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ここに六つの聖女を立て、お前を殺そう。国王。  作者: 夜乃 凛
第四章 第三聖女への誤算

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剣の作法序曲

 フランシスカとミリアムを乗せた馬車は、逆回りしていた。ミリアムに関して言えば、無理やり乗り込んだといって差し支えない。

 向かうはナイム領。最終的には、ディーク領から国王の元に向かう予定である。ほとんどそれしかルートがない。

 揺れる馬車の中、二人の聖女は作戦会議をしていた。


「もしもデスレイジの洞穴とやらが、国王に知られていたら?」


 ミリアムが言った。


「終わりですね。民を盾にされては我々は手出しが出来ません」


「なるほど。他に情報は?」


「情報……一つあります。イグドラシルの水晶で見えた未来です」

「詳しく」


「ナイムが血濡れで国王の前に倒れていたと聞きました」


「ふむ」


 ミリアムは手を組んだ。いかにも厄介、というような表情。


「ナイムが落ちるのであれば、そもそも勝ち目などありません。水晶は信頼出来るのですか?予測値でしょう?」


「そうですが……何分、聖女の道具です。当たる可能性はあるのでは」


「では、フランシスカ。貴女の役目は?」


「その傷ついたナイムを治療することでしょうね」


「その通り。貴女に落ちてもらっては困ります。さて……ディークの能力がありましたね。四天王の指輪。それをつけるのは?」


「貴女と、ナイム。そして私の部下のホウオウ、最後にマリアンヌが妥当ではないかと」


「何故、マリアンヌが?他の三名は良しとしましょう。マリアンヌはテレパスを飛ばせるだけでは?」


「状況を正確に共有するためです。僅かな隙も許されない。マリアンヌはいわば、司令塔です。彼女以外に、戦闘中に的確な指示が出せる人物はいない」


「あの弱虫がそこまで出来るかしら」


「弱虫?撤回をお願いします」


「お断りします」


「……」


 黙り込むミリアムとフランシスカ。ナイムも苦労するのも頷けると、フランシスカは思った。


「まあ、いいでしょう。指輪がどれほどのものか、気になりますが……ホウオウというのは、あなたの部下でしたね?ナイムより強いのですか?」


「ナイムには及びませんが……」


 悔しそうにフランシスカは呟いた。



 別所、ナイム領にて。戦力が緩やかにディーク領に移動していた。

 荒れた荒野で、ホウオウとナイムが対峙している。

 二人とも、ディークの指輪をつけている。

 ナイムが剣に手を当てながら喋る。真剣である。


「いい?ホウオウちゃん。素で戦えば、貴女は私には敵わない。ただ、適正なのか、ディークの指輪があれば、貴女は私をも上回るかもしれない。フランシスカ達が戻ってくるまでに、実力身に付けな。気をコントロールしろ」


「指南願う」


「全部弾けよ。いくぞ」


 ナイムが合図とともに、ホウオウに接近した。揺れるホウオウの装束。

 速すぎるナイムの剣戟。イグドラシルは追いきれない。ディークがやっと。オルエンには見えている。

 轟く剣の打ち音。ホウオウは赤い眼で全て弾いていた。四天王の指輪が、キラキラと光っている。


「全然余裕だな」


 ホウオウが言った。


「あっそ。まだ低級だよ。次、中級」


 再び轟く剣同士の音。見えない。追いきれない。ホウオウとナイム以外には。

 どっちが優勢なのか、わからない。

 ホウオウは評価していた。これならまだ弾ける。


「上手い上手い。じゃあ、最後上級ね」


 ナイムはにこやかに言うと。

 消えた。もとい、消えるほどの速さで動いた。

 眼で追わないホウオウ。元より眼で追える相手ではない。気配で追っている。

 左、右、中央、左、斜め、目の前。

 気をコントロールし、ナイムの剣戟を弾いていた。

 剣戟が止まる。


「お見事」


 ナイムは剣を鞘にしまった。ホウオウも。


「それだけの動きが出来れば、国王に立ち向かえるよ。ホウオウちゃん、一番戦力。頑張りな」


「負けたくない」


 ホウオウは独り言かのように呟いた。


「なんで?」


「国王はフランシスカをいじめたから。私は、居場所なんてなかったし、全部フランシスカの作ってくれた幸せの上に生きてきた。地獄の日々から考えれば、今でもそう思う。だから自分の為、フランシスカの為、あの国王に勝ちたい。フランシスカをレストランに連れて行ってあげたいんだ。追放なんてあんまりだ。少しでいい。たったの少しでいいから、フランシスカの役に立ちたい。それが私の生きがいだし、恩義だから」


「そうかい」


 ナイムは満足気に微笑んだ。ホウオウを気に入っている。

 次の瞬間、ホウオウの黒い装束の一部が、スパッと切れた。裾のあたりである。


「超級。短い間に修行しな」


 ナイムが切ったのだ。誰も追うことは出来なかった。ホウオウでさえ。


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