種切れかな」


 国王の太刀がホウオウに降りかかる。

 ナイムとの訓練を思い出すホウオウ。今自分が耐えて、ナイムをフランシスカが起こすしかない。それしかない。

 それしかない!!

 ホウオウが国王相手に防戦に回る。

 強い。国王は圧倒的に強い。

 だが防ぐ。防ぎきるしかない。だが、体が軋む。

 持たない。

 外からミリアムが光の矢を放つ。時間稼ぎにしかならない。

 フランシスカがナイムを治療している。俊足。俊足で。ナイムが立ち上がる。

 同時に、ホウオウの剣が折れた。名刀が。

 もう戦えるのはナイムしか残っていない。


「ナイムか。さて、お前たちの敗北のわけだが、何か言いたい事はあるかね?」


「言いたい事?」


 にっこり笑うナイム。


「そうだ。なんでも言ってみろ」


「じゃあ……」


 ナイムは剣を仕舞った。


「さようなら」


 直後、国王の体がバラバラになった。

 国王の最後の一言。


「な……何故、貴様の能力が……効かない……はず」


 床に飛び散る国王。フランシスカはホウオウの元へ。


「ホウオウちゃんがね、風の剣技を使ったんだよ。だから、私の血が飛び散った。私は、あんたを殺したんじゃない。あんたに付着した私の血を殺したんだ。隣接してるからアウトっわけ……さて……」


 ナイムは倒れこんだ。


「後はフランシスカ、あんたに全部任せるわ」


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